英国「Auto Express」によるトヨタ GRスープラの試乗レポートを日本語で紹介します。


Supra

現在でも生き残っている伝統ある車種は少ないが、少なくともスープラはその括りに入るだろう。しかし、5代目スープラの登場までにはかなりの時間がかかった。今回は、ようやく登場した新型スープラの市販仕様車に試乗した。

隠しようのない事実なので最初に言ってしまうが、新型となるA90型スープラはBMWとトヨタの共同開発によって誕生した。

トヨタによると、BMWとプラットフォームを共有することよってショートホイールベース、ワイドトレッドを実現し、ホイールベースは弟分のGT86(日本名: 86)よりも短く、重心もGT86より低いそうだ。

両社は基本設計が完成して以降は別個に開発を行った。同じパーツやコンポーネンツを使いつつも、トヨタとBMWはまったく別の方法で車の開発を進めていった。

スープラのチーフエンジニアを務める多田哲哉氏によると、スープラのシャシには次世代のBMW M用に開発されたコンポーネンツも使われているそうだ。これだけでも真剣に純粋なスポーツカーを作ろうとしたことが伝わってくるし、実際のスペックを見てもそれはよく分かる。

トヨタがBMWを協力相手に選んだ理由のひとつが、スープラの伝統である直列6気筒エンジンだ。新型スープラには最高出力340PS、最大トルク51.0kgf·mを発揮する3.0Lターボの直6エンジンが搭載され、8速ATおよび電子制御LSDを介して後輪を駆動する。

フロントサスペンションはマクファーソンストラット式、リアはマルチリンク式で、アダプティブダンパーが備わり、サスペンションのモードは2種類設定される。大径ブレーキの制動力も十分だ。

性能はもちろん高いのだが、0-100km/h加速は4.3秒と決して飛び抜けて速いわけではない。しかし、スープラは数字を突き詰めるための車ではなく、むしろどのように走るかを重視した車だ。

多田さんも同じようなことを言っていた。ボディ剛性には数値的な目標(GT86の1.6倍)もあったのだが、実際の走りを確かめるためのテストもしっかり行われたそうだ。開発はフィールを確かめながら進められたそうだ。ちなみに、最終的に完成したスープラのボディ剛性はGT86の2.3倍で、スーパーカーであるレクサス LFAすら超えているという。

実際に運転してみても剛性の高さははっきり感じられる。シャシは非常に強固なので、サスペンションは想像以上にソフトにできている。ノーマルモードでの乗り心地は驚くほどに良好で、路面の衝撃もほとんど気にならない。

rear

スポーツモードにすると操作性はさらに高まるのだが、しなやかさはほとんど損なわれないのでタイヤはしっかりと路面に接地し、最大限のグリップやトラクションを確保している。

グリップ性能やトラクション性能が非常に高いおかげで、エンジンのパワーを簡単に扱うことができる。

エンジン自体は車に合っているのだが、最高のエンジンとまでは言えない。多田氏によると、トヨタが単独で新設計の直6エンジンを開発していた場合、スープラの誕生は3年から4年ほど遅れていたそうだ。しかも、今後は騒音規制もなおのこと厳しくなっていくので、独自開発した場合のスープラは不気味なほど静かかもしれないそうだ。

幸い、BMWと共同開発されたスープラはそこまで静かではない。6気筒らしい心地良い音を響かせ、特に中回転域の力強い音はBMW製の(トヨタも手を入れているが)エンジンの最大の魅力だ。

最大トルクは1,600rpmから4,500rpmまで発揮されるため、コーナー出口からの加速で不足を感じることはない。ただし、どんどん回したくなるような性格ではない。5,000rpm以上になると勢いも衰え、ターボエンジンらしさがはっきりと感じられる。特徴的なターボの音も聞こえるのだが、高回転域におけるエンジン音はそれほど心地良いものではない。ただ、それはポルシェ 718ケイマンのフラット4も同じだ。

8速ATも完璧ではない。オートモードでの変速は滑らかなのだが、マニュアルモードにしてパドルシフトで変速を行うとわずかにギクシャクすることもあり、シフトダウンの反応もそれほど早くはない。

とはいえ、パワートレインは扱いやすく、おかげでバランスの良いシャシを存分に味わうことができる。スープラのバランスは非常に優れており、集中して運転すればコーナーを美しく抜けることができる。普通の速度域でも完璧な50:50の前後重量配分やシャシの対応力の高さを感じることができる。

多田氏はスープラのベンチマークが718ケイマンであるとはっきり明言していた。ケイマンには車との一体感や運転する楽しさがあり、スープラもケイマンとはまた違ったアプローチでそれを実現している。

ステアリングのフィールに関してはケイマンに一歩及んでいないのだが、シャシ性能は非常に高く、自信を持って性能を引き出し、思うがままに車の実力を発揮することができる。

シャシの要となっているのがコーナリングを補助するアクティブディファレンシャルと中立域付近からかなり応答性の高いステアリングだ。コーナー出口でアクセルを踏み込むとデフが作動するのが感じられ、前輪にかなりのグリップを生み出してくれる。かなり機敏だ。

interior

価格は52,695ポンドとそれなりに高いので、ただ走りが良いだけでは不十分だろう。スープラの購入者の中には通勤に使う人も多いだろうし、あるいはサーキットに持ち込んで限界を確かめることもあるだろう。

インテリアはZ4とそれなりに差別化されているのだが、内装部品は多くがBMW製なので、Z4のDNAも感じられる。ただこれは悪いことばかりではない。そもそもトヨタのインフォテインメントシステムは最新のカローラですら評判はあまり良くない。

スープラのインフォテインメントシステムは実質的にBMW iDriveと共通で、スクリーンは8.8インチとなっている。スイッチ類もほとんどBMWのものだ。インフォテインメントシステムはBMW製だけあって非常に使いやすく、トヨタ初のApple CarPlayも採用されている。

内装の質感や装備内容は価格に見合ったものとなっている。ヒーターおよびベンチレーターの付いたスポーツシートはホールド性も良く、着座位置も適切だ。

オートエアコンやリアビューカメラ、Bluetooth連携機能、ナビゲーションシステム(コネクティッドサービス付)、アダプティブLEDライト、19インチアルミホイール、各種先進安全装備(アダプティブクルーズコントロール、自動ブレーキ、車線逸脱警報+レーンキープアシスト、自動ハイビーム、ブラインドスポットモニタリング、クロストラフィックアラート)は標準装備となる。

室内はタイトで着座位置も低いのだが、前方視界は良好だ。荷室容量は290Lと十分に確保されているので、スポーツカーながら日常的に使うこともできるだろう。燃費性能はカタログ値で12.2km/Lだ。

しかし、スープラには大きな問題がある。BMWと共同開発することで、トヨタは完成度の高いスポーツカーを生み出すことに成功したのだが、(かなり初期からBMWとは別個に開発作業を行ったにもかかわらず)スープラの根底には疑いようもないドイツの血統を感じてしまう。走りはZ4とあまりに似ており、中にはそれを問題視する人もいるかもしれない。

もう少し日本車らしさがあれば、なお魅力的な車になっただろう。電動化が進むこの時代ならなおさらだ。多田さんは最後にこんなことを話していた。
スープラは規制が厳しくなる前に贈る、すべてのスポーツカーファンへの最後のプレゼントなんです。

スープラは完璧な車ではないのだが、伝統あるスポーツカーの復活は祝福したい。