Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのリチャード・ハモンドが英「Mirror」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2012年に書かれたBMW 320dのレビューです。


320d

ヴォクスホールはアンペラに廉価版モデルを追加した。価格は5,000ドルの政府補助金を差し引いて実質29,995ポンドだ。上のグレードと比べると2,000ポンド以上安い。

アンペラは非常に良い車だ。アンペラにはガソリンエンジンが搭載されており、このエンジンはバッテリーの充電に用いられる。そしてこのバッテリーが電気モーターを動かし、結果的に車が動く。

アンペラはモーターのみで60km程度の走行が可能で、バッテリーの電池が足りなくなるとエンジンが始動してバッテリーを充電する。これにより、さらに数百キロの走行が可能となる。電気自動車よりもよっぽど実用的な車だ。

ただし、BMW 320dという車はアンペラの最廉価グレードよりも安い29,080ポンドで購入できる。これでも決して安いわけではないのだが、現行の3シリーズはひょっとしたら自動車史上最高傑作かもしれない。

普通、車の欠点について書くのは車の魅力について書くよりもよっぽど楽だ。だから僕はルノー・フルエンスという車が大好きだ。同様に、ネタ切れ気味の自動車評論家にとって、電気自動車の登場はかなり嬉しい出来事だった。

BMW 3シリーズはその対極に存在する車だ。まずエクステリアデザインについてだが、大して書くことがない。見た目は従来型(E90)よりスポーティーになり、洗練されている。全長は93mm長くなり、全幅もわずかに拡大し、ホイールベースも50mm延長されたため、リアシートの居住空間も向上している。

rear

続いてハンドリングだ。これまでの3シリーズはどれもハンドリングが見事で、運転が楽しかった。それだけに最初から批判する余地など期待してはいなかったのだが、まさにその通りだった。335iやM3などのパワフルなモデルだけでなく、低出力の街乗りモデルすら完成度が高い。

最も遅い320d EfficientDynamicsさえも例外ではなく、これまで運転してきたあらゆる車の中でも指折りの楽しさだ。俊敏で非常に軽く感じられ、最高出力はわずか165PSながらも十分に速く感じられる。

新しいF30型3シリーズはハンドリング性能が優れているばかりでなく、快適性も見事に両立しており、ステアリングもかなり正確で、ロールもほとんどなく、グリップにも富んでいる。

続いてエンジンの話に移ろう。エンジンにはかすかな希望がある。なにせ4気筒の2.0Lだし、しかもディーゼルだ。ディーゼルだけに粗さも期待できそうだ。

実際、このディーゼルエンジンは温まっていてもややうるさい。けれど、この車の楽しさを損なうほどのやかましさではない。

184PSの320dは従来型より約40kgも軽量化されており、パフォーマンスは申し分ない。最高速度は235km/hで0-100km/h加速は7.7秒を記録する。

燃費性能はどうだろうか。今回試乗したのは環境性能を重視した320d EfficientDynamicsではなく、普通の320dだったのだが、それでもカタログ燃費は21.7km/Lだ。言うまでもなく、カタログ燃費など現実世界で実現できるはずはないのだが、困ったことに試乗時の平均燃費は18km/Lだったので、燃費についても文句を言うことができない。

interior

今度はインテリアだ。かつては、コンコルドのパイロットや宇宙飛行士でさえもBMWのiDriveを前にすると頭痛に苦しんでいた。しかし、それも数年前までの話で、今ではずっと簡略化されている。

試乗車にはオプションのインフォテインメントシステムが装備されていた。しかも価格は1,995ポンドもする。この高価さに憤慨して記事を埋めることもできたのだが、実際に操作してみると他のどのシステムよりも使いやすく、怒りも収まってしまった。

窓に表示されるヘッドアップディスプレイには有用な情報(現在の速度や制限速度の情報)が映る。視線の移動も少なくなるし、これは非常に便利だ。

3シリーズは速いし、楽いし、作りも良いし、経済性も高いし、快適だ。見た目が特別良いわけではないので、これについて徹底的に書くくらいしか僕にはできない。そういえばブレーキについて書いていなかったが、制動性能は高いし、フィールも十分にあった。

荷室も十分に広く、もはや読み応えのある文章など書けそうにはない。いや、まだある。試乗車にはダッシュボードに赤いラインが入っていた。これはまったく気に入らなかった。