Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのリチャード・ハモンドが英「Mirror」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2013年に書かれたBMW 330d ツーリングのレビューです。


BMW 3

今回はBMW 3シリーズ ツーリングに試乗したのだが、試乗車には新しいディーゼルエンジンが搭載されていた。X5やX6と共通のツインターボ3.0Lディーゼルエンジンは強力なパフォーマンスを発揮する。

以前、優秀な2.0Lディーゼルを搭載する3シリーズ(セダン)に試乗したことがある。このモデルは慎重に運転すれば20km/Lを達成できるだけでなく、パフォーマンスにも文句のつけようがなかった。

それ以上に高性能な330dに乗る前に、まずはツーリングの外観を見てみよう。Bピラーより前方はセダンとまったく同一だ。ホイールベース、全長、全幅も変わらない。

新型3シリーズ(F30)は旧型と比べると全長が97mm延長しており、ツーリングの荷室も従来型よりわずかながら拡大している。荷室容量は495Lで、リアシートを倒すと1,500Lまで拡大する。荷室ではフォード・モンデオやシュコダ・スペルブのワゴンにはさすがに敵わない。

とはいえ、BMWオーナーはそのスポーティーさやブランドイメージを理由に購入するはずなので、車内にどれだけゴミを搭載できるかはそれほど重要にならないだろう。

荷物で両手がふさがっているときには、試乗車に付いていたコンフォートアクセスという装備が便利だった。リアバンパー下で足を振るとテールゲートが自動的に開く。まさに怠惰の極み的なガジェットなのだが価格は470ポンドもする。汚れたテールゲートに触りたくないかもしれないが、オプション代で一生分の石鹸が購入できる。

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テールゲートのガラス部分だけが独立して開く機構は全車に標準装備される。これも非常に便利だ。

シートは簡単に倒すことができる。貴重品を隠すための荷室用ブラインドもあるのだが、330dツーリングを購入するためには貴重品をすべて売る必要があるので、そんな場所を使う機会はないだろう。

広報車はオプションがてんこ盛りで、装備されていたオプション費用を計算していると計算機の電池が切れてしまった。

330d Luxury の価格は36,300ポンドで、車の性能を考慮すれば決して割高ではない。ところが、広報車には11,305ポンド分のオプションが付いており、総額は5万ポンド近くなっていた。冗談じゃない。素の状態の装備が貧弱すぎる。

走る喜びを標榜するBMWの車にスポーツシートが410ポンドのオプションとして設定されているのは馬鹿げている。こんなものはキアにだって標準装備されている。しかし、こんな苛立ちもエンジンをかけて走り出すとどこかへ吹っ飛んでしまった。

この車は速い。とてつもなく速い。当然ながらパガーニ・ウアイラのほうが速いのだが、20年前のスーパーカー程度になら勝てるだろう。1993年当時、もしディーゼルのステーショワゴンが0-100km/h加速5.6秒など記録しようものなら、考えられるのは記事の誤植以外にない。

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さらに「慎重に運転すれば18km/L程度の燃費を実現する」なんて文章が続けば、そんな記事を書いた記者はクビになってしまうだろう。それか自動車評論家ではなく政治家になるべきだと諭されるだろう。

最高出力259PSを発揮するディーゼルエンジンは絹のように滑らかに回り、8速ATも完璧だ。最大トルクは57kgf·mもあるのでスタビリティコントロールを切るとウェット路面では制御が効かなくなる。実際、ウェット路面を走行中はほぼ常時オレンジの警告灯が点灯している。

広報車の約4,000のオプションのうちのひとつに、アダプティブMスポーツサスペンション(750ポンド)というものがあった。これを装備すると、コンフォート、スポーツ、スポーツ+から走行モードを選ぶことができるようになる。

乗り心地を悪化させることで知られているランフラットタイヤはなんと標準装備なのだが、それでも乗り心地は非常に良好だ。

330dツーリングは決して安い車ではない。しかし、1990年代のフェラーリと同等のパフォーマンスを持っていると考えれば、それほど高いとも感じなくなる。少なくとも、中古車で購入するなら(特に最初のオーナーが装備を満載にしてくれていたら)、非常にコストパフォーマンスは良いだろう。