英国「AUTOCAR」によるフォルクスワーゲンの中国向けセダン6車種の試乗レポートを日本語で紹介します。


Sagitar
サジター

フォルクスワーゲンは中国市場で11車種ものセダンを販売している。実際に写真を見て比較してみても、それぞれ見た目はそっくりで、スペック的にも被っているモデルが複数存在する。にもかかわらず、この11車種のうち6台は中国の売れ筋セダンベスト10にランクインしている。

中国の自動車市場は現在不安定で、フォルクスワーゲンもここ数ヶ月は販売減が続いているのだが、フォルクスワーゲンは中国市場において、2018年1月から10月までの販売台数で250万台も売り上げている。これは2017年のイギリス国内における全自動車販売台数を少し下回る程度の数字だ。

今回は売れ筋の6台(ジェッタ、マゴタン、ボーラ、サジター、ラヴィーダ、サンタナ)すべてに試乗し、この6台がどうしてこんなに売れているのか、そしてそもそもそれぞれの違いは何なのかを検討してみた。参考までに書いておくと、ベスト10の残りの4台はトヨタ・カローラ、ジーリー・エムグランド、ビュイック・エクセル、日産 シルフィだ。

実際に6台を並べてみても、それぞれそっくりに見える。しかし、走りに関しては違いがはっきりしていた。やはり設計の違いが如実に表れていた。

Santana
サンタナ

6台の中で最も小さいのがサンタナで、走りは6台の中で最も悪かった。サンタナのベースとなっているのは設計の古いフォルクスワーゲングループのPQ25プラットフォームで、欧州で販売されていたシュコダ・ラピードやセアト・トレドに近い。

この2台の完成度を考慮してもあまり期待はできないのだが、さらにオートマチックトランスミッションは応答が鈍いし、エンジンは粗いし、ブレーキペダルはフィールが死んでいるし、ステアリングは1990年代のシュコダ・ファビアと変わらない。

しかしながら価格は安く、それゆえに売れている。月にもよるが、フォルクスワーゲンの中では2番目に売れているモデルになることもある。そして、フォルクスワーゲンのベストセラーをサンタナと競っているのがジェッタだ。

Jetta
ジェッタ

ジェッタはヨーロッパでも知られた車名なのだが、中国仕様のジェッタはサンタナ同様PQ25プラットフォームを採用しており、走りはサンタナよりわずかにましな程度だ。

サンタナとジェッタはどうしてこれほどそっくりなのだろうか。これはフォルクスワーゲンが中国国内で2つの合弁企業を持っていることに起因する。それが一汽フォルクスワーゲンと上海フォルクスワーゲンの2社だ。

2社は同程度の規模で、それぞれ中国国内の別の地域で活動しており、それゆえに2社が競合することはない。そしてだからこそ、2社は同程度のボディサイズの車を別の名前、別のデザイン(実際はそっくりだが)、別のシャシチューニングで販売している。

Bora
ボーラ

上のクラスではもう少し状況はましになる。フォルクスワーゲン・ボーラは最新のMQBプラットフォームを採用している。一汽フォルクスワーゲンが販売するボーラは1.4L TSIエンジンと7速DSGを組み合わせており、かなりまともな車に仕上がっている。

しかし、上海フォルクスワーゲンが販売するラヴィーダのほうがボーラより売り上げが多い。ラヴィーダもまともな車なのだが、ボーラとの見分けは難しい。MQBプラットフォームを採用するこの2台はいずれも、走行性能、内装、価格のバランスがかなり良い。

Lavida
ラヴィーダ

さらに高価なモデルに目を向けてみよう。サジターはヨーロッパで販売を終了した欧州仕様ジェッタがベースとなっている。サジターも悪くはないのだが、ボーラやラヴィーダと比べると割高感がある。

同様に、さらに高価なマゴタンについてもやはり割高感がある。ちなみにマゴタンの中身は欧州仕様パサートで、また中国国内では旧型パサートがパサートの名前で継続販売されている。とはいえ、ここまで来ると我々の知るフォルクスワーゲンとさほど変わらなくなってくる。

Magotan
マゴタン

さて、中国におけるフォルクスワーゲンセダンの奇妙な世界を少しでも体験できただろうか。ここで混乱しているようでは、2020年までに中国向けSUVを3車種から12車種まで増やそうとしている今後のフォルクスワーゲンにはついていけないだろう。