英国「Auto Express」によるシトロエン C4カクタスの試乗レポートを日本語で紹介します。
ここ数年間でシトロエンに変革が起こっている。ちょっと前まで、シトロエンのデザインはそれほど個性的ではなかったのだが、C4カクタスの登場によってすべてが変わった。
C4カクタスは内外装ともに個性的なクロスオーバーSUVで、ドアにはエアバンプと呼ばれる空気の入ったプラスチックパーツが付いている。C4カクタスの登場により、シトロエンの方向性は明らかに変化し、普通のC4ハッチバックが死ぬほど退屈に思えるようになった。
しかし、そんなC4カクタスの誕生から既に4年が経過し、シトロエンはC4カクタスに大きな変更を行った。
今回のマイナーチェンジではホイールデザインやダッシュボード色が変更されただけではなく、カクタスがより個性を増している。トラクシオン アヴァンや2CV、DSなどでも知られているように、シトロエンといえばやはり快適性なのだが、最近のシトロエンはその強みを失いかけていた。
シトロエンいわく、新型カクタスは過去を取り戻した車だそうだ。今回はフルモデルチェンジではないので、比較的設計が古いプジョー・208や DS 3 などと共通のプラットフォームを使っているのは変わらないのだが、サスペンションは刷新されている。
新しいサスペンションは1955年に登場したDSのハイドロニューマチックほど革新的なわけではないのだが、競合車と比べるとそれでも十分に革新的だ。新設計サスペンションはプログレッシブ・ハイドロリック・クッション (PHC) と呼ばれ、各サスペンションに油圧式ダンパーが備わっている。
この油圧式ダンパーがサスペンションストロークのトップエンドとボトムエンドで衝撃を吸収するので、スプリングやショックアブソーバーをソフトにすることができるようになる。これにより、シトロエンいわく「魔法の絨毯のような乗り心地」を実現しているそうだ。
大袈裟な表現のように聞こえるかもしれないが、少なくともフランスの舗装の良い道路で乗った限りでは、この表現もあながち嘘ではないと感じた。路面の起伏にしっかり対応しており、タイヤはしっかりと路面に接地し、一方でボディはずっと落ち着いていた。まるで浮いているかのようだった。
セッティングがソフトなのでバウンドしてしまいそうにも思えるのだが、カクタスはバウンドしそうな路面でも浮くような乗り心地を保ち続けた。ハードなコーナリングをしても落ち着きを失うようなことはない。ロールはかなりあるのだが、しっかりと制御されており、不快感を抱くようなことはない。
今回試乗したのは130PSの1.2L 3気筒ガソリンターボエンジンを搭載する最上級グレードの「Flair」だった。これはカクタスには初搭載となるエンジンなのだが、プジョーやシトロエン、DSの他のモデルにも搭載されており、同エンジンを搭載する他モデル同様に優秀だった。
低回転域から十分に力強く、0-100km/h加速8.2秒という数字なりの速さを感じた。急加速時には3気筒特有の音もはっきり感じるのだが、決して粗いわけではないし、クルージングではエンジン音もほとんど聞こえなくなる。
6速MTとエンジンの相性もかなり良かった。シフトノブは従来より握り心地が明らかに改善しており、シフトストロークが短くなったおかげでシフトフィールも向上していた。ステアリングは正確で重さも適切だし、従来よりも楽しくなり、また洗練度も明らかに増している。
PureTechガソリンエンジン搭載車が最も魅力的だと思うのだが、ディーゼルの選択肢も設定される。1.6LのBlueHDi ディーゼルエンジンには5速MTが組み合わせられる。4WDモデルは変わらず設定されず、路面状況に応じてトラクションコントロールシステムの制御を変化させるグリップコントロールが一部グレードに装備されるだけだ。
82PSの1.2L自然吸気ガソリンモデルも設定されるのだが、これは避けたほうがいいだろう。ターボがないのでほぼ常時息切れを感じてしまうし、このモデルだけはPHCサスペンションも装備されない。
シトロエンはサスペンションだけでなくシートにもこだわっている。カクタスのシートは巨大なソファのようで、コンパクトクロスオーバーSUVクラスの基準を明らかに超えている。
シートを除くと、インテリアは基本的に従来のC4カクタスとほとんど同じだ。なので、使われているプラスチックは基本的に硬めの安っぽいものだ。デザインは変わらず個性的で、ほとんどの機能は標準装備の7インチディスプレイを介して操作する。エアコンも物理ボタンやダイヤルではなく、わざわざメニューを掘って操作しなければならないので、かなり使いづらい。
リアシートは十分に広く、荷室容量は平均的(通常時が358Lで、リアシートを倒すと1,170Lまで拡大する)なのだが、今回のマイナーチェンジで6:4分割可倒機構が追加された(従来型は一体でしか倒せなかった)ため、実用性が向上している。
残念なことに、リアウインドウは依然としてポップアウト式なのだが、安全装備は改善しており、アクティブセーフティブレーキや車線逸脱警報、ブラインドスポットモニターなどが装備できるようになった。
エクステリアデザインは従来よりも穏やかで保守的になっている。フロントグリルやバンパーのデザインは刷新されており、シトロエンのエンブレムからデイライトまでメッキの線が伸びているのはC3譲りだ。テールランプも横長のものに変わっている。
しかし、最大の変更点はエアバンプだろう。従来型には板チョコのような巨大なエアバンプが装備されていたのだが、新型C4カクタスはC3やC5エアクロス同様、下部に控えめにエアバンプが付いているだけだ。
インテリアカラーの選択肢は増えているのだが、エクステリアについては従来選択できた鮮やかなボディカラーが廃止され、グレーやブラック、ホワイトなど、レッドを除いて退屈な色ばかりになってしまった。
シトロエンいわく、より穏やかになったことでC4との共通性を持たせ、またC5エアクロスとの差別化を図っているそうなのだが、個性を失ってしまったことは残念でもある。しかし、主観的なことを抜きにして考えると、新設計のサスペンションやシートが装備され、より成熟した車になったことは間違いない。
奇抜さは少し失ってしまったものの、依然として魅力的なキャラクター性は持っているし、なにより新型モデルは快適性という大きな武器を手に入れている。
普通なら破綻してるでしょう・・・よくまとめられてる
auto2014
が
しました