英国「Auto Express」によるアルファ ロメオ・ステルヴィオとジャガー F-PACE の比較試乗レポートを日本語で紹介します。


Stelvio vs F-PACE

今や高級セダンの地位をプレミアムSUVがほとんど置き換えてしまっており、4ドアセダンの販売台数はかなり落ち込んでいる。そしてプレミアムSUVは今、どんどんと性能を伸ばしている。

今回用意したのは、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の中でも特にスポーツ性の高い2台だ。280PSの2.0Lガソリンエンジンを搭載するアルファ・ロメオ ステルヴィオは高い走行性能とオフローダーの走破性を併せ持っている。

スポーツSUVといえばF-PACEもそうなのだが、ジャガーはガソリンエンジンのラインアップに手を加え、F-PACEにさらなる魅力を付加した。では果たして、この2台ではどちらが勝利を収めるのだろうか。


アルファ ロメオ・ステルヴィオ

Stelvio

ステルヴィオはジュリアと多くのコンポーネンツを共有している。プラットフォームはジュリアと共通だし、280PSの2.0L 4気筒ガソリンターボエンジンもジュリア ヴェローチェと共通だ。

アルファ ロメオらしく、エンジンは甘美だ。スロットルレスポンスは即時的で、高回転での音は美しく、ついつい回したくなってしまう。それに、ジュリアよりも重いので、そもそもエンジンをより回す必要がある。アルミニウムなどの軽量な素材をふんだんに使用しているため、車重は1,660kgとF-PACEより182kgも軽い。

軽さのおかげもあって、0-100km/h加速はホットハッチ並の5.4秒でこなす。トラクションに優れたアルファの4WDシステム「Q4」の恩恵もあるだろう。

カタログスペック的には20PS分だけジャガーに見劣りするかもしれないが、無変速での加速でもステルヴィオが優勢だった。7速固定での80-110km/h加速は6.9秒を記録した。

ただし、フルスロットルでは、特にマニュアルモードだとトランスミッションに粗さも見えた。とはいえ、自動変速で踏み込まずに走っている限りでは滑らかだし安心感もある。

走る楽しさにおいて、シャシに不満はほとんど感じなかった。クイックなステアリングは最近のアルファの特徴なのだが、ステルヴィオもその例外ではない。ノーズがしっかりとコーナーの先を向き、グリップ性能もそれにしっかりと着いていく。このクイックさに慣れてしまえば、SUVとしては驚くほど楽しむことができる。

アジリティに関してはジャガーよりも優れている。ステルヴィオと比べるとF-PACEは重さや応答性の遅さを感じてしまう。ただし、だからといってステルヴィオが完璧なわけではない。

地上高が高いだけあってロールはそれなりにあるし、スポーティーな性格ゆえに路面の段差の衝撃をいなしきれないこともしばしばある。とはいえ、F-PACEの乗り心地も決して完璧とは言えないし、ステルヴィオについても基本的にはしなやかだし、我慢できないほどではない。

ただし、ナビに関してはシステムの完成度が低く、我慢できないレベルだった。とはいえ、携帯電話との連携機能やパーキングセンサー、オートエアコン、クルーズコントロール、各種先進安全装備、ステアリングヒーター、シートヒーターなど装備は充実している。質感は決して高くないのだが、十分と言えるだろう。


ジャガー F-PACE

F-PACE

F-PACEはラインアップの変更を行ったばかりだ。V6は廃止されてしまったので、5.0Lスーパーチャージャー付きエンジンを搭載するSVRが登場するまでは、今回テストした「30t」が最上級モデルとなり、またステルヴィオと競合するグレードでもある。

最高出力300PSを発揮するジャガーの2.0L「Ingenium」ガソリンターボエンジンは8速ATと組み合わせられており、四輪すべてに駆動力を送る。シャシレイアウトはアルファに近く、フロントはダブルウィッシュボーン式サスペンションを、リアはマルチリンク式を採用している。

しかし、2台の共通点はこれくらいで、実際に走らせてみると、走行性能も走行フィールも全く異なっていた。

今回比較した2台はいずれも最大トルクが40.8kgf·mなのだが、F-PACEの車重は1,842kgと重いので、最高出力の差を考慮しても決して速いとは言えない。車重のせいで発進加速は鈍く、シフトアップも緩慢で、0-100km/h加速はステルヴィオよりも1.3秒も遅い。

中間加速でもその差は顕著だ。最高出力で優位にあることもまるで感じさせない。7速固定での80-110km/h加速はアルファが6.9秒だったのに対し、F-PACEは8.5秒だった。

パワートレインからはステルヴィオほどの活力が感じられず、またハンドリングでも見劣りする部分があった。ロールはステルヴィオよりも多く、ステルヴィオのようなクイックなコーナリングを楽しめるわけでもない。ただし、そもそもSUVのユーザーが求めているのは操作性と快適性のバランスであり、そういう意味ではジャガーにも魅力はある。

重さの影響もあって、路面の凹凸には影響されにくく、たとえ舗装の悪い道路であっても基本的には落ち着いていて乗り心地は良い。さすがに明らかな段差ではジャガーにも破綻が見られるのだが、乗り心地が破綻する頻度はステルヴィオほど多くはない。

変速はアルファほどシャープではないのだが、F-PACEの変速はしっかり制御されており、ステルヴィオのようなギクシャク感はない。

今回テストした「Prestige」はF-PACEの中では最も安価なグレードなのだが、価格はステルヴィオよりも高い。とはいえ装備は充実しており、10インチナビゲーションシステムやステアリングヒーター、前後パーキングセンサーなどは標準装備となる。オートエアコンやクルーズコントロール、リアビューカメラ、各種安全装備などもしっかり付いている。

F-PACEの質感はステルヴィオよりも0.5ランクくらい上なのだが、2台の差はそれほど大きいわけではない。


結論

1st: ジャガー F-PACE
このクラスの中ではやはりF-PACEが最も魅力的だ。アルファほど運転が楽しいわけではないのだが、アルファよりも(乗り心地などが)穏やかだし、実用性も高く、質感や装備内容も優れている。価格は高いのだが、それだけ払う価値はあるだろう。

2nd: アルファ ロメオ・ステルヴィオ
楽しいSUVはなかなかないのだが、ステルヴィオは速くて楽しく、そのパフォーマンスの高さを考えれば快適性も十分に高いと言えるだろう。ただし、質感や実用性、装備内容に関しては、いくら安いと言えどもF-PACEと比べると見劣りしてしまう。