英国「Auto Express」によるシトロエン・ベルランゴの試乗レポートを日本語で紹介します。


Berlingo

新型ベルランゴはPSAグループのバン風ミニバン3姉妹のシトロエン版だ。姉妹車のプジョー・リフターおよびヴォクスホール・コンボ ライフとの違いは微々たるものなので、3台のうちから1台を選ぶのは難しいだろう。

とはいえ、シトロエンは1996年から飾り気のないミニバンをずっと作り続けている。新型ベルランゴは3代目モデルで、新型では「マルチスペース」というサブネームを失っているのだが、従来型よりも装備は大幅に充実している。

かつてのベルランゴの最大の魅力はやはり実用性だったのだが、幸いなことに新型は実用性にさらに磨きがかかっている。インテリアの収納スペースの合計容量は驚異の186Lで、中でも注目は天井の収納機能だ。車両後方に「モデュトップ」と名付けられた飛行機のロッカーのような収納スペースが備わる。モデュトップはパノラミックガラスルーフとセットオプションで、フランス仕様車では750ユーロとなる。

interior

巨大なスライドドアのおかげで乗り降りはかなりしやすく、チャイルドシート3つを横並びで設置することもできる。ボディサイズは「M」と「XL」の2種類が設定され、いずれも7人乗りが選択できる。サポート性に難はあるものの、少なくとも全長が35cm長いXLであれば、3列目シートに平均的体型の大人が普通に座れた。

荷室も広大だ。Mモデルの荷室容量は775Lで旧型ベルランゴ マルチスペースより100Lも増加しているし、XLの荷室容量は1,050Lともはや笑えるレベルだ。シートもしくは荷室部分にあるレバーを操作すれば簡単にリアシートを倒すことができる。リアシートは3分割可倒式で、倒すとほぼフラットな荷室が現れる。ちなみに3列シート車の場合、3列目シートは取り外すことができる。

助手席もフラットに倒すことができるので、シトロエンによるとホワイトウォーターカヤックを載せることもできるらしい。カヤックに馴染みがない人のために数字で説明すると、Mモデルには最長2.7m、XLモデルには最長3.05mの長尺物を載せることができる。バックドアは大きく、大きな物を載せるのには便利なのだが、狭い場所では扱いづらい。ただし、ガラスハッチを単独で開けることもできる。この機能は上級グレードには標準装備で、下級グレードだとオプションとなる。

seats

ベルランゴのような実用性に振った箱型ボディで人を魅了するような見た目にするのはほとんど不可能なのだが、シトロエン共通の2段式ヘッドランプやブラックCピラー、エアバンプなどのおかげで、少なくともヴォクスホールやプジョーよりは魅力的に見える。

他の2台同様、ベルランゴもフロント部分にはPSAのEMP2プラットフォーム(C5エアクロスやプジョー・3008などと共通)を使っており、リア部分は2代目ベルランゴの構造をキャリーオーバーしている。

走りについては、基本的にバンよりは乗用車に近い。ステアリングは軽く、回転半径は小さいし、重心が高いのでハードなコーナリングは難しいのだが、ロールはしっかり抑えられている。それに、グリップも十分に確保されている。乗り心地は十分良好なのだが、路面が悪いと振動は車内まで伝わってくるし、風切り音も特に大きなドアミラー周辺はうるさい。

rear

エンジンは2種類設定される。110PS/20.9kgf·mの1.2Lガソリンエンジンはもっと軽いモデルとの組み合わせだと魅力的なのだが、最大7人が乗るような車の場合、最大トルク30.6kgf·mの1.5Lディーゼルエンジンを選んだほうが賢明だろう。ディーゼルに組み合わせられる8速ATは滑らかで車にもよく合っている。一方、ガソリン車には当初6速MTしか設定されないが、2019年にはAT車も追加される予定だ。

インテリアデザインは旧型から大幅に進歩しており、装備を考えるとバンらしさはほとんど感じられない。カラーヘッドアップディスプレイや8インチタッチスクリーンナビゲーションシステム(Apple CarPlayおよびAndroid Autoにも対応)、ワイヤレス充電、アラウンドカメラなども装備することができる。