英国「Top Gear」によるシボレー・コルベット ZR1 の試乗レポートを日本語で紹介します。


ZR1

コルベットZR1は見た目通りに速い。かなり速い。そしてこの車は、従来のZR1と同様、コルベットの中でも究極的なモデルだ。最も速く、最も恐ろしいモデルだ。標準車でも450PS超え、320km/h超えを果たしているのだが、ZR1と標準車の差はちょっとやそっとではない。

コルベットZ06に”The Big Nasty”という二つ名を与えたことでも知られるGMのマーク・ロイス副社長は、コルベットZR1には”Fury”(憤怒)の名を与えたそうだ。当然、ZR1には暴力性も存在するのだが、ロイス氏いわく、「レースにおいて冷徹なほど速い」ことが名前の由来だそうだ。

では、コルベットZR1と競合する車とはなんだろうか。正直なところ、同じ価格帯には存在しない。オプションを満載にしても価格は15万ドルを切る。その価格で、最高出力765PS、最高速度341km/h、0-400m加速10.2秒、0-100km/h加速2.9秒、0-160km/h加速6秒のマシンが買えてしまう。数字的にはマクラーレン・720Sが近いのだが、価格は2倍近い。

操作性ではマクラーレンに敵わないと思う人も多いはずだ。しかし、あまり短絡的に考えるべきではない。ZR1は決してただの直線番長ではない。開発チームが最終耐久テストのために開発車をバージニア・インターナショナル・レースウェイに持ち込んだ際には、現在販売されている中で最もハンドリングが優れた車とも言えるフォード・GTのラップを1秒以上更新した。

ZR1の最大の特徴はLT5型V8エンジンだ。Z06に搭載される(相対的に)上品なLT4型エンジンと比べると、全てにおいてスケールが大きく、燃料噴射装置は2基となり、スーパーチャージャーは50%大型化している。

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Z06とエンジンの性能曲線を比べてみると、4,000rpmまではほとんど同じなのだが、そこからZR1は2基目の燃料噴射装置が稼働し、6,400rpmまで衰えずにずっと上へと伸びていく。Z06と比べると、最高出力は106PS、最大トルクは9kgf·mも優れている。それに、フルスロットルでは排気管から巨大な青い炎が吐き出される。

では果たして、これだけのパワーをシボレーはどのようにして制御しているのだろうか。ZR1には2種類のエアロパッケージが存在する。いずれもレーシングカー「C7R」と同様のフロントスプリッターを装備している。そして、オプションのZTKエアロパッケージには巨大なアジャスタブルリアウイングが装備される。これにより最高速度では430kgものダウンフォースが生まれる。サーキットで走らせるつもりが少しでもあるなら、これを装備する必要がある。

サーキットではまるでジェット戦闘機のごとく、少し不安定だ。技術がなければ性能をほとんど引き出すことができない。悠長に電子制御を切って速く走ろうなんて思える車ではない。GMのテストドライバーすら、トラクションコントロールをオンで走ったほうが速いと言っていた。

サーキットを走っていてもエンジンに問題は起こらなかった。シボレーは気温38度での長期テストも行ったらしいのだが、一切問題なかったそうだ。Z06は真夏に運転すると頻繁にオーバーヒートして動けなくなることもあったようなのだが、これを受けてZR1には13個のラジエーターが装備され、十分に対策されている。今回は気温25度のロード・アトランタでも運転したのだが、一切の不具合も生じなかった。

ZR1は公道で運転してみても普通のC7コルベットと大きく変わらない。しなやかで、快適で、運転しやすい。フラットでリニアなトルクカーブのおかげでMTでもATでもアクセルを緩く踏むだけで十分に加速できる。排気音を抑えるモードもあり、それを使うと聞こえてくる最も大きな音は燃料噴射装置の音となる。リアハッチの内側には大きな荷室まで用意されている。この車は、性能の高さを忘れて日常的に使うこともできる。

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しかし、サーキットに持ち込んでトラックモードに変え、タイヤモニターでミシュラン CUP 2 が十分に温まったことを確認してから走り出すと、最高のスリルを味わうことができる。ロード・アトランタでは1ラップ目からプロが運転するZ06の先導車よりよっぽど速く走れて、何度か減速する場面もあった。決して私が上手いわけではなく、ひたすらにZR1の加速性能のおかげだ。

ZR1は加速だけでなく制動性能も高い。冗談のように巨大なカーボンディスクブレーキはフェード対策もしっかりされており、うっかりシートベルトを締めずにブレーキをかけたら乗員はガラスに突っ込んでしまうだろう。最高速度の341km/hからフル制動するとわずか8秒後には車が停止している。

エンジンとブレーキこそ、ZR1の本質だ。ハンドリングは普通のC7と大して変わらない。特にタイヤが過熱状態だとリアが暴れやすくなるのだが、滑らかに運転していれば、やりすぎさえしなければ、問題は起こらない。8速ATの変速も素早く、コーナー出口からの加速も見事だった。ただ、レブマッチングシステムも備わるマニュアルのほうが運転するのは楽しいだろう。

ZR1はヨーロッパで購入することはできない。専用空力パーツはヨーロッパの厳しい規制に引っかかってしまう。それゆえこれはアメリカでしか購入できない。しかし、もし今アメリカに住んでいるのなら、C7の全力を確かめるために買ってみるのも良いだろう。ただし、操作性やラップタイムを重視するなら、次期型を待つのも手だろう。次期型のC8はミッドシップになる予定だ。

C7コルベットはC6から大きく進歩している。そして、今はまだ分からないのだが、きっと次期型のC8も同じように大きな進歩を遂げているはずだ。しかし、現時点においてアメリカ最高のスーパーカーはこのコルベットZR1に違いない。