Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、ボルボ V60 D4 のレビューです。


V60

イギリス軍がイラク戦争に派遣されていた頃、バスラ空軍基地の兵士たちは、新しい銃やスナッチ・ランドローバー用の交換用車軸を手に入れるために倉庫で並ばなければならなかった。

ところが、その倉庫には物資の在庫など存在しなかった。まさに空軍版モンティ・パイソンのチーズショップだ。ただ、チーズショップと違うところもひとつだけあった。

私がバスラの空軍基地に行ったとき、迫撃砲による攻撃があったので、私は在庫のない倉庫の内側へと案内された。そこには銃も弾丸もなかったのだが、なぜかゴムパンツは6,000着も在庫があった。この理由は、軍を運営しているのが実質的に政府だからだ。政府の仕事などまともに機能した例がない。

これが大気汚染に関する議論の話に繋がる。2001年当時、自転車に乗った悲観的ロビイスト達は当時の政府に対し、ガソリンこそが悪魔の燃料であると信じさせた。その結果、ゴードン・ブラウンはすぐに税率を調整し、ディーゼル車を購入しやすくした。

それから10年が過ぎ、また別の環境主義者たちが現れ、ディーゼルによって年金受給者が殺されると主張し、今度はガソリン車を使うべきであると語りはじめた。さて、今度はどうなっただろうか。

無知で無能な集団はその意見をすぐに受け入れた。その結果、これまで環境に優しいと言われてディーゼル車を購入してきた人達は、今度は重い自動車税と消費税を払わなければならなくなってしまった。

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とはいえ、全員が全員、ディーゼルエンジンを搭載する車を購入することが悪であるという(誤った)認識を持っているわけではない。

確かに、ディーゼル車の税額は日に日に高くなり、ディーゼル車に乗る人は警察権力が殺しても許されるような時代すら来そうだが、少なくとも今のところは、V8やV6のガソリンエンジンを搭載するSUVに乗るより、ディーゼルのSUVに乗ったほうが経済的には良いだろう。それに、環境主義者がディーゼルを完全排除することはできない。なぜなら、彼らの重要な足であるバスが軽油で動いているからだ。

なので、私は現状をあまり悲観してはいない。きっといずれ新しいロビイストが現れて、政府に対してまた違う意見を言いはじめるだろう。

ただ、ボルボは今の流れがずっと続いてほしいと願っているはずだ。ボルボはつい3年前まで、イギリスでディーゼル車をほとんど販売していなかった。しかも、ボルボのディーゼルエンジンは決して優秀とは言えない代物だった。今回試乗したV60 D4に搭載されていた190PSの2.0Lターボディーゼルエンジンも例外ではない。やかましくて力もなく、魅力が存在しない。

ボルボによると、21.3km/Lの燃費を実現しているそうだ。この燃費は車格を考えればかなり優秀だ。きっとかなり節約できるだろう。しかし同時に、夜中に出掛けることもなくなるだろう。ボルボのオーナーが夜中に外出することはない。ボルボ以上に性機能の終了を示唆するものなど存在しない。

V60には他にも問題があった。ボルボと言えば、最も安全性が高い車であると宣伝されている。ボルボは2年前、2020年までにボルボ車が絡む事故による死者を0人にすると宣言した。実際、イギリスにおいては、ここ16年間でXC90が絡む事故では死者が一切出ていない。

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ところが、V60の場合、事故を防ぐための装備がオプションとなっている。クロストラフィックアラートやリアの衝突防止システムを付けるためには追加で500ポンドが必要になる。安全を売りにしているボルボが安全装備をオプションにするのは、コカ・コーラが炭酸を有償オプションにするようなものだ。

標準装備されないものは他にもたくさんある。本体価格は31,810ポンドのはずなのだが、試乗車の価格はなんと45,390ポンドだった。これは経済学者をして「大金」と言わしめるほどの額だ。

当然、どうしても気に入った部分があれば、馬鹿みたいに高い金額で、時代にそぐわない燃料で動く騒々しい車を購入することもあるだろう。

この車には魅力もある。なにより見た目が良く、室内の居心地も素晴らしい。今の時代、ロールス・ロイスを除いてこれほどインテリア作りの上手いメーカーは他にない。それに、室内はかなり広大だ。

けれど、これがあらゆる欠点を補ってくれるとは思えない。すべてを考慮すれば、BMWを買ったほうがいいだろう。