英国「Auto Express」によるセアト・タラコ (TARRACO) の試乗レポートを日本語で紹介します。


Tarraco

7人乗りのセアトが欲しい場合、これまではミニバンのアルハンブラしか選択肢がなかった。両側スライドドアはスリッパと同じくらい実用的なのだが、一方で新型タラコはどっしりとしたSUVのスタイルとともに、ミニバンの実用性も手に入れることができる。

つい2年前まで、セアトにはクロスオーバーSUVが1台もなかったのだが、今回登場したタラコはセアトとしては3車種目のSUVとなる。タラコはアローナやアテカよりもクラスが上のモデルで、シュコダ・コディアックキア・ソレント、日産・エクストレイルなどと競合する。

タラコとコディアックの共通点は多い。プラットフォームは同じMQBだし、どちらも7人乗りで、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのラインアップも同一だ。ちなみに4WDモデルも選択できる。

コディアック同様、タラコの室内もかなり広い。荷室容量は700Lとクラス最大級で、シートをすべて倒すと1,775Lという広大な荷室が広がる。3列目シートは競合車同様かなり狭いので、あくまで小さな子供用と割り切ったほうがいいだろう。

ダッシュボードはこれまでのセアトとは異なり、最上部に8インチディスプレイが飛び出している。正直なところ、後付け感は拭えない。アテカのようにダッシュボード内に設置されているほうが一体感があって見た目的にはスマートだ。

interior

スクリーンの応答性は良く、見やすいし、スマートフォンとの連携にも問題はないのだが、その見た目は車が完成したあとにボルト留めされたとしか思えない。ただ、それを除けばインテリアは作りが良くて頑丈だし、装備内容も充実している。試乗車は中級グレードだったのだが、オートエアコンやナビ、18インチアルミホイール、プライバシーガラスが標準装備されていた。正確な価格はまだ分かっていないのだが、このグレードなら3万ポンド程度で購入できるだろう。

エンジンはガソリンが2種類、ディーゼルが2種類設定される。150PSの1.5Lガソリンターボがエントリーモデルとなり、その上には190PSの2.0Lガソリンエンジンが設定される。ディーゼルはいずれも2.0Lで、150PSと190PSの2種類が設定される。

1.5Lガソリンエンジンはアテカやアローナに搭載されるものと共通で、他にフォルクスワーゲンやシュコダでもお馴染みのエンジンだ。他のモデル同様、このエンジンは非常に滑らかで静粛性が高く、完成度が高い。

ただし、タラコはボディサイズが大きい(コディアックより38mm長い)ため、斜面や急カーブでは難儀することもある。最大トルクはわずか25.5kgf·mなので、速く走らせるためにはそれなりに酷使しなければならないのだが、6速MTは優秀なのであまり苦にはならない。

1.5Lモデルにはセアトの4WDシステム「4Drive」とDSGを組み合わせることもできるのだが、これを選択すると車重が約110kgも増加してしまうため、4WDが必要なら同じ150PSでもディーゼル(最大トルク34.7kgf·m)を選択したほうがいい。特に低回転域においては力強さが段違いなので、フル乗車で走る機会が多い人はよく考えて選ぶべきだ。

rear

競合車と比べた場合、タラコの走行性能は比較的高い。もっとも、このような車を購入する層がそんなことを重視するとは思えないのだが、とはいえタラコのステアリングは応答性が良く、クイックに操縦することができる。コディアックより全高が20mmほど低いこともあり、ロールもしっかり抑えられている。

18インチという適度なサイズのホイールを履いていたおかげもあってか、乗り心地もかなり良かった。路面の衝撃はしっかりと吸収してくれるし、サスペンションストロークが長いので乗り味はどの速度域でもソフトでしなやかだ。アダプティブシャシーコントロールは低級グレードにオプション設定、上級グレードに標準装備となるのだが、7人乗りのSUVにこんな装備を付けても焼け石に水だろう。

タラコは快適性も実用性も高いのだが、この車にしかないセールスポイントは存在しない。シュコダの場合、ドア内に装備される傘や給油口の蓋に装備されるアイススクレーパー、それにドアを開けたときに飛び出してくるドアパンチ防止用のプロテクターなど、細かい配慮が行き届いている。

これはあくまで細かい部分でしかないのだが、かなり激しい競争が繰り広げられているSUV市場においては小さな違いが大きな結果を生むことになる。