米国「Car and Driver」によるトヨタ 新型RAV4の試乗レポートを日本語で紹介します。


RAV4 Adventure


かつてコンパクトクロスオーバー人気の立役者となったRAV4は4世代の歴史のうちに次第に平凡な車へと変わっていった。他のトヨタ車と同じように無個性になり、そうすることでカムリの販売台数すら超えて、2017年にはピックアップトラック以外の車としてはアメリカで最も売れている車となった。

ところが、RAV4は5代目へのフルモデルチェンジで勇敢にもその匿名性を捨てた。新型RAV4は周りから注目されるようなデザインを身に纏い、新型プラットフォームの採用によって走行性能も向上し、グレードの選択肢も増やしている。

今やSUVなど溢れるほどに存在するのだが、RAV4のデザインには目を引くものがある。角張った形でホイールアーチが強調されており、威圧感のあるフロントエンドも存在感を強めている。グレードによるデザインの違いもあり、例えば「Adventure」はスバルのようなアウトドア感を出す一方で、「Limited」はメッキを纏って上質感を演出している。また、ボディカラーの選択肢も多く、流行りのツートンも選ぶことができる。

インテリアに関しては、トヨタは賢明にもデザインよりも機能性を重視した。室内は落ち着きがあってエルゴノミクスにも配慮されている。中央に突き出たスクリーンの両側にはボリューム用およびチューニング用のダイヤルが並んでおり、エアコン操作用の物理スイッチも分かりやすく配置されている。

interior

センターコンソールが大きく、ダッシュボードは2段形状になっているため、収納スペースはたくさんある。それに、旧型RAV4同様、パッケージングはしっかり考えられており、リアシートは広いし、フロアが低いので広大な荷室へのアクセスもしやすい。

インテリアデザインに関しては欠点も見て取れる。たとえば、「Adventure」の場合、あちこちにオレンジのアクセントが入りすぎているのはやや目障りだ。とはいえ、使われているプラスチックの質感は高いし、触れる場所はどこもソフトな感触だし、操作系も頑丈な感じがするので、全体的な作りは良好だ。

高級感ではマツダ・CX-5に負けてしまうのだが、この価格帯で新型RAV4に並べるほどの個性と実用性を併せ持つ車は他にないだろう。

パワートレインは従来と変わらず2種類で、2.5L 直列4気筒エンジンと8速ATの組み合わせと、同じ2.5Lエンジンのアトキンソンサイクル版を搭載するハイブリッドモデルが選択できる。そして4WDシステムは3種類も用意される。

RAV4

ベースグレードがFFなのは変わらず、「LE」、「XLE」にはごく普通の4WDがオプション設定される。「Limited」にオプション設定、そして「Adventure」に標準設定される4WDシステムはリアのトルクベクタリング付きとなっている。そして、ハイブリッドの4WDシステムは後輪の駆動をモーターが担当する。スポーツグレードの「XSE」には専用チューンのサスペンションも装備される。

どのグレードも乗り心地、操作性ともに従来型より良好だ。新世代プラットフォームを用いる他のトヨタ車同様、RAV4もソリッドな感覚があり、ステアリングの重さや操作性も良好だった。乗り心地は硬いながらもしなやかで、路面の衝撃はしっかりと吸収してくれる。今回試乗したオフロード志向の「Adventure」でもスキッドパッドでは0.83Gという良好な結果を記録し、110km/hからの制動距離は50.6mを記録した。

2.5Lエンジンは最高出力206PS、最大トルク25.4kgf·mで、数値的には従来モデルより27PS/1.7kgf·mと大幅に向上しているのだが、実際に運転してみるとエンジンの性格やパフォーマンスにそれほど違いは感じなかった。

0-100km/h加速は8.0秒で、従来より0.3秒だけ向上している。エンジンは踏み込むとかなりやかましく、せっかくの乗り心地の良さが静粛性の低さによって台無しになってしまいかねない。8速ATの変速は滑らかで、燃費の向上にも一役買っている。120km/h巡航では13.6km/Lを記録し、従来モデルより3km/L程度も改善している。

Adventure rear

ただ、燃費を重視するのであればハイブリッドを選ぶべきだろう。ハイブリッドのEPA複合燃費は16.6km/Lとなる。ハイブリッドはパフォーマンスも向上しており、システム出力は222PSとなり、モーターのトルクのおかげで日常の運転での応答性も良くなっている。それに、遮音性が高くなっているので標準車よりも静粛性が高く、同等グレードで比較した場合、非ハイブリッド車との価格差は800ドルなのでコストパフォーマンスも悪くない。

アダプティブクルーズコントロール、自動ブレーキ、車線逸脱警報、レーンキーピングアシストなどの先進安全装備は全車にしっかり備わっている。Apple CarPlayも標準設定されるのだが、Android Autoは装備できない。パワーテールゲートやシートヒーター・ベンチレーター、パノラミックガラスルーフなどの贅沢装備も選択できる。

価格はベースグレードの「LE」が26,545ドルで、中間グレードは3万ドル台中盤程度となる。今回試乗した上級グレードの「Adventure」は4万ドル近い価格だった。

新型RAV4は従来モデルの欠点を補うだけでなく、個性の付加によって魅力をさらに広げることができている。新型RAV4もアメリカの道に溢れることになるかもしれないが、仮にそうなったとしても、今のような退屈さはなくなるだろう。