フィリピン「Top Gear」によるトヨタ・ラッシュ(別名: ダイハツ・テリオス)の試乗レポートを日本語で紹介します。


Rush

トヨタ・ラッシュを見るとつい感傷的になってしまう。新型ラッシュはフィリピン版トップ・ギアの歴史の重要な節目となった車だ。ラッシュがカバー写真に掲載された号ではフィリピン版トップ・ギアとしては最後の印刷版が刊行された。ラッシュは新しい時代、完全デジタル化を我々に告げた車だ。

新型ラッシュがカバー写真に掲載されたのは2018年5月号で、完全デジタル化に向けてさまざまな調整作業も行われた。印刷版が刊行されなくなったことで、やはり寂しさも感じた。それからおよそ4ヶ月後、我々はラッシュに再会した。今回は感傷抜きで公正なレビューをお送りしたい。

ラッシュを説明するとき、「ベイビー・フォーチュナー」という表現がよく使われる。ラッシュも決して小さくはなく、兄貴分のフォーチュナーと同じように威圧感を振り撒くこともできる。ラッシュは決して速い車ではないのだが(詳しくは後述)、それでも見た目には存在感がある。細いヘッドランプやフロントバンパー、尻上がりのスタイリング、リアスポイラー、ルーフレール、17インチアルミホイールなどを見ると、フォーチュナーとの共通性が見て取れる。

一方で、ラッシュには独自性もある。ボディラインが高く、不思議なことに実際以上に背が高くスポーティーに見える。短いノーズのおかげでおもちゃのような印象も受け、角のように突き出たドアミラーもその印象を増強する。フォーチュナーと比べるとラッシュの見た目には茶目っ気がある。

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車の中でドライバーと常に触れる部分はステアリングとシートなので、まずはそこを見てみることにしよう。ラッシュのステアリングの材質は決して上質なものではないのだが、扱いやすいステアリングスイッチも付いており、機能的には良好だ(スピーカーの音質も良かった)。シートも気に入った。試乗開始数分後に渋滞に巻き込まれてしまったのだが、おかげでシートの良さが実感できた。サポート性も良好で、バケットシートに座っているかのような感覚さえある。特にサイドのサポートはしっかりしており、かといってやりすぎているわけでもない。

前席および2列目のヘッドルームおよびレッグルームは十分以上だ。3列目に関しては同じことは言えないのだが、予想通りではある。3列目は決して広くはないのだが、かといって我慢できないほどでもない。それに、後席もシートはよくできている。

上でラッシュは速くないと述べたのだが、ここで理由を説明することにしよう。ラッシュに搭載されるのはラッシュより小さなアバンザと共通の1.5L DOHC デュアルVVT-iガソリンエンジンだ。そもそもアバンザからして速くないし、そのエンジンをアバンザより約500kg重いラッシュに載せればパワーウェイトレシオがかなり悪くなることも簡単に予想できる。

ラッシュに搭載される4速ATもあまり優秀ではない。スロットルの入力に対して瞬時に応答してくれないので、追い越し時に必要な加速もまともに得ることができない。スピードを上げるのには時間が掛かるし、アクセルを踏み込んだところでエンジンの回転数が上がるだけだ。

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燃費は平均的な8km/Lだったのだが、この車が速く走るために設計された車ではないということを理解した上で運転すればもう少し燃費を改善することもできるだろう。ラッシュはその名に反して急ぐ(rush)ことはできないので、アクセルを踏み込むのはただただ燃料の無駄だ。

ラッシュは地上高が高いので見晴らしが良く、最大渡河性能600mmを実現しているので、洪水だらけのフィリピンの国柄にも合っているだろう。ただ、重心が高いのでロールは発生しやすく、コーナーはゆっくり走るべきだろう。不安定さを抑えようとしたのかサスペンションははっきりと硬く、おかげで乗り心地はかなり跳ねがちだ。特に3列目では乗り心地の悪さが気になり、ちょっとした段差の衝撃すら伝わってくる。シートの設計が良かったのはせめてもの救いだ。

正直なところ、ラッシュがフォーチュナーと並べるのは見た目とサイズだけだ。エンジン性能はフォーチュナーのそれとは比べ物にならない。とはいえ、ラッシュは大きいだけあって実用性は高い。それに、価格はフォーチュナーとは比べ物にならないくらい安い。もし安くて大きな車が欲しく、かつ遅さが気にならないなら、ラッシュを検討する価値はあるだろう。