英国「Auto Express」による DS 4 の試乗レポートを日本語で紹介します。


DS 4

DSというブランドはまだ確立していない。DSがシトロエンから分離されてそれなりに時間が経ったのだが、まだアウディやレクサスと同列には見られていない。シトロエンは DS 4 のマイナーチェンジによってブランド力のさらなる向上を図ろうとしている。今回はそんな新型 DS 4 に試乗した。

DS 4 のマイナーチェンジと同時に地上高を上げた「クロスバック」も追加された。あくまで本格的なクロスオーバーSUVではないのだが、これによりDSは初めてクロスオーバー市場に参入することになる。

新型となり、どこを見てもシトロエンのバッジは見当たらなくなった。シトロエンとの差別化のためにDSはデザインやテクノロジー、快適性、洗練性に力を入れている。新型 DS 4 も従来より個性的で大胆なデザインとなり、DS独自のモチーフも取り入れられている。

クロスバックと差別化するため、標準の DS 4 は従来よりも地上高が低くなり、また新型にはクロスバックも含めてDSの特徴でもある上質なメッキグリルや複雑なLEDヘッドランプ、そして新設計のバンパーが装備される。ボディとルーフの色には38種類もの組み合わせが用意される。

DS 4 に乗り込むと、特にレザーインテリアの場合、その上質さに驚かされる。天井の材質やさまざまな色のバックライトに照らされる操作系も高級感がある。装備内容も充実しており、7インチタッチスクリーンはプジョー・308のスクリーンよりもずっと扱いやすい。

rear

ナビゲーションシステム、バックカメラ、デュアルゾーンオートエアコン、各種安全装備はしっかり標準装備されており、不足はない。おかげでアウディ・A3やBMW 1シリーズ(いずれも装備内容を同等にすると数千ポンドほど高くなる)と比べるとコストパフォーマンスは高い。

ただし、ドア周りや足元には硬くて安っぽいプラスチックが使われているし、ステアリングの調整幅は狭く、エルゴノミクスを悪化させている。しかし、最大の問題点はリアシートだ。ドアの開口幅は狭く、かなり乗り込みにくいし、リアシートは平均的成人にはかなり閉塞感がある。

しかも驚くべきことに、リアサイドウインドウは開閉すらできない。とはいえ、荷室に関しては、開口部下端は少し高いのだが、それでも容量は385Lと十分に確保されている。

DSはこの車の走りについて「ダイナミックハイパーコンフォート」という表現を使っている。それを聞くと、かなり期待が高まる。メーカーいわく、シャシは快適性と操作性が完璧にバランスされているそうだ。

ところが、実際に運転してみるとそんな感じはしない。操作性は十分高いし、アンダーステアもちゃんと抑えられているのだが、ステアリングは低速域ではやたらに重く、スピードを出しても生気が感じられない。マニュアルトランスミッションはストロークが長くてとてもスポーティーとは言えない。

interior

それ以上に問題なのが乗り心地だ。とても上述した謳い文句が事実とは思えない。高速道路や滑らかな道路であれば十分にソフトなのだが、道が悪くなるとかなり不安定になり、特に試乗車が履いていた19インチホイールは路面の段差でかなり暴れていた。

少なくともタイヤノイズや風切り音はそれほどうるさくないし、2.0Lディーゼルエンジンは滑らかで力強く、経済性も高いので、このディーゼルを選択するのが最善だろう。23,495ポンドという価格もアウディ・A3やインフィニティ・Q30などの競合車と比べればずっと安い。

しかしながら、あえてこのクラスの車の中から DS 4 を勧めるつもりにはなれない。スタイリッシュだし、コストパフォーマンスも良いし、ディーゼルエンジンも優秀なのだが、特に乗り心地や操作性、そして実用性の面で高級ハッチバックの水準には達していない。