カナダ「Driving」によるキャデラック・XT4の試乗レポートを日本語で紹介します。
1903年に単気筒エンジンを搭載する第一号車を生み出して以降70年の間、キャデラックは革新的な高級車メーカーであり続けた。しかし、その後しばらくの間キャデラックは不調に陥り、1998年に巨大なエスカレードを生み出したことでようやく復活した。つまり、乗用車を作り続けてきたキャデラックは、SUVによって救われることとなった。
そして、キャデラックは再びその恩恵に与ろうとしている。キャデラックは初のコンパクトクロスオーバーSUV「XT4」を登場させた。このXT4こそ、セダンを削減してSUVを増やすというキャデラックの新しい3カ年計画の序章だ。
かつて、キャデラックは低価格モデルに贅沢装備を加え、キャデラックのバッジを付けて販売するというミス(具体例を挙げると、シボレー・キャバリエベースのシマロンなどがそうだ)を犯している。
しかし、キャデラックは過去の失敗をちゃんと反省しているようだ。というのも、XT4は決して飾り立てたシボレー・エクイノックスなどではなく、完全に独立した新型車だ。ボディもプラットフォームも、そして新設計の2.0L 4気筒ターボエンジンも、すべてがまったく新しい。2.0Lという小排気量ながら、このエンジンは最高出力240PS、最大トルク35.7kgf·mを発揮し、新設計の9速ATが組み合わせられる。
カムシャフトは走行状況に応じて位置が変わり、バルブの制御も変更される。パフォーマンスが求められるときにはカムシャフトが高い位置に移動し、定速巡航時など効率性が求められるときには低い位置に移動し、パワーがほとんど必要ないときには中央の2気筒がシャットダウンする。また、必要に応じて切換弁付きの電動ウォーターポンプがエンジン各部位の温度を調整する。FFモデルは11.2km/L、4WDモデルは10.3km/Lという燃費を実現している。
XT4にはアイドリングストップシステムも装備される。他のキャデラック車の場合、この機能は無効化できないのだが、顧客からかなりの反発があったようで、XT4ではアイドリングストップ機能をオフにするスイッチも装備された。
XT4が属するセグメントにはアウディ・Q3やメルセデス・ベンツ GLAなどのモデルがあるのだが、XT4のボディサイズはそれよりやや大きく、「コンパクト」と呼ぶにはやや大きい気もする。とはいえ、小回りも利くし、実際に運転してみるとかなり小さく感じられる。それに、ボディサイズが大きいので室内は広く、リアシートのレッグルームも十分に確保されている。
最も安い「Luxury」グレードの価格は39,900カナダドルで、上級グレードの「Premium Luxury」および「Sport」はいずれも48,295カナダドルだ。ちなみにこれはFF車の価格で、4WDだと3,395カナダドル高くなる。「Premium」と「Sport」の違いは外装パーツや選択できるオプション(スポーツグレードではアクティブサスペンションが選択可能)などがある。
XT4の走りは非常に成熟している。エンジンは強力かつ滑らかで、登り坂も物ともしないし、加速時のターボラグも感じられない。9速ATは効率的だし、変速もかろうじて感じる程度だ。4WDシステムは基本的に前輪に駆動力を送り、必要に応じて後輪にも駆動力を配分する。走行モードでは個人的にスポーツモードを気に入った。このモードだと車全体が引き締まって応答性が良くなるし、かといってやたらエンジン音がやかましくなるわけではない。
今回は「Premium Luxury」と「Sport」の2グレードに試乗したのだが、どちらも乗り心地とハンドリングをうまくバランスできていた。電動パワーステアリングの重さも適切だし、フィードバックも十分にあり、高速域でもソリッドで安定していた。ただ、ブレーキペダルの位置はアクセルペダルと近すぎてやや不満だった。
エクステリアデザインは精悍ではあるのだが、他のクロスオーバーSUVと比べると平均的だ。ただ、ヘッドランプの端が垂れ下がっているのは個人的には少し間抜けに見えた。インテリアはスタイリッシュで質感も高く、木目やメタルが良いバランスでアクセントとなっている。シートは前後ともかなり快適でありながらもサポート性も良好だ。リアシートは簡単に畳むことができ、広大でフラットな荷室を作ることができる。
私は電動シフトレバーが嫌いなのだが(わざわざPRNDLの配列を変える必要も、前に押してRに入れたりボタンを押してPに入れたりする意味も分からない)、それ以外の操作系に問題はなかった。新設計のインフォテインメントシステムも使いやすかった。他のメーカー同様、昔はやたらと複雑だったシステムをシンプルにしたことで、キャデラックのシステムもようやくまともに使えるようになった。エアコンの操作系がちゃんと物理ボタンになっている点も好感が持てる。
高速道路における準自動運転モード「スーパークルーズ」はXT4には設定されないのだが、キャデラックによると、2020年までには全車に設定する予定らしい。しかし、それだと先進技術を重視する顧客から敬遠されかねない。とはいえ、完成度は十分に高いし、人気のコンパクトクロスオーバーSUV市場の中でも十分な競争力を持っているだろう。
特にダッシュボードはシボレーと大差ない。