S3

上海通用五菱汽車が製造する宏光S3という縦長のSUVを見ると、中国にはアメリカとはまったく違った市場が存在するということが理解できる。中国市場には、MTでわずか110馬力、9,000ドルの3列シートSUVが存在する余地がある。アメリカでは考えられない車だ。

そうはいっても、低価格のミニバンを求めている人がアメリカにまったく存在しないわけでもないだろう。宏光S3はシートは薄いのだが、ヘッドルームは十分に確保されている。

ボディサイズは異様にも思える。全長はCR-Vと同等で、全高はジープ・グランドチェロキーと同じくらいなのだが、全幅はホンダ・フィットとほとんど同じだ。

室内は非常にチープで、安っぽいプラスチックが使われている。五菱汽車は中国市場においてバンに強い自動車メーカーであり、宏光S3も商用車的な質感なのだが、価格を考えれば許容できるレベルだ。

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スペックを見ただけでも想像できるのだが、走行性能はかなり低い。決してサーキットを走らせるべき車などではなく、本来なら人員の輸送くらいでしかサーキットには縁のないはずの車だ。コーナーでは酷いロールが発生し、どんなにゆっくり走ったとしても、相当胃の強い人でなければスラローム走行には耐えられないだろう。

ただ、パワートレインには魅力を感じた。わずか110馬力の自然吸気1.4Lエンジンなので、もちろん、「パワー」なんて言葉とは縁遠いし、加速性能を試そうなんて思いもしなかったのだが、勇ましいエンジン音は聴いていて心地良かった。