米国「Car and Driver」によるキャデラック XTS V-Sport(2018年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。
XTSは昔ながらのキャデラックらしい巨大な高級セダンであり、ドイツ製スポーツセダンとの競合に力を入れている今のキャデラックブランドには似合わない車だ(とはいえ、販売台数はATS、CTS、CT6よりも多く、キャデラックのセダンの中ではXTSが最も売れている)。
FFベースのクルーザーであるXTSに刺激を加えたモデルがXTS V-Sportだ。こちらは全車4WDで、最高出力416PS、最大トルク51.0kgf·mを発揮するツインターボ3.6L V6エンジンを搭載する。ただし、XTSはプラットフォームをビュイック・ラクロスやシボレー・インパラと共有しており、車重は2トンを超えてしまう。
XTSは2018年モデルでマイナーチェンジを実施し、今回は新型XTS V-Sportの実力を改めて試すことにした。変更点の多くが見た目に関する部分なので、スペック自体は初期型とほとんど変わっていない。0-100km/h加速は5.2秒と2014年モデルの値と変わらないし、0-400m加速も変わらず13.6秒(169km/h)だった。
公式発表によると、2018年モデルには新設計のタイヤが装着されているらしいのだが、試乗車には初期型と同じブリヂストン POTENZAのオールシーズンタイヤが装着されており、スキッドパッドテストも(わずかに改善したが)ほぼ変わらない0.82gを記録した。
XTS V-Sportと同じエンジンを搭載し、そして走行性能の面で評価の高いGMの後輪駆動車用プラットフォーム「アルファプラットフォーム」を採用するCTS V-Sportとの比較は避けられないだろう。CTSはXTSより209kgも軽く、0-100km/h加速は0.7秒速いし、スキッドパッドテストの結果や制動性能もXTSより優れているので、走行性能を重視するなら明らかにCTSを選ぶべきだろう。
XTSの強みは乗り心地の良さや静粛性の高さであり、長時間の移動も快適にこなすことができる。これだけソフトだと「V-Sport」のバッジに見合っているのかが怪しいところなのだが、ツインターボV6エンジンのおかげで追い越し加速には余裕があるし、6速ATの変速にもほとんど不満は感じない。
また、インテリアの質感にも感心させられた。ダッシュボードの組み立て精度は他のキャデラック車と比べても上々で、タンレザーは見た目も触り心地も良かった。それに、CTSはワインディングではXTSよりも速いのだが、リアシートの広さではXTSの圧勝だ。
ただし、V6エンジンのパフォーマンスと比べて、シャシはあまりにも軟弱だ。操作性、敏捷性は決してスポーツセダンを名乗れるようなレベルではなく、「V-Sport」の名に相応しい部分はエンジンスペックくらいしかない。
ステアリングは軽くてアシスト過剰だし、フロントヘヴィーでコーナーではかなりのアンダーステアを呈し、4WDシステムもあまり後輪に駆動力を送ってくれないので、トルクステアも生じてしまう。
それに、CUEインフォテインメントシステムは使いづらいし、試乗時の平均燃費は6.4km/Lと悪く、なにより73,490ドルという価格は致命的なほどに割高だ。確かに、XTS V-SportはCTS V-Sportよりも装備は充実しているのだが、両者の価格差は1万ドルもある。非V-SportのXTS(4WDモデルが53,390ドルで購入できる)ならまだ購入する理由は見つけやすいのだが、あえてXTSのV-Sportを選ぶ意味を見つけるのは難しそうだ。
エキシージスポーツ350やエリーゼスポーツ220の試乗レポートがあれば掲載お願い致します。