米国「Automotive Addicts」によるメルセデス・マイバッハ S650(2018年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。


S650

このような仕事をしていると、よく聞かれることがある。「これまで乗った中で最高の車は何ですか」とか、「一番好きな車は何ですか」といった質問だ。さまざまなカテゴリーが存在する中で、たった一台の最高の車を決めることなど私にはできないのだが、少なくとも乗り心地という条件だけで考えると、メルセデス・マイバッハ S650は最高の車だ。

私は自動車評論家として1,000台以上の車に乗ってきたので、軽々しく「最高」なんて言葉を使うことはない。しかし、マジックボディコントロールシステムをはじめとした先進的な技術のおかげで、メルセデス・ベンツは間違いなく最高の乗り心地の車を作り上げることに成功している。

高級車のトップに立つ車の中でも、オーナーが自分で運転するためではなく、他人に運転させるために設計されているショーファードリブンの数はかなり少ない。そしてマイバッハは、Sクラスという車を乗員と運転手、どちらにとっても同じくらいに魅力的な車に仕上げている。言うまでもなく、普通のSクラスとマイバッハのSクラスの方向性は違い、マイバッハはより上質でホイールベースが長く、室内空間も広い。

マイバッハのSクラスにはメルセデス製のBiTurbo V12エンジンと7速ATの組み合わせが搭載され、インテリアも基本は普通のSクラスと共通なのだが、マイバッハはホイールベースが延長され、専用の贅沢装備も追加されている。

走りに関しても真の高級車に相応しい装備が満載で、メルセデスの中でも最高の快適性を実現している。こういった車で移動するのは、車好きにとっても特別な経験となるだろう。

rear

マイバッハはソフトながらも20インチの鍛造ホイールを履いており、他のSクラスとの違いを主張している。エメラルドグリーンに塗られたアルミニウム製のドアパネルや専用の前後LEDライトをはじめ、この車はどこを見ても作りの良さを実感する。

マイバッハの歴史は1909年まで遡る。当初、マイバッハはツェッペリン飛行船のためのエンジンを製造しており、以降もしばらくエンジンの製造を続け、1930年代後半についに自動車製造を開始した。第二次世界大戦中はドイツ製戦車のエンジンも製造していたのだが、自動車の製造をやめることはなく、かの有名なマイバッハ・42も生み出した。

後にメルセデス・ベンツがマイバッハを吸収し、記憶に新しいところで2000年代には超高価なマイバッハ・57および62を発売した。今でもマイバッハの名前は残っているのだが、設計はメルセデス・ベンツのSクラスにより近くなった。今のマイバッハは、ある意味ではSクラスのロングホイールベース版でしかない。

2018年モデルのメルセデス・マイバッハ S650はV型12気筒ターボエンジンを搭載し、1mものレッグルームを誇る。リアシートには12ウェイの電動調節機構やマッサージ機能が備わり、あらゆる機能付いたリアシートエンターテインメントスクリーンも装備される。シートはソフトで上質なレザーシートで、アンビエントライトの色も好みに応じて変更することができる。マイバッハと比べると最新のガルフストリーム Gクラスすら見劣りしてしまう。

メルセデス・マイバッハ S650を運転すると、V12エンジン(630PS/102.0kgf·m)を搭載するAMG S65を運転したときのことを思い出した。

interior

マジックボディコントロールは前方の道路状況を認識し、事前にサスペンション制御を変更する。この効果はまさに魔法のようだ。路面の衝撃をほぼ完璧に消し去り、乗員は常に完璧に調律されたクッションに包まれる。

このシステムは、前方の路面の段差や凹凸、橋の継ぎ目などを認識し、それに応じてサスペンションの動きを制御する。普通の車であれば減速しなければ耐えられないような道であっても何の問題もなく通り過ぎるので、本当に同じ道を走っているのかと疑ってしまうことさえある。誇張抜きで、マイバッハが路面の衝撃を吸収する性能はこれまでに経験したどんな車とも違っていた。

マイバッハには3種類のドライブモード(コンフォート、スポーツ、カーブ)が設定され、カーブモードでの性能にも驚かされた。カーブモードではちょうどオートバイがカーブで傾くようにカーブでボディが自動的に傾く。これはただ先進的なだけでなく、実際に走行中に感じる横Gが低減し、ワインディングであっても乗員がグラスに入れたワインをこぼすことはない。

マイバッハの走りはマジックボディコントロールとパワフルなV12ターボエンジン、そしてAMGと共通の強力なブレーキシステム(フロント15.4インチ、リア14.4インチ)が作り出している。2,402kgという車重でありながら、0-100km/h加速はわずか4.6秒でこなし、これだけの巨体でありながら自信を持って運転することができる。

dashboard

メルセデスらしく、先進安全装備は充実しており、メルセデスの技術が集結している。アダプティブクルーズコントロールシステムは高速道路でのステアリング操作も補助してくれるし、車線がはっきりしている道路であれば一般道でも自動操縦が可能だ。

メルセデス・ベンツのおかげで、マイバッハがこれまで以上に輝こうとしている。新型メルセデス・マイバッハ S650が真の贅沢を求める人のために本気で作られた車であるということははっきりと感じ取れた。

このドイツ最高の技術を自分のものにするためには、およそ207,595ドルを支払わなければならない。当然、他に運転手を雇う資金も必要となるのだが、自分で運転するという選択をすることもできる。どちらも魅力的な選択肢だ。


2018 Mercedes-Maybach S650 Review & Test Drive