Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのリチャード・ハモンドが英「Mirror」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2010年に書かれたアルファ ロメオ・ジュリエッタのレビューです。


Giulietta

今はワールドカップの真っ只中であり、ウィンブルドンも白熱している。そんな時期なので、愛国的な記事を書くべきなのかもしれない。モーガンやロータスをはじめ、イギリスの名車を特集するのが良いだろう。

ただ困ったことに、サッカーでは期待が裏切られ、ウィンブルドンでのイングランド代表はいつも大口を叩くばかりなので、今回はイタリア車について語りたいと思う。アルファ ロメオは登場から10年が経過した147に代わり、新たにジュリエッタを発売した。

もともとジュリエッタはミラノという名前になる予定だったのだが、アルファのデザイン部門がミラノからトリノに移転してしまった。にもかかわらずミラノという名前で新型車を発売するのは冗談にしかならないと判断されたようだ。

今回は珍しく2種類のジュリエッタに試乗した。最初に乗ったのが170PSの1.4TB MultiAir Lussoで、続いて乗ったのが最強モデルである235PSの1750TBi クアドリフォリオ ヴェルデだ。

まずは19,495ポンドのLussoについて書くことにしよう。なぜなら、最初に速いモデルについて語ってしまうと、その後に大してパワーのないモデルについて説明してもしょぼく思えてしまうだろうからだ。

アルファ ロメオなので当然見た目は良い。ジュリエッタは特にリアが美しい。ブレーキランプはLEDで、曲線的なデザインは特に夜に映える。

rear

ジュリエッタには5ドアしか設定されず、リアのドアハンドルはドアの高い位置、Cピラー部分に隠されるように設置されている。実際、遠くから眺めると3ドアのように見える。

アルファ ロメオの信頼性はあまり高くないので、電気系統が故障したり床に穴が空いたりするかもしれないが、少なくともインテリアの見た目は素晴らしい。なので、もし車が動かなくなってしまったとしても、レッカーを待つ場所としては最高だ。

ユーロファイターからそのまま移植されたかのようなU字型のスイッチなど、ディテールまで魅力的だ。味があり、スポーティーで、やたら派手なわけでもない。それに、作りもしっかりしている。

アルファのもう一つの魅力はやはりエンジンだ。フェラーリやランボルギーニ・ムルシエラゴに乗ったことがある人なら分かるだろうが、イタリアの自動車メーカーはエンジンを作るのが得意だ。

1.4LのMultiAirエンジンは見事だ。高速道路でさえ力強く、まるでターボディーゼルのようだ。ただし、音はディーゼルよりよっぽどスポーティーだ。トランスミッションは全車6速MTが標準設定され、1.4TBにはDCTも設定される。

ジュリエッタの一つ下のクラスのMiToは非常にスタイリッシュで魅力的な小型車なのだが、重大な欠点がある。それは骨を軋ませるような乗り心地の悪さだ。自動車評論家のほぼ全員がこの欠点に不満を抱いているのだが、幸いなことにアルファはこの文句を聞き入れたようで、ジュリエッタはイギリスの道路でもかなり快適だ。

interior

さて、それではクアドリフォリオ ヴェルデに移ろう。価格は24,495ポンドとかなり高価で、これより安価でよりパワフルなハッチバックも存在する(セアト・レオン クプラRなど)。しかし、数字だけが全てではない。ジュリエッタの235PSは数字以上に力強く印象的だ。

特にD(ダイナミック)N(ノーマル)A(オールウェザー)のうちダイナミックを選択すると、強烈な加速を得ることができる。ジュリエッタには全車にDNAシステムが装備されるのだが、QVでは3種類のセッティングの違いがはっきりと分かる。

QVはLussoよりもやや硬いのだが、不快というほどではない。そもそも、楽しすぎて乗り心地のことに意識など向かない。

ジュリエッタはここ数年で最高のアルファであり、楽しさ、質感、価格、デザイン、あらゆる面でライバルを圧倒している。