英国「Auto Express」によるアストンマーティン DBSスーパーレジェーラの試乗レポートを日本語で紹介します。


DBS

以前に試乗したDBSスーパーレジェーラのプロトタイプ車からは相当に高いポテンシャルを感じた。なので今回、量産仕様のレビューをお届けできてとても嬉しい。

様々な意味で、グランドツアラーの中心となるのはエンジンだ。DBSにはDB11と共通の5.2L ツインターボV12エンジンが搭載される。ハードウェアはDB11と同じなのだが、ブーストアップされてマッピングも変更されたため、最高出力は725PS、最大トルクは91.8kgf·mまで向上している。これだけの性能に対処するため、トランスミッションも刷新された。

ただ、圧倒的なパフォーマンスがあるので、不必要に多段化する必要はない。最大トルクはわずか1,800rpmから発揮されるので、0-100km/h加速はわずか3.4秒でこなし、最高速度は340km/hを記録する。4速固定での80-160km/h加速はフェラーリ・812スーパーファストより約1秒速い4.2秒を記録する。ただ、ステアリングがスローなのでフェラーリほど獰猛には感じられない。より長距離GT的な性格だ。

rear

ダンパーのセッティングをデフォルトのGTモードにすると、垂直方向の衝撃に対して寛容になるので、21インチという大径ホイールを履いているにもかかわらず、乗り味は比較的しなやかだ。舗装の良いオーストラリアの道路では、操作性を犠牲にすることなくしなやかな乗り心地を実現していた。

DBSが最も輝くのは高速コーナーだ。180kgものダウンフォースのおかげで高速域でのスタビリティや応答性は非常に高い。セッティングをスポーツモードにするとちょうどいいのだが、スポーツ+モードだとやや硬く感じた。イギリスの道路ではどう感じるのかも気になるところだ。タイトコーナーではDB11より地上高が15mm低く、トレッドが10mm広く、スプリングレートが15%硬くなった効果がはっきりと感じられる。

ステアリングは重さは適切なのだが、中立域から外れるとやたらクイックで、それにシャシが追いつかないことがあるので、どこか人工的に感じることもある。とはいえ、超センシティヴな812とは比べるまでもない。

特に大トルクを路面に目一杯伝えようとしたとき、リアサスペンションがそのトルクに耐えきれなくなる傾向を感じる。当然、リアはしばしば横滑りしそうになるのだが、しっかり対処すれば立て直すのは簡単だ。

interior

直線ではエンジンがリアタイヤを圧倒する。音もとてつもない。エグゾーストが新設計となり、10dB音が増している。スポーツ+モードでは見事な低音が響き渡る。エンジンのパフォーマンスは圧倒的で、わざわざ高回転域まで回す必要もほとんどない。それでも、高回転域まで回せば驚異的なパワーを発揮し、V12はリニアにリミッターまで回っていく。ただ、このあたりでは不満も生じてくる。

この原因は8速ATだ。変速はDCTほど早くないし、正確性も劣るので、加速を鈍くしてしまう。ただその代わり、低速域では非常に運転しやすい。

荷室は270Lあり、室内は2+2のレイアウトでレザーに包まれており、必要な装備はすべて備わる。グランドツアラーとして不足はない。あらゆるすべての点で最高の車を求めている人のための車だ。最もパワフルで、最も速く、最も万能な車。それでいて、スーパーレジェーラにはアストンらしさもしっかり息衝いている。