英国「AUTOCAR」によるラーダ・ニーヴァの試乗レポートを日本語で紹介します。
2015年の時点で、ラーダ・ニーヴァがイギリスに上陸してからおよそ15年が経っていた。その頃はケントのマーク・キーという人がイギリスでニーヴァを販売していた。
今でもまだニーヴァは死んでいない。地元ロシアやドイツなどの市場ではまだ販売が続けられており、2種類のボディスタイル(3ドアと5ドア)と4種類のグレードが設定される。登場以来、いくらか改良は施されているのだが、「現代化した」という表現をすると誇張になってしまうだろう。
1.7L 4気筒ガソリンエンジンにはボッシュ製の燃料噴射装置が付き、ユーロ5の排出ガス基準をクリアしているし、メーターはVDO製のものに変わっており(依然として15年前のような古臭さはあるが)、ドアミラーも初期モデルよりやや大きくなっている。
オンロード性能は決して高いとは言えないのだが、オフロードでは1,210kgという軽さや細いタイヤ、トランスファー、デフロックの恩恵もあって走破性はかなり高い。それに、屋外に出て自分まで泥だらけになったとしても、内装までホースで洗うこともできてしまう。
最新モデルもフロアはプラスチックとゴムのマットで覆われているので、気にせず水洗いができる。内装のプラスチックの質感は酷いのだが、後部座席に乗せた豚や羊はそんなことなど気にしない。それに、ニーヴァには白物家電的な恰好良さがある。
2016年にはエアコンやパワーウインドウ、ヒーター付き電動ドアミラー、16インチアルミホイール、カラードバンパーを装備した4WDの「Urban」が追加された。また、同年にサスペンションやショックアブソーバーの設計変更も行われている。
しかし、基本的には何十年も前の車と何も変わらない。匂いすらも変わっていない。現代の車は非常に静かで、高速道路ではタイヤノイズくらいしか聞こえない。一方、ニーヴァはタイヤノイズもうるさいのだろうがトランスミッションの音がそれ以上にうるさいのでタイヤノイズが聞こえない。
エンジン自体はかなり静かだ。後付けのような見た目の遮音材がボンネットに装備されており、かなりエンジン音が遮断されている。ただ、後ろからはガタガタ、キーキーと雑音が聞こえてくる。
ニーヴァがまともに走れるのはせいぜい110km/h程度だろう。それ以上出してしまうとメカ系の雑音が相当やかましくなってしまう。
ラジオなどは装備されていないのだが、気にせずロシアの行進曲や『赤旗の歌』でも口ずさめばいいだろう。
イギリスでニーヴァを運転すると、多くの若者の視線を集めた。ただしひょっとしたらその若者はロシア出身で、イギリスではニーヴァよりずっと安く中古のBMW M3 (E36) だって買えるのに、どうしてわざわざニーヴァなんかに乗っているのかと不思議に思っていたのかもしれない。
ニーヴァでオフロードに入った瞬間、その実力の高さをカメラマンに見せつけたくなった。ニーヴァは軽いのでレンジローバーすら走れないような道でもどこまでも進んでいけそうだ。
私が試乗したのはマーク・キー氏が用意した試乗車で、傷付けることは許されなかった。とはいえ、ボディはフラットでミラーも小さいので、木の枝に車をぶつける心配はほとんどなかった。それに、ボディはシンプルなホワイトだったので、現代の複雑なボディカラーに比べればよっぽど修復しやすいだろう。
ニーヴァにはライバルというものが存在しない。価格的にはフィアット・パンダ 4x4が競合するのだろうが、堅牢性が違いすぎるし、せいぜいスコットランドの郵便配達くらいにしか使えない程度の走破性しかない。
堅牢性を求めると、他にはかなり高価な車しか存在しない。それに、そういった高価なモデルにはBluetoothなどの先進機能は付いているかもしれないが、スノープラウのオプションなど存在しないし、-40~+45℃まで対応と明記された車もほとんどないだろう。極寒のロシアや灼熱の南アメリカで乗るには理想的な車だ。
エントリーグレードの3ドアモデルは465,900ルーブル(6,463ポンド)で販売されており、5ドアの”上級”グレード「Urban」は551,600ルーブル(7,652ポンド)で販売される。