米国「Motor1」によるジェネシス G70(2019年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。


G70

もし夢の自動車メーカーを作るとしたら、幹部はきっとこんな感じになるだろう。BMWの技術者、ブガッティのデザイナー、そしてランボルギーニのシニア・ヴァイス・プレジデント。これが現実になったというだけでも、新興メーカーであるジェネシスが競争の激しい高級車市場において高い競争力を持ちそうだということが想像できる。しかし、現実はそう甘くはない。

G80やG90が大型セダン市場におけるニッチな選択肢である一方で、G70はジェネシスが初めて規模の大きな市場に投入するモデルだ。35,000ドルを切る価格で販売されるG70こそが今後のジェネシスの主力モデルとなっていくはずだ。しかし、競合車はかなり多い。BMW 3シリーズ、メルセデス・ベンツ Cクラス、アウディ・A4、レクサス・IS、アルファ ロメオ・ジュリア、インフィニティ・Q50と戦っていかなければならない。ただ幸い、その存在感は競合車にも負けないものだ。

最上級モデルには最高出力370PS、最大トルク52.0kgf·mを発揮する3.3L V6ターボエンジンが搭載される。他に2.0Lの4気筒モデルも設定されるのだが、今回はほとんどの時間をV6モデルの試乗に費やした。トランスミッションは8速ATで(2.0L車にはMTも設定される)、FRだけでなく4WDも設定される。

G70は非常に攻撃的で、ときに小さな檻に捕らえられた野生動物のように感じることもある。たとえコンフォートモードであっても、アクセルをわずかに踏んだだけで劇的に加速する。ジェネシスいわく、G70はヒュンダイグループの製品の中で最速の車らしく、実際その速さは確かだ。0-100km/h加速はわずか4.5秒で、52kgf·mという最大トルクはわずか1,300rpmから発揮されるし、ターボラグも問題にならない。

硬くて応答性の高いシャシ(元BMW Mディビジョンのアルベルト・ビアマン氏主導で開発された)のおかげでコーナーでも非常に楽しい。高速域においても安定性が高く、重めのステアリングや3.3Tに標準装備のLSDのおかげもあって、いとも簡単にコーナーを抜けることができる。基本構造をキア・スティンガーと共有していることを考えると、この実力にもさして驚きはしなかった。

rear

もし野生動物としての本能を完全に解き放ちたいなら、あらゆる電子制御をオフにするといい。ジェネシスの開発陣もそれを勧めている。4WDモデルは通常時、前後駆動力配分が4:6なのだが、電子制御をオフにすると駆動力の90%が後輪に送られる。ビアマンは冗談交じりにこれを「ドリフトモード」と呼んでいたのだが、この状態でも四輪を滑らせながらもちゃんと制御することができる。後輪を滑らせることは4WDでも可能なのだが、それをより楽しみたいのであれば2WDのほうが適している。

公道を数百km、そしてサーキットでも試乗し、G70の特性をかなり理解することができた。この車は非常に攻撃的で、G70と比べると3シリーズやCクラスがソフトすぎるくらいだ。私はこの特性をかなり気に入ったのだが、普通の消費者には敬遠されてしまうかもしれない。

コンフォートモードですら、サスペンションは硬く、ステアリングも重い。8速ATはときに粗さを感じさせ、スポーツモードでは普通の道路でもかなり快適性が低い。おそらくはそれゆえにサーキットでの試乗を勧められたのだろう。けれど、G70には欠点を補って余りあるだけの魅力もある。

まず、見た目が良い。個人的にはアルファ ロメオ・ジュリアに次ぐ恰好良さだと思う。じっくり眺めれば他の車との類似性も感じるかもしれないが、それでも個性的なデザインであることは確かだ。全高はどの競合車よりも低い1,400mmで、全幅は1,849mmと広い。キャビンはボディのかなり後方に位置しており、またオーバーハングが短く、全体的にシャープなデザインなので、がっしりとしてアグレッシヴな印象を与える。

フロントフェイスは良くも悪くも比較的柔和な印象だ。「クレストグリル」やヘッドランプの形状はG80やG90と共通性がある。ただ唯一残念なのは、グリル内に装備されたセンサー用のプラスチックパーツだ。これは必要な物なのだろうが目障りだ。

interior

室内は豪華で静粛性も高い。このセグメントの中でもトップレベルのNVH性能を実現している。まるで10万ドル級の最高級車のような内装材や遮音材が使われているようだ。

インテリアデザインはごちゃごちゃしているわけでも古臭いわけでもなく、下品な木目パネルが使われているわけでも、ちゃちなピアノブラックが使われているわけでもない。ソフトなブラックレザーや本アルミのおかげで、クリーンで現代的なインテリアとなっている。唯一、スティンガーと共通のエアコン用プラスチックダイヤルの質感は残念だった。

ダッシュボード上部には8インチのタブレット風タッチスクリーンが標準で備わる。基本的にはスティンガーのものと共通なのだが、より高級感のあるものとなっている。見た目のみならず応答性も良好だ。Apple CarPlayとAndroid Autoには標準で対応しており、Qiワイヤレス充電はオプションで設定される。

G70は価格設定も適切で、2.0LモデルはBMW 3シリーズやアルファ ロメオ・ジュリアよりも安い34,900ドルからとなる。3.3Tの価格設定はまだ発表されていないのだが、おそらくは5万ドル台中盤くらいになるだろう。

ジェネシス・G70は非常によくできた高級セダンで、運転するのもかなり楽しい。競合車と比べて抜きん出て優秀というほどではないのだが、競争の激しいこのセグメントにおいても十分戦っていける実力を持っている。上質な内装、見た目の良さ、スポーティーな走り、そしてMTが設定される点など、ドイツ車ユーザーがジェネシスを検討したくなる要素もたくさんある。