米国「MOTOR TREND」によるプリムス・プロウラーの試乗レポートを日本語で紹介します。


Prowler

赤信号で止まると、周りからの視線に畏縮してしまう。巨大なリアタイヤを履き、力の拍動を響かせ、今にも襲いかかってきそうな印象を振り撒く。信号が青になると、紫色のプロウラーは排気音とともに遠くへと消えていく。タイヤスモークとともに、忘れられない記憶が刻まれる。リアバンパーに記されたプリムス・プロウラーという車名を見て、人々は驚く。
あれがプリムスなのか?!

1993年、デトロイトで開催された北米国際オートショーにおいて、クライスラーがプロウラーのデザインスタディを発表した。このコンセプトカーは、エルヴィスとマリリン、そしてハーレーダビッドソンが融合したような車だった。

しかも驚くべきことに、このプロウラーを量販することが発表された。こんな車を市販することで、クライスラーは平凡な自動車メーカーでないということを証明した。そして1997年、デトロイト工場のダッジ・バイパーと同じ組み立てラインで製造が開始される。

1997年春の発売に先立ち、我々は開発チームの人間と話をすることができた。彼らによると、年間生産台数は3,000~5,000台で、価格は35,000ドル程度になるそうだ。バイパーがダッジのブランドイメージを変えたように、プロウラーもプリムスのブランドイメージを変えることができるだろう。

プロウラーの開発に充てられた資金はわずか7500万ドルであり、少量生産でも低リスクで利益を回収できるそうだ。また、この車の開発によってサプライヤーとメーカーの関係も深まり、同時に開発者の士気も高まったそうだ。

どれをとっても良いことずくめなのだが、プロウラーを開発した最大の理由は、車作りを楽しんで行うため、そしてコンセプトカーを見て「これが欲しい」と言ってくれた人達の期待に応えるためだそうだ。

クライスラーの市場調査の結果、プロウラーの潜在的顧客層は多岐にわたることが判明した。年齢層は若年層から高齢層まで幅広く、金銭的な余裕がある人もいれば、家を抵当に入れてでも買いたいと考えている人もいた。プログラムマネージャーのシンディ・フレイ氏いわく「プロウラーの市場を作り出すのは、統計などではなく情熱」だそうだ。

今回、プロトタイプ車を最初に見たとき、オリジナルのコンセプトカーに非常に忠実であると感じた。バイパー同様、コンセプトカーのあらゆるディテールが市販車に継承されていた。コンセプトカー同様、タイヤサイズは前後で違う(フロント225/45HR17、リア295/40HR20)し、ステアリングコラム直上のタコメーターも変わっていない。

rear

ボディサイズに関してはコンセプトカーから変更されている。デュアルエアバッグの装備や衝突安全性の確保のため、全長は8cm、全幅は10cm増加している。ホイールベースは2,883mmで、コンコード/LHSを超えてクライスラー最長となるのだが、全長はネオンよりも短い。また、コストと重量を削減するため、コンセプトカーとは違い、ルーフは手動開閉式となっている。また、スペアタイヤは装備されず、ランフラットタイヤ(グッドイヤー EAGLE)を装着している。

プロウラーのパーツの40%は既存のモデルからの流用だ。3.5L SOHC V6エンジンと4速ATはイーグル・ビジョンから、コイルオーバーショックはバイパーからの流用で、インテリアのスイッチ類もさまざまなクライスラー車からの寄せ集めだ。鋳造ステンレススチール製エグゾーストマニフォールド、マグネシウム製メーター、カーボンファイバー強化されたウインドウフレーム、複合プラスチック製フェンダーなど、残りの60%はプロウラー専用に設計されている。

プロウラーには400kg分の軽合金が使われている。フレーム部分には6061アルミニウムが使われ、メインボディ部分はシートアルミニウム製で、セルフピアスリベットと工業用接着剤が使われている。リアブレーキローターもアルミニウム製だ。開発エンジニアのジョン・ラスバッハ氏によると、車重は1,247kgだそうだ。

今回テストしたのは開発途中のモデルであり、まだ荒削りな部分も存在した。パネルの隙間は完璧とは言い難かったし、機械的な配置が発売までに変更される可能性もある。

今回は、紫色のプロトタイプ車の写真を撮影することと、そして「プラングラー」と呼ばれるボディ部分がジープ・ラングラーの奇妙な見た目のテスト車を試乗することしか許されなかった。

実際のプロウラーのドアは短く、開く角度も限られているので、乗り降りはしづらそうだ。着座位置は低く、タートルネックのようにボディに囲まれてしまうので、視界は良くない。ただ、室内装備は豊富だ。7スピーカーオーディオシステムやチルト調整可能な4スポークステアリング、グローブが片方しか入らなさそうなグローブボックス、エアコンが用意され、目の前にはレトロなメーターが横に広く並んでいる。ロック、ドアミラー、ウインドウはすべて電動対応だ。車内の居心地は良かった。

パワートレインおよびシャシの開発のため、合計5台のプラングラーが作られた。シャシはプロウラーのものなのだが、悪天候でもテストできるようにラングラーのキャビンが上に乗っている。ガタつきや風切り音は気になるのだが、その走りはプロウラーとほとんど同じだそうだ。

キーを捻った瞬間、長いフードの下に搭載されたクライスラー製V6エンジンが唸り声を上げ、イーグル・ビジョンとの違いはすぐに明らかになる。最大の特徴はマフラーが存在しないことだ。シリンダーバンクからの排気はエンジンの近くに配置される触媒コンバーターに入る。その後2本に分岐した排気管は車両中央のレゾネーターに入り、再び分岐して車体後部で外に繋がる。

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イーグル・ビジョンではフロントに搭載されているトランスアクスルはプロウラーではリアに移設されている。トルクコンバーターを支えるためにフロントカバーも追加されている。ちなみに、プロウラーに搭載されるトランスミッションの許容トルクの関係上、V8エンジンを搭載することはできない。

テスト車に搭載されるエンジン出力は市販版よりもパワーが少ないのだが、それでも十分な加速が得られた。市販車の最高出力は228PS程度で十分にも思えるのだが、問題もある。4速ATでは段が少なすぎるし、高回転型のV6エンジンはトルクが物足りない。プロウラーにカマロZ28のような性能を期待してはいけない。0-100km/h加速はせいぜい7秒台後半だろう。

ただし、ハンドリング性能は非常に高い。ラスバッハ氏いわく、同価格帯の車に負けない乗り心地とハンドリングを追求したそうだ。ホイールベースが長いので、乗り心地はまるで高級セダンのようだ。しなやかなスプリングやショックアブソーバーのおかげで、急加減速時のピッチングも抑えられている。

前後重量配分はかなりリア寄りで、ABSを使わずとも制動距離はかなり短い。ただ、ブレーキ操作は大変だった。バイパーくらい扱いやすいブレーキだとなお良かった。

ホイールベースが長いと急旋回時にもたつきそうなものだが、コーナーでも非常に楽しかった。しっかりとクイックにターンインしてくれるし、グッドイヤーのタイヤはしっかりと路面をグリップしてくれた。コーナリング中にはそれなりのロールが発生するのだが、十分に許容範囲だ。これはまるで、1930年代のホットロッドの90年代版だ。

今回の試乗によって分かったことがある。プロウラーは最高のハンドリングを実現したホットロッドだ。35,000ドルという価格設定も内容を考えればかなり安い。