英国「Auto Express」によるスズキ・スイフトスポーツ、フォルクスワーゲン・up! GTI、フォード・フィエスタ STラインの比較試乗レポートを日本語で紹介します。


up Fiesta Swift

ゴーカートを運転したことのある人なら分かるだろうが、走りを楽しむためには必ずしも高出力である必要はない。ゴーカートのように小さく、そして安く、十分に楽しめる車も存在する。

新型スズキ・スイフトスポーツは従来型からシャシ、エンジンを刷新し、数多の新技術を投入して登場した。旧型スイフトスポーツは元気よく回るエンジンを搭載する低価格なホットハッチとして、他のコンパクトスポーツハッチバックとは一線を画していた。しかし、新型はターボエンジンを搭載し、価格も上昇している。

新型スイフトスポーツの価格はフォルクスワーゲン up! GTI と140PSのエンジンを搭載するフォード・フィエスタ STラインの中間に位置する。フィエスタの実力は既によく知っているのだが、我々が up! GTI をテストするのは今回が初めてだ。

活力ある3気筒エンジンと軽量ボディで、果たしてup!がスイフトのようなコンパクトスポーツに打ち勝つことはできるのだろうか。今回はウィルトンミル・カートトラックでこの3台の実力を試した。


スズキ・スイフトスポーツ

Swift interior

標準のスイフト同様、スイフトスポーツも5ドアのみの設定となる。発売初月は17,999ポンドから16,499ポンドまで値下げして販売されるので、この価格だとちょうどup!とフィエスタの中間となる。ボディカラーのチャンピオンイエローはかつてのスズキのラリーカーに由来しているのだが、果たして、新型はその名に恥じない実力を有しているのだろうか。

加速では他の2台に差をつけている。車重は非常に軽く、そして1.4Lガソリンターボエンジンは140PSを発揮する。0-100km/h加速は7.9秒で、他の2台のいずれよりも1秒以上速い。最大トルクは3台の中で最高で、車重は3台の中で最も軽く、5速固定の80-110km/h加速でも最速の5.5秒(up! GTI より0.1秒、フィエスタより2秒速い)を記録した。4速固定の50-80km/h加速では、同じくらい軽い up! GTI と同タイム(4.0秒)を記録し、フィエスタ(5.4秒)を凌いだ。

残念ながら、他の2台に搭載される3気筒エンジンとは違い、スズキの4気筒エンジンには個性が欠けている。スイフトは3台の中で最も速いのだが、直線を走らせるのはあまり楽しくない。エンジン音は退屈だし、最高出力がわずか5,500rpmで発揮されるので、高回転まで回す楽しさもない。旧型スイフトスポーツに搭載されていた自然吸気4気筒エンジンの楽しさを思うと残念でならない。

しかしながら、スイフトは曲線で輝く。ステアリングの重さは見事で、応答性が良く操作性も非常に高いので、グリップを最大限活かして走らせることができる。非常に軽いので負荷も少なく、簡単に向きを変えることができる。

舗装の悪い道でも乗り心地は非常に良い。高速域の乗り心地ではフィエスタに負けるが、街中では3台の中で最も快適だったし、段差を乗り越えたときの衝撃もそれほど酷くない。

舗装が悪くてもコーナーの多い道路ではかなり楽しむことができる。ただやはり、他の2台のような独特のユーモアは感じられなかった。


フォルクスワーゲン・up! GTI

up interior

GTIであっても、up!はやはり安価で、5ドアでも14,155ポンドと3台の中では最も安い。115PSの1.0L 3気筒エンジンを搭載し、車格は他の3台よりも1クラス下ながら、Bセグメントにも匹敵する室内空間を有している。

最高出力はフィエスタより25PS少ないのだが、車重が軽いので加速性能はフィエスタよりも高い。up!以上に軽いスイフトスポーツ相手だと苦戦したのだが、3速固定の50-80km/h加速ではスイフトスポーツより0.2秒速い2.9秒を記録した。

4速固定の50-80km/h加速ではスイフトスポーツと同一のタイムを記録し、5速固定の80-110km/h加速ではスイフトスポーツとわずか0.1秒差の5.6秒を記録した。加速テストではフィエスタに差をつけて2台の接戦となった。

0-100km/h加速に関してはスイフトスポーツの圧勝だったのだが、up! GTI はフィエスタより0.1秒速い9.1秒を記録した。最高出力の115PSは比較的低回転域で発揮されるため、公道で性能を発揮しやすい。最大トルクは20.4kgf·m/2,000rpmで、低回転域から非常に力強い。

5速MTはいかにも機械的なフィールで、操作感は軽くて正確だ。変速をするのは非常に楽しい。ステアリングも同様に正確で、シャシ性能は他の2台ほど強固ではないのだが、それでも十分に楽しい。人工的に増幅されたエンジン音も心地良く、他のホットハッチのような押し付けがましい作り物感もない。この音を聞くたびについ笑顔になってしまう。ポルシェ・911のフラットシックスの雰囲気すら感じる。

唯一の欠点はGTIに装備される17インチのホイールだ。小径ホイールを履く標準のup!と比べるとしなやかさに欠け、段差の衝撃がはっきりと伝わって、特に低速での乗り心地は悪い。3台の中では最も快適性が低かったのだが、とはいえホットハッチとしては十分に許容範囲内だ。


フォード・フィエスタ STライン

Fiesta interior

今回試乗したのは140PSの1.0Lガソリンエンジンを搭載するモデルで、STを除く標準のフィエスタの中では最もスポーティーなモデルだ。グレードは「STライン」で、価格は18,615ポンドとなる。

STラインはあくまでもホットハッチではないのだが、ハンドリングに重きを置いているならフィエスタを選ぶべきだろう。シャシ性能に関してはフィエスタが3台の中でも最高だ。

他の2台よりも俊敏でありながら、どんな道路でも快適に運転することができる。STラインにはスポーツサスペンションが装備されているのだが、ダンピングはロールを抑えつつも段差での衝撃をしっかりと吸収してくれる見事なセッティングとなっている。

ステアリングはクイックかつ正確で、コーナーを走らせて路面の情報が最もはっきり伝わってくるのもフィエスタだ。それでも快適性はほとんど犠牲になっていないし、グリップも絶大で、運転が非常に楽しい。

フィエスタの6速MTは他の2台と比べると正確性で劣るのだが、up!の軽いシフトレバーと比較すると、操作する満足感は高い。フィエスタの3気筒エンジンはスイフトの退屈なエンジンと比べると魅力的なのだが、それでもGTIほど個性があるわけではない。

残念ながら、エンジンはフィエスタの弱点だ。最高出力は140PSなのだが、他の2台よりも重いので物足りなさを感じてしまう。0-100km/h加速は9.2秒で、3台の中では最も遅かった。

ギア固定での50-80km/h加速および80-110km/h加速は特に他の2台との差が大きく、この点は残念だった。ハンドリングに関しては最高の実力を有しているのだが、やはりパフォーマンスの低さが大きく足を引っ張っている。


結論

1st: フォルクスワーゲン・up! GTI
この接戦を制したのはフォルクスワーゲン・up! GTI だった。それぞれに強みがあった今回の比較だったのだが、up! の個性的で力強くそして経済的なエンジン、価格の安さなどが今回の勝因となった。他の2台と比べると車格は下なのだが、それほどの差はない。今回は車格の差以上に楽しさが際立った。

2nd: スズキ・スイフトスポーツ
今回は2位としたが、値引きがなかったら3位になっていただろう。加速性能は3台の中で圧倒的な1位だし、ハンドリングも優秀で、軽さのおかげもあってイギリスの道路でも見事な乗り心地とコーナリングを見せてくれた。しかし、エンジンに魅力が欠けている点は残念だった。ただ、装備も充実していたので、僅差でフィエスタを上回った。

3rd: フォード・フィエスタ STライン
フィエスタが最下位になることなどほとんどないのだが、それだけ今回の比較が僅差だったということだ。フォードのハンドリングは見事としか言いようがない。乗り心地、グリップ、安定性のバランスは3台の中で最も優れていた。しかし、140PSのエンジンではフィエスタよりも低価格な他の2台には太刀打ちできなかった。