米国「Car and Driver」によるインフィニティ・Q50 3.0T AWD(2018年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。


Q50

2つのことを両立するのは難しい。例として二重スパイを列挙してみよう。ロバート・ハンセンは15回の終身刑を科され、ジュリアス・ローゼンバーグおよびエセル・ローゼンバーグは電気椅子にて処刑、セブルス・スネイプは蛇に殺された。

もっとも自動車の場合、二重スパイのような悲惨な結果に至るわけではないのだが、インフィニティ・Q50という車も、「快適な高級車」と「スポーツセダン」の間で葛藤している。

今回の試乗車は304PSのツインターボV6エンジンを搭載する4WDモデルだった。まず目につくのは曲面的なボディパネルや怒ったような角度のヘッドランプだ。また試乗車にはパドルシフト、アダプティブサスペンション、高性能ブレーキを含むパッケージオプションも装備されており、スポーツセダンらしさを感じる。しかし実際に運転してみると、Q50は走行性能よりも快適性を重視しているということが理解できる。

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直線の高速道路を運転する分にはまったく欠点が見つからない。直進中にステアリングの修正舵はほとんど必要なく、滑らかな路面では乗り心地が快適だし、7速ATのシフトアップもほとんどシームレスだ。

しかし、ちょっと飛ばしてみると、ステアリングの正確性は物足りず、フィールにも欠けるし、舗装の悪い道では乗り心地も悪化してしまう(「Sport」に標準装備の19インチホイールを履いていたことも影響しているだろう)。パドルシフトを操作しても変速までわずかなラグがあるし、7速ATはときに変速に迷ってしまうこともあった。

しかし、決してQ50に魅力が無いわけではない。テストトラックで走らせてみたところ、加速性能が非常に高いということが明らかとなった。0-100km/h加速では3.0Tが5秒フラットを記録した。100PSの差があるQ50 レッドスポーツ400(2WD車)と比べても0.5秒しか差がない。何より凄いのはその滑らかさだ。3.0Tの最大トルクが40.8kgf·m/1,600-5,200rpmと広い回転域で発揮されることもあってか、シフトアップはほとんど感知できないし、エンジンの応答性も高く、ターボラグも最小限に抑えられている。

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このようなキャラクターを考慮すると、ワインディングロードを走らせるよりは、パワフルなクルーザーとしての使い方が合っているだろう。ただ、高級クルーザーとして考えた場合にも、問題点は残る。

Q50は登場から既に5年が経過しており、インテリアデザインにも古さを感じるようになった。52,410ドルという価格でありながら、インテリアにはプラスチックが多用されているし、インフォテインメントシステムは時代遅れだ。「Luxe」グレードのインテリアはまだましなのだが、それでもスマートフォンが生活必需品になる前に設計されたようなセンターコンソール(スマートフォンを置ける空間が存在しない)は問題だ。派手さはともかく、インテリアではキア・スティンガーのほうがまだ完成度は高い。

それでも、Q50はアウディやBMW、メルセデスなどのドイツ製競合車の代わりとなる選択肢として魅力的だ。エクステリアは35,195ドル(4気筒・2WD車)からという実際の価格よりもはるかに上質だし、ツインターボV6エンジン搭載車であれば、定評あるドイツ車たちを追い越すこともできる。細かい部分まで気になってしまう人はQ50の妥協点を容認できないだろうが、それほどお高くとまっていない人ならこの車に魅力を見いだせるだろう。