米国「AUTOWEEK」によるアキュラ RDXの試乗レポートを日本語で紹介します。


RDX

アキュラ RDXといえば小型高級クロスオーバーSUVの安全牌なのだが、アキュラはただの安全牌から脱却しようと考えた。そして、人から渇望されるようなSUVを作ろうとした。”感情的”な理由で購入される車を作ろうとした。

これまでのRDXの購入者の統計を分析してみると、RDXを選択した理由は大きく以下の3つであった。
1) コストパフォーマンスの高さ
2) 信頼性の高さ
3) アキュラ購入経験者によるリピート買い

要するに、RDXに”惚れ込んで”購入に踏み切った消費者はほとんどいなかった。それを受け、「賢明な選択肢だから購入する」という消費者ではなく、「単純に欲しいから購入する」という消費者を増やすことがアキュラの目標となった。

ところが、アキュラが集計した全16個の「車を購入する理由」のうち、”感情的”な理由は5つしかなかった。しかもそのうち3つは「ブランドイメージ」、「車種のイメージ」、「伝統」であり、アキュラの強みとは言いがたい。しかしアキュラは感情的な車を生み出そうと努力し、そうして誕生したのが新型RDXだ。

まずは外観から見てみることにしよう。3代目RDXのエクステリアデザインには2016年のデトロイトショーに出品されたプレシジョンコンセプトの要素が取り入れられている。プレシジョンコンセプトはセダンなのだが、クロスオーバーSUVであるRDXにその要素が散りばめられている。「ダイヤモンドペンタゴングリル」や「ジュエルアイLEDヘッドランプ」などのアキュラらしさは踏襲され、ドアガーニッシュ部分には深い彫りが入っている。

プロポーションも見直されている。全長はほとんど変わっていないのだが、ホイールベースは約60mm延長している。ボディは曲面が多すぎず少なすぎずで魅力的に思えた。つまり”感情的”になれたということだ。

rear

パフォーマンスも変化している。新型RDXには3.5L V6エンジンに代わり、新たにVTEC 4気筒ターボエンジンが搭載される。このエンジンは完成度が高く、V6と比べると最高出力は7PSしか低下しておらず、トルクはV6より向上している。ちなみにこのエンジンはチューニングは異なるもののシビックタイプRやアコードにも搭載されている。

最高出力は276PS/4,800rpmで、最大トルクは38.7kgf·m/1,600-4,500rpmとなる。車重が1,716~1,845kgであることを考慮しても不足はないだろう。具体的な数字は示されていないのだが、0-50km/h加速、0-100km/h加速、0-400m加速はいずれも旧型のV6モデルよりも速いそうだ。

トランスミッションはホンダ内製の10速ATが採用され、アキュラによると、追い越し加速時には10速から4速まで直接変速することができるそうだ。新設計のSH-AWDはトルクの70%を後輪に送ることができ、左右への駆動力配分の変更も可能だ。必要に応じて、後輪に送られるトルクの100%を片側のタイヤのみに送ることもできる。

新型RDXには(少なくとも現時点においては)アキュラ専用の完全新設計シャシが採用されている。剛性は38%向上し、接着全長は35m以上にわたる。サスペンションはリアが5リンク式、フロントがマクファーソンストラット式となる。ステアリングはデュアルピニオン式となり、空間効率が向上しているそうだ。

実際に走り出してみると、ボディ剛性の高さやパワートレインの応答性の高さを感じることができる。走りは決してソフトではない。主な競合車(BMW X3、アウディ・Q5、レクサス・NX、インフィニティ・QX50)と比較しても、上位に立てる実力だろう。

ドライブモードは4種類設定され、サスペンションを好みに応じて調整することができる。スポーツ+モードにするとコントロールダンパーを介してショックアブソーバーがハードに調整される。4種のモード間の差はそれほど大きくないので、スポーツ+モードとスポーツモードはほとんど変わらなかったし、スポーツ+モードからコンフォートモードに変えても大きなギャップはない。

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今回は警察の多い公道での試乗で、あまりコーナーを攻めるようなことはできなかったのだが、それでも十分に満足できる走りであると感じた。ハンドリングに関しても、パフォーマンスに関しても、競合車と十分に戦えるレベルにあるだろう。

今回は砂利道でスラローム走行をする機会もあった。その際にはトラクションコントロールとスタビリティコントロールをオフにして走行した。すると、まるでパイクスピークのごとく(ちなみに、RDXは6月からベントレー・ベンテイガとともにパイクスピークを走ることになる)スライドをしながら走った。見事なまでに後輪がスピンした。

ただ、ひとつだけ問題がある。アキュラの技術者と結婚でもしない限り、トラクションコントロールをオフにする操作を自分で行うのはほぼ不可能だろう。トラクションコントロールをオフにすることは公式には許可されていない。なので、試乗会でこのような体験をさせることに関しては議論の余地がありそうだ。

今回は「トゥルー・タッチパッド・インターフェイス」も体験することができた。ダッシュボード最上部にあるスクリーンはセンターコンソール部のタッチパッドによって操作することになる。タッチパッドのさまざまな場所をタップすることにより、スクリーンに表示されたさまざまな機能を使うことができる。また、ヘッドアップディスプレイはカスタマイズが可能で、ナビ画面、電話機能、ラジオ、Apple CarPlayなど、さまざまな画面を表示させることができる。

価格は38,295ドルからで、2WDのままでそれなりに装備を充実させると1万ドルほど高くなる。公式発売日は6月1日となる。実際に試乗してみて、感情が突き動かされるか試してみると良いだろう。