英国「Auto Express」によるBMW M5の試乗レポートを日本語で紹介します。


M5

BMW M5にはおよそ30年の歴史があり、その間に高い評判を得てきた。M5はこのクラスのハイパフォーマンスセダンのベンチマークであり続けてきたのだが、昨年登場した612PSのメルセデスAMG E63 Sの登場により、M5の影が薄くなっていた。

しかし、ようやくイギリスにも新型M5が上陸し、Eクラスに真っ向勝負を挑んでいく。新型M5には最高出力600PS、最大トルク76.5kgf·mを発揮する4.4L ツインターボV8エンジンが搭載され、新設計の8速ATが組み合わせられる。スペック的には先代モデルよりも確実に進化しており、E63にも十分に対抗できそうだ。また、もうひとつの目玉として、長らく後輪駆動しか設定されなかったM5が4WDとなっている。

4WD化により、0-100km/h加速はわずか3.4秒でこなすことができる。つい数年前なら、これくらいの記録を出せるのはケータハム・セブンのようなライトウェイトスポーツくらいだったのだが、M5の最新鋭のパワートレインをもってすれば2トンの大型セダンでこの記録を実現することができるようだ。公道での実際の加速性能もとてつもなかった。

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前輪にも駆動力が送られるようになったことで発進時のトラクションが向上し、トリッキーな路面状態でも安全性が増しているのだが、他の4WDシステムとは違い、M5の場合は走る楽しさがまったく削がれていない。ほとんどの場面では運転感覚がFR車とほとんど変わらず、必要な場面でだけ前輪が補助してくれる。

ステアリングがやや軽く、フィードバックに欠けている点は残念だったのだが、ボディサイズや車重を考えれば驚くほどに俊敏だ。走行モードを変更すればステアリングの重さを変えることもできるのだが、この場合、人工的な感覚が増してしまう。

駆動力配分として、「4WD」、「4WDスポーツ」、「2WD」の3種類から選ぶこともできる。4WDスポーツモードは4WDモードよりも楽しく、2WDはそれ以上に楽しいのだが、600PSという出力は後輪だけでは手に余るので、基本的にはサーキット専用のモードだと考えるべきだろう。それ以外に、ステアリングやサスペンション、エンジンのセッティングも変更でき、ステアリングのスイッチを操作することで6種類(オートマチックモード3種類、シーケンシャルマニュアルモード3種類)の変速モードを選択することができる。

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BMWらしい驚異的なパフォーマンスや優秀なシャシのおかげで、どんなセッティングであっても本物のドライバーズカーであり続ける。大型セダンを運転しているということなど忘れてしまう。ただ、あくまでM5は大型セダンなので、コンフォートモードにすればイギリスの道路でも十分快適に移動することができる。M5はまさしく毎日の通勤に使えるスーパーカーだ。ただし、大径ホイールのせいで低速域の乗り心地は悪く、街中の段差を乗り越えると跳ねがちになる。

BMW M5のコンフォートモードとE63の最もソフトなモードを比べると、明らかにM5のほうがソフトだ。E63の場合、高速域でも跳ねがちでなかなか安定してくれないのだが、M5は落ち着いており、長距離移動にはM5のほうが適している。

しかし、やはりメルセデスの強みはV8エンジンだろう。メルセデスのV8はBMWの4.4L V8よりも個性があるので、パフォーマンスは拮抗しているとはいえ、アクセルを踏み込むのはメルセデスのほうがずっと楽しい。

とはいえ、M5には加速時の感動の欠如を補えるだけの足回りがあるし、決してM5のエンジンがつまらないわけではない。それに、M5のほうがドライビングポジションは良いので、より快適に移動することができる。