米国「Car and Driver」によるフォード・フュージョン(2010年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。

※内容は2008年当時のものです。


Fusion Sport

連日、デトロイトのビッグ3の苦境について報じられている。これについて少なくとも私が言えるのは、良い製品を生み出さなければ現在の窮状から脱することはできないということだけだ。

そんな折に登場したのが新型フォード・フュージョンだ。フュージョンはフォードのラインアップの中でも最もベーシックなモデルであり、販売台数はそれなりに多いのだが、設計の古いプラットフォーム(2002年のマツダ6=日本名アテンザで登場)を使っており、完成度はそれほど高くなかった。

新型フュージョンはあくまでもマイナーチェンジモデルなのだが、内外装だけでなく中身まで大きく変更が施されている。新登場したフュージョンスポーツにはフォードお馴染みの3.5L V6エンジンが搭載され、他の4気筒エンジンや3.0L V6エンジンにも手が入っているし、新たにハイブリッドモデルも追加された。

新型フュージョンは従来よりもずっと派手になり、道路でも(おそらくは警察官からも)目を引くようになった。エクステリアデザインに関しては「刷新された」という表現が適切かもしれない。フロントグリルやボンネットをはじめ、フロントフェイスのデザインはまったく新しくなり、バンパー部分には欧州フォードのモンデオやフィエスタとの共通性も見て取れる。しかし、上半分は太いスリーバーグリルや若干不気味なヘッドランプ、膨らんだボンネットなど、いかにもアメリカンフォード的だ。

rear

フォードによると、空力性能は初期モデルと比べて大きく改善しているそうだ。ベースグレードには16インチホイールが装着され、スポーツモデルには18インチの10スポークホイールが標準装着される。それ以外のモデルは17インチが標準装着で、18インチがオプション設定となる。

リアに目を向けると、テールランプの形状が曲線的になり、リアバンパーやトランクリッドのデザインも変更されたことで、恐ろしいほどに退屈だったリアの見た目はそれなりにましになっている。

インテリアも大幅に変更されてはいるのだが、デザインに関しては大して進化していない。その代わり、手が触れる部分にはソフトな材質が多く使われており、光沢の少ないプラスチックが多用されるようになったため、内装の質感は向上している。また、メーターも大きく進化しており、クリアで読みやすく、ブラックとブルーの三次元的な文字盤とレッドの針が見事に調和している。センターコンソール部は他のミッドサイズセダンと大差なく、雑多にボタンが並んでいる印象がある。

最近のフォード車らしく、アンビエントライトやカップホルダーの照明をカスタマイズすることができるのだが、これを気に入るかただのガジェットと無視するかは人によるだろう。ただ、最新のSYNCインフォテインメントシステムはガソリンの価格情報やリアルタイム交通情報なども取得でき、非常に便利だった。

interior

フュージョンスポーツのインテリアカラーに関しては賛否両論あった。フュージョンスポーツではダッシュボードにブルーもしくはレッドのアクセントが入り、レザーシートも一部分が鮮やかな青もしくは赤に塗られてしまう。ただ、少なくとも運転席に座っているときにはシートの色を見ずに済む。それに、オールブラックのインテリアも選ぶことができる。

新型フュージョンではエンジンの選択肢が増え、4気筒エンジンは排気量が2.3Lから2.5Lに増加し、最高出力は15PS増えて177PSに、最大トルクは2.2kgf·m増えて23.8kgf·mとなっている。4気筒エンジンではMTとATが選択でき、いずれも1段増えて6速となっている。ハイウェイ燃費は14km/Lらしいのだが、これを書いている時点ではなぜかシティ燃費は明かされていない。

このエンジンは滑らかでよく回るように感じた。加速性能は十分ながらもそれほど余裕はないのだが、中回転域はそれなりに力強い。ちなみに、2.3L、5速MTの旧型フュージョンが0-100km/h加速8.1秒だったので、新型はそれを下回る数字になるだろう。