Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのリチャード・ハモンドが英「Top Gear」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2013年に書かれたホンダ・インテグラタイプR DC2のレビューです。


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僕は「スパルタン」とか「ハードコア」といった言葉で表現できる車が好きだ。屋根もドアもない大昔の車は例外として、現代の車でこのように形容できる車といえば、ホンダ・インテグラタイプRだ。

インテグラタイプRはボディカラーすら限られている。ブラック、レッド、ホワイトしか選択できない。カラーバリエーションを増やしすぎればわずかながらも車重が増え、刃のように鋭く正確なこの車の特質が損なわれてしまうのだろう。そして見た目も非常に実直だ。軟弱さなどまるで存在せず、真面目に、そしてひたむきに設計されている。

マーケティング的ごまかしでオーナーに自己満足感を与えるだけの「シンプルさ」とは違う。この車には真の「シンプルさ」がある。窓は可能な限り薄くなり、スペアタイヤにはカバーなど存在せず、遮音材もほとんどない。この車には1.8Lの4気筒エンジン以外になにもない。そしてこのエンジンは圧倒的な存在感を放つ。

一言で言うなら、荒々しい。可変バルブタイミング機構により最高出力が8,000rpm以上の高い回転域で発生し、そのまま9,000rpmまで回すことができてしまう。最高出力は190PSなのだが、車重がわずか1,100kgなので十二分に力強い。0-100km/h加速は約6.5秒で、230km/hまで加速することができる。その加速は排気量からは予測できないほどに特別だ。

吸気ポートは手作業で磨き上げられるため、1日に製造できたのはわずか25台だった。これだけでも周りに自慢できるだろう。前輪駆動車ではあるものの、楽しさに溢れている。シャシはかなり強固で、LSDのおかげで下劣で野蛮で、そして楽しいオーバーステアを呈する。

インテグラタイプRに乗ると運転が上手になったように感じる。どれだけ暴力的に扱おうとも、そうすることを前提に設計されているかのごとくびくともしない。真剣に運転すれば車は即座に応答し、圧倒的な正確性をもって期待に応えてくれる。

この車は、スパルタンで、特別で、真剣だ。それだけに、1998年に登場した当時の価格はそれなりに高かった。価格は2万ポンドを超えていたのだが、インテグラには軽量なリアスポイラーくらいしか装備されておらず、ホイールアーチの膨らんだ筋肉質な競合車と比べると地味に見えた。

インテグラタイプRは純粋主義の真の車好きのための車だ。現在市場に出回っている個体はどれも限界近くまで使い込まれているだろうが、きっとそれは愛のある使い込まれ方だろう。

インテグラタイプRは普通のホットハッチよりもずっと純粋で、それでいて実用的でタフな車だ。その価値は今でもまったく色褪せていない。


Hammond drives the icons: Integra Type-R