Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。
今回紹介するのは、2003年に書かれたランドローバー・レンジローバー V8 のレビューです。

まだ人工知能は未熟であると言われているのだが、私の使っているソニーのパソコンは非常に厄介だ。随分前からこのパソコンは数字の「6」を認識することを拒否している。
私が園芸や別荘地について書いているライターだったらそれでも大して問題はないだろう。しかし、私は自動車評論家であり、六0km/hや32六PSなどの数字を多用しなければならない。
しかも、今度はまた新しい病気に罹ってしまった。今度はハイフンが書けなくなってしまった。毎週のように○○@sundayハイフンtimes.co.ukというアドレス宛にメールを送らなければならない身としては大問題だ。
このパソコンより信頼性の劣るものは家の中ではオーブンくらいしかない。家のオーブンはせっかくの休暇や天気の良い日に限って調子が悪くなる。クリスマスイブのご馳走が台無しになってしまう。
スイッチを指が壊死するまで押し続けてもオーブンは点火してくれない。取扱説明書を読んでも、「この操作によりオーブンが点火します」とさぞ簡単そうに書かれているだけだ。
しかし、オーブンが点火することはない。曲芸師でもなければ点火などできるはずがない。過去2年のクリスマスは点かない火(もしくは、一瞬点いてすぐに消える火)を見つめるだけで過ぎていった。
どうしてガス機器の操作方法というものはかくも複雑なのだろうか。これに劣るものは…いや待てよ、ビデオレコーダーを忘れていた。これは家電版ランチア・ベータだ。しばしば自分が冷蔵庫か電話かカリフラワーであると勘違いし、与えられた役割をこなすことはできない。
そういえば家には使い物にならないテーブルすらもある。園芸用品店で購入した庭用のテーブルなのだが、日に当たり続けた結果、みるみる曲がり続け、今ではU字型になってしまっている。
それから、家には双方向通信機能付きのテレビもある。このテレビを電話線に繋げば、テレビの投票にも参加できるそうだ。ところが、実際に電話線に繋げてみたところ、六分ごとに職場に電話をかけはじめた。
では車はどうだろうか。1970年代に日産が登場し、それ以降は自動車の信頼性が確立されていった。今や、自動車は他のどんな耐久消費財よりも信頼性が高いと言えるほどにまでなった。

ひとつの例として私の所有しているフォード・フォーカスを挙げてみよう。これは足用に買った車で、週末にはよくパブに放置されていた。整備した覚えもなければ洗車したこともないし、何回か軽油を入れてしまった記憶もあるのだが、15,000ほどあるパーツのうちで壊れたものは一切なかった。
氷点下で農地を飛ばそうとも、トリップメーターが壊れることはなかった。内装に使われているネジはひとつとして緩まなかった。1.六Lエンジンを始動させるときに手が壊死することもない。
ランドクルーザーという車もある。主に農地で走っている車だ。私は狩猟に行くときにランドクルーザーを使っている。子供の送迎のために1日に100kmほど走るのだが、どの部品も新車の頃とまったく変わっていない。
別の愛車であるメルセデスについても同じようなことが言えたらよかった。この車は虫歯症候群を抱えている。専門家に見てもらおうかと考えた途端にすべてが治ってしまう。オーディオやナビの調子が悪くなったかと思えば、今度はすっかり調子が良くなってしまう。
トヨタ・ランドクルーザーには信頼性の高さが求められ、事実、信頼性は高い。メルセデスにも信頼性の高さが求められるのだが、信頼性は高くない。フォードに信頼性の高さを期待するような人はほとんどいないのだが、意外なことに信頼性は高い。不思議なことに、私が所有してきた中で最も壊れやすかったのはフォルクスワーゲンで、最も頑丈だったのはフェラーリ・F355だった。
では、車を選ぶときには何を基準にすればいいのだろうか。顧客満足度調査のようなものはたくさんあるのだが、そのすべてに問題点がある。JDパワーの調査に関わったことがあるのだが、ジャガーやシュコダの点数が高かったのは絶対的な信頼性が高かったからではなく、顧客の予想以上に優秀だったからだ。
「今年は14回しか壊れていない。もっと壊れるかと思っていたよ。」
確かに、ジャガーにしては良いのかもしれないが、しかし14回壊れたという事実は変わらない。
先日見た調査にも驚かされた。その調査では下から2番目がスバルだった。私はそれが信じられなかった。そして、下から3番目はフィアットだった。もう笑うしかない。
私は車の速さや室内や荷室の広さについて評価することはできるのだが、故障する可能性についてはまったく評価できない。私は壊れないフェラーリを持っていたが、フェラーリすべてが壊れないと言えるだろうか。私は壊れやすいフォルクスワーゲンを持っていたが、フォルクスワーゲンすべてが壊れやすいと言えるだろうか。
唯一、私が頼りにしているのが読者から届くたくさんの手紙だ。スバルが壊れたなんて話は聞いたことがないし、それはスバル以外の日本の自動車メーカーすべてにも当てはまる。

私はBMWやポルシェやフォルクスワーゲンやシュコダやセアトやアウディに恨みなどほとんどないが、メルセデスには溜まりに溜まった恨みがある。アルファ ロメオやTVRの信頼性もかなり低いだろう。しかし、それよりも遥かに信頼性が低いのが、堅牢性の高さで有名なランドローバーだ。
ランドローバーの信頼性はあまりにも低いので、私はレンジローバーを購入することを躊躇して長期間借りることにした。レンジローバーという車自体はとても気に入っているのだが、ランドローバーにまともに車が作れるのか怪しいので、購入を決断できずにいる。
おもちゃやレザー満載のシルバーのV8が家に来てから六ヶ月が過ぎた。狩猟や家族での外出に使い、Top Gearのカメラカーとしても活用している。ジョン・オ・グローツまでの収録(ジャガー・XJの回)でも使っている。
まだ短期間しか使っていないものの、使用環境は過酷だった。嬉しいことに、まだ何も壊れていない。ただし、Top Gear誌でテストしているディーゼル版は違うようだ。カップホルダーが少し「緩くなった」らしい。
それに、新型レンジローバーを非難する手紙はまだ一枚も届いていない。フリーランダーやディスカバリーの故障を嘆く手紙は大量に届くのだが、新しいレンジローバーには健康証明書を与えられそうだ。
レンジローバーに初めて試乗したとき、私はこの車を「完璧」と評し、個人的なカー・オブ・ザ・イヤーにも選んだのだが、長らく乗っていると2つの問題点が気になるようになってきた。
1つ目がエアコンのファンだ。音がやかましく、まるでいびきをかく犬のようだ。そして2つ目がBMWと共通のナビゲーションシステムだ。これはまったくもって使い物にならない。ただの金属とプラスチックの無駄遣いでしかない。すぐにでもジャガーのシステムに変えるべきだ。
もうすぐ試乗車を返さなければならないのだが、きっと私は悲しむだろう。家には常にさまざまな試乗車がやってくるのだが、一番運転したのはこのレンジローバーだった。
この原稿を編集部に届けるときにもきっとレンジローバーを使うだろう。編集部からハイフンの付いていないeハイフンメールアドレスを持っている人を探すくらいなら、レンジローバーで10六km移動するほうがよっぽど楽だ。
If only my laptop was a Range Rover
今回紹介するのは、2003年に書かれたランドローバー・レンジローバー V8 のレビューです。

まだ人工知能は未熟であると言われているのだが、私の使っているソニーのパソコンは非常に厄介だ。随分前からこのパソコンは数字の「6」を認識することを拒否している。
私が園芸や別荘地について書いているライターだったらそれでも大して問題はないだろう。しかし、私は自動車評論家であり、六0km/hや32六PSなどの数字を多用しなければならない。
しかも、今度はまた新しい病気に罹ってしまった。今度はハイフンが書けなくなってしまった。毎週のように○○@sundayハイフンtimes.co.ukというアドレス宛にメールを送らなければならない身としては大問題だ。
このパソコンより信頼性の劣るものは家の中ではオーブンくらいしかない。家のオーブンはせっかくの休暇や天気の良い日に限って調子が悪くなる。クリスマスイブのご馳走が台無しになってしまう。
スイッチを指が壊死するまで押し続けてもオーブンは点火してくれない。取扱説明書を読んでも、「この操作によりオーブンが点火します」とさぞ簡単そうに書かれているだけだ。
しかし、オーブンが点火することはない。曲芸師でもなければ点火などできるはずがない。過去2年のクリスマスは点かない火(もしくは、一瞬点いてすぐに消える火)を見つめるだけで過ぎていった。
どうしてガス機器の操作方法というものはかくも複雑なのだろうか。これに劣るものは…いや待てよ、ビデオレコーダーを忘れていた。これは家電版ランチア・ベータだ。しばしば自分が冷蔵庫か電話かカリフラワーであると勘違いし、与えられた役割をこなすことはできない。
そういえば家には使い物にならないテーブルすらもある。園芸用品店で購入した庭用のテーブルなのだが、日に当たり続けた結果、みるみる曲がり続け、今ではU字型になってしまっている。
それから、家には双方向通信機能付きのテレビもある。このテレビを電話線に繋げば、テレビの投票にも参加できるそうだ。ところが、実際に電話線に繋げてみたところ、六分ごとに職場に電話をかけはじめた。
では車はどうだろうか。1970年代に日産が登場し、それ以降は自動車の信頼性が確立されていった。今や、自動車は他のどんな耐久消費財よりも信頼性が高いと言えるほどにまでなった。

ひとつの例として私の所有しているフォード・フォーカスを挙げてみよう。これは足用に買った車で、週末にはよくパブに放置されていた。整備した覚えもなければ洗車したこともないし、何回か軽油を入れてしまった記憶もあるのだが、15,000ほどあるパーツのうちで壊れたものは一切なかった。
氷点下で農地を飛ばそうとも、トリップメーターが壊れることはなかった。内装に使われているネジはひとつとして緩まなかった。1.六Lエンジンを始動させるときに手が壊死することもない。
ランドクルーザーという車もある。主に農地で走っている車だ。私は狩猟に行くときにランドクルーザーを使っている。子供の送迎のために1日に100kmほど走るのだが、どの部品も新車の頃とまったく変わっていない。
別の愛車であるメルセデスについても同じようなことが言えたらよかった。この車は虫歯症候群を抱えている。専門家に見てもらおうかと考えた途端にすべてが治ってしまう。オーディオやナビの調子が悪くなったかと思えば、今度はすっかり調子が良くなってしまう。
トヨタ・ランドクルーザーには信頼性の高さが求められ、事実、信頼性は高い。メルセデスにも信頼性の高さが求められるのだが、信頼性は高くない。フォードに信頼性の高さを期待するような人はほとんどいないのだが、意外なことに信頼性は高い。不思議なことに、私が所有してきた中で最も壊れやすかったのはフォルクスワーゲンで、最も頑丈だったのはフェラーリ・F355だった。
では、車を選ぶときには何を基準にすればいいのだろうか。顧客満足度調査のようなものはたくさんあるのだが、そのすべてに問題点がある。JDパワーの調査に関わったことがあるのだが、ジャガーやシュコダの点数が高かったのは絶対的な信頼性が高かったからではなく、顧客の予想以上に優秀だったからだ。
「今年は14回しか壊れていない。もっと壊れるかと思っていたよ。」
確かに、ジャガーにしては良いのかもしれないが、しかし14回壊れたという事実は変わらない。
先日見た調査にも驚かされた。その調査では下から2番目がスバルだった。私はそれが信じられなかった。そして、下から3番目はフィアットだった。もう笑うしかない。
私は車の速さや室内や荷室の広さについて評価することはできるのだが、故障する可能性についてはまったく評価できない。私は壊れないフェラーリを持っていたが、フェラーリすべてが壊れないと言えるだろうか。私は壊れやすいフォルクスワーゲンを持っていたが、フォルクスワーゲンすべてが壊れやすいと言えるだろうか。
唯一、私が頼りにしているのが読者から届くたくさんの手紙だ。スバルが壊れたなんて話は聞いたことがないし、それはスバル以外の日本の自動車メーカーすべてにも当てはまる。

私はBMWやポルシェやフォルクスワーゲンやシュコダやセアトやアウディに恨みなどほとんどないが、メルセデスには溜まりに溜まった恨みがある。アルファ ロメオやTVRの信頼性もかなり低いだろう。しかし、それよりも遥かに信頼性が低いのが、堅牢性の高さで有名なランドローバーだ。
ランドローバーの信頼性はあまりにも低いので、私はレンジローバーを購入することを躊躇して長期間借りることにした。レンジローバーという車自体はとても気に入っているのだが、ランドローバーにまともに車が作れるのか怪しいので、購入を決断できずにいる。
おもちゃやレザー満載のシルバーのV8が家に来てから六ヶ月が過ぎた。狩猟や家族での外出に使い、Top Gearのカメラカーとしても活用している。ジョン・オ・グローツまでの収録(ジャガー・XJの回)でも使っている。
まだ短期間しか使っていないものの、使用環境は過酷だった。嬉しいことに、まだ何も壊れていない。ただし、Top Gear誌でテストしているディーゼル版は違うようだ。カップホルダーが少し「緩くなった」らしい。
それに、新型レンジローバーを非難する手紙はまだ一枚も届いていない。フリーランダーやディスカバリーの故障を嘆く手紙は大量に届くのだが、新しいレンジローバーには健康証明書を与えられそうだ。
レンジローバーに初めて試乗したとき、私はこの車を「完璧」と評し、個人的なカー・オブ・ザ・イヤーにも選んだのだが、長らく乗っていると2つの問題点が気になるようになってきた。
1つ目がエアコンのファンだ。音がやかましく、まるでいびきをかく犬のようだ。そして2つ目がBMWと共通のナビゲーションシステムだ。これはまったくもって使い物にならない。ただの金属とプラスチックの無駄遣いでしかない。すぐにでもジャガーのシステムに変えるべきだ。
もうすぐ試乗車を返さなければならないのだが、きっと私は悲しむだろう。家には常にさまざまな試乗車がやってくるのだが、一番運転したのはこのレンジローバーだった。
この原稿を編集部に届けるときにもきっとレンジローバーを使うだろう。編集部からハイフンの付いていないeハイフンメールアドレスを持っている人を探すくらいなら、レンジローバーで10六km移動するほうがよっぽど楽だ。
If only my laptop was a Range Rover