英国「Auto Express」によるヒュンダイ・i30 N Performance とホンダ・シビックタイプRの比較試乗レポートを日本語で紹介します。


i30 and Civic

世界ラリー選手権で活躍しているとはいえ、ヒュンダイというブランドからハイパフォーマンスカーを連想する人はいないだろう。

しかしついに、ヒュンダイから新しいホットハッチ、i30 N が登場した。今回は i30 N Performance を我々が高く評価している5ドアホットハッチ、ホンダ・シビックタイプRと直接対決させてみることにする。

i30 N はヒュンダイがハイパフォーマンスカーという分野に挑戦していくための重要なモデルであり、ヒュンダイは本気で頂点に立とうとしているようだ。一方、シビックタイプRは敏捷性、スピード、そして実用性を高い次元で実現した非常に優秀なモデルだ。

ヒュンダイが頂点に立つためには最高のホットハッチを倒す必要がある。なので今回はシビックタイプRを対戦相手に選んだ。何十年もの歴史を持つシビックに、果たしてヒュンダイが敵うのだろうか。


ホンダ・シビックタイプR

Type R interior

ホンダ・シビックタイプRはホットハッチとして世界に名だたるブランドであり、現行モデルはおそらく歴代最高のシビックタイプRだろう。

かつてのような咆哮するVTECエンジンを惜しむ人もいるだろうが、現行モデルが搭載する2.0Lターボエンジンは最高出力320PS、最大トルク40.8kgf·mという途方もないパフォーマンスを生み出す。

今回のサーキットでのテストでは0-100km/h加速で i30 N よりも0.6秒速い5.9秒を記録した。路面に雪や氷が残っていたことを考えれば、トラクションの限られた状況で両車ともに健闘したと言えるだろう。

それ以上に驚異的だったのは、50-110km/hでわずか4.3秒を記録した点だ。これは圧倒的なトルクや優秀なトランスミッションのおかげだろう。ちなみに、ヒュンダイの記録は5.2秒だった。

シビックの排気音は i30 N と比べると劣るのだが、エンジンのキャラクターはとても良い。中域トルクに富んでいるため、かなり力強く感じるし、高回転域では狂ったように叫び出すため、ついついレッドゾーンまで回したくなってしまう。

3速固定での50-80km/h加速は i30  N よりも0.2秒速い2.2秒を記録した。これこそがシビックタイプRの最大の強みだろう。この速度域での加速というのはコーナーから出たときの加速そのものであり、またシビックタイプRには優秀なLSDも装備されているので、こういう状況でのパフォーマンスは驚異的だ。

シビックタイプRのコーナリングスピードはFF車としては驚異的だ。ヒュンダイのディファレンシャルも似た設計ではあるのだが、ホンダほどアグレッシヴではないし、エンジンのパフォーマンスが高いホンダのほうが楽しさは上だ。それに、ステアリングのフィードバックも i30 N より豊富だし、シビックタイプRは飛ばしているときだけでなく、のんびり買い物に出かけるだけでも楽しい。

タイプRのアダプティブダンパーにはコンフォート、スポーツ、+Rの3種類のモードが用意される。モード数はヒュンダイより少ないのだが、標準モードであるスポーツモードでもロールはほとんどなく、公道で高速走行をするなら、わざわざ+Rモードを使う必要性は感じない。+Rモードはサーキット向けのセッティングであり、このモードにするとまるで小さなツーリングカーのように感じる。

旧型シビックタイプRと比べると、コンフォートモードはかなりしなやかになり、日常的な使用にも適するようになった。それでも、i30 N の最もソフトなセッティングと比べるとやや硬い。高級感があるわけでもないのだが、それでも新型シビックタイプRは日常的に使える車に仕上がっている。


ヒュンダイ・i30 N Performance

i30 N interior

i30 N はヒュンダイ初の本格的ハイパフォーマンスカーであり、その完成度はそうとは思えないほどに高い。ホットハッチとして非常に優秀であり、他の優秀なホットハッチと比較しても決して引けを取らない。

「N」という文字には2つの意味がある。この車が開発された地であるニュルブルクリンクと、そしてヒュンダイのグローバルR&Dセンターがある韓国の南陽の頭文字から来ている。このモデルの開発を指揮したのはかつてBMW Mディビジョンで開発を担当していたアルベルト・ビアマンだ。彼は悪名高いニュルブルクリンクで通用する車なら、世界のどこでも通用するという思想のもとで開発を進めた。

i30 N Performance には最高出力275PSの2.0Lガソリンターボエンジンが搭載される。これはスペックではホンダに劣る。しかし、性能差はそれほど感じられない。オーバーブースト時には38.5kgf·mという大トルクを発揮してくれるので、i30 N もかなり速く感じられる。

特に4速固定での50-80km/h加速ではシビックタイプRよりも0.3秒速い3.1秒を記録している。それに、6速固定での80-110km/hでもタイプRより0.3秒速い5.4秒を記録している。もちろんこれはギア比の違いによる部分もあるのだろうが、i30 N のエンジンが優秀であることも確かだ。総合的な速さではわずかながらホンダに後れを取り、特にその差はコーナーで明白になってしまう。

i30 N 用の専用設計ステアリングは正確なのだが、人工的な重さを感じるし、Nモードでは重すぎる。ロールは優秀なアダプティブダンパーのおかげでタイプRと同じくらい抑えられているし、シャシからのフィードバックがしっかりあるので安心してスピードを出すことができるし、スピードを楽しむこともできる。

一番ハードなセッティングにした場合、シビックほどの鋭さはないのだが(i30のほうが49kg重いので、その結果わずかに応答性が劣る)、最もソフトなセッティングにした場合の快適性では i30 のほうが勝っている。

Nモードはホンダの+Rモード同様、イギリスの公道には硬すぎる。垂直方向の動きがあまりにも制限されているので、このモードはサーキット専用と考えたほうが良さそうだ。i30 N には好みに応じて設定できるカスタムモードも用意されている。このモードではサスペンションの硬さや排気音、レブマッチング機能、ディファレンシャル、スロットルレスポンスなどを個別に設定することができる。最初の設定には時間がかかるのだが、一度設定してしまえばあとはスイッチひとつでカスタムモードを選択することができる。

排気音は素晴らしいのだが、エンジンの回転数の上がりかたはシビックほど気持ちよくはない。i30 N の6速MTは十分に滑らかなのだが、ホンダの6速MTほど操作していて楽しいわけではない。


結論

Winner: ホンダ・シビックタイプR
シビックタイプRは i30 N よりも高価なのだが、ハンドリングやパフォーマンスを考えればその価格差にも納得できる。直線では i30 よりも速いし、コーナリング性能も上だ。それに、旧型モデルと比べると快適性や実用性も上がっており、より実力派の車に仕上がっている。

2nd: ヒュンダイ:i30 N Performance
i30 N Performance は新規参入のモデルとしては驚くほどに優秀なモデルであり、シビックタイプRとの性能差はそれほどない。コーナリングでのシャープさや実用性ではシビックタイプRに劣るのだが、価格はシビックタイプRよりも安いので、コストパフォーマンスは非常に高い。今回の戦いは僅差だった。


Hyundai i30 N vs Honda Civic Type R