英国「Auto Express」によるフィアット・バルケッタの試乗レポートを日本語で紹介します。

※内容は2003年当時のものです。


Barchetta

フィアットはバルケッタのマイナーチェンジを行い、装備内容を向上したうえ、価格は2,800ポンド安くなった。競合車の存在感が増しているので、この決断は正しかったと思う。

もっとも、元の価格設定は異常だった。2002年にイギリスでフィアットの正規ディーラーを介して販売されたバルケッタはわずか7台だった。個人輸入業者を介して本国仕様を購入したほうが安いし、イギリス仕様車もどちらにしろ左ハンドルだ。

“正規”仕様車の価格を下げることで、正規販売店の販売比率を上げようとしているのだろう。それに、フィアットはシェア拡大の必要性に駆られているので、バルケッタの販売数増加はフィアットにとっても重要だろう。

価格が11,000ポンド未満になったので、従来よりも魅力は大きく増している。デザインは個性的ながらもそれほど破綻しておらず、ノーズデザインやインテリアデザインは大きく変わっているため、従来型とは簡単に見分けることができる。

rear

エンジンは変更されていない。1,747ccのツインカムユニットはプントHGTと共通で、最高出力132PSを発揮し、可変バルブタイミング機構によりトルクの出方がフラットになっている。バルケッタのシャシは初代プントのものをベースとしているため、設計は新しくないのだが、サブフレームやスタビライザーは強化されている。

結果、非常に楽しい車に仕上がっている。ステアリングはダイレクトだし、シフトストロークは短く、運転していて笑顔になれる。大半の競合車とは異なり、バルケッタは前輪駆動車だし、乗り心地は良くないのだが、ホットハッチに慣れた人ならそれほど不快には感じないだろう。ESPやトラクションコントロールなどの運転補助装備はないので、すべて自分の責任で運転しなければならないのだが、新型ではABSは標準装備となっている。

ほかに新型では運転席・助手席エアバッグやCD対応オーディオ、フロントフォグランプ、電動ドアミラー、電動格納アンテナが装備されるようになり、ステアリングやシフトレバーは本革巻きとなっている。それに、バルケッタには実用的なトランクがあり、リリーススイッチは室内の見えにくい場所にあるので盗難の心配も少ないだろう。

interior

装備が充実し、見た目がスタイリッシュになり、価格が安くなったことで、新型バルケッタはコストパフォーマンスの高い車になったのだが、欠点がないわけではない。依然として右ハンドル仕様車は設定されないし、ポップアウトドアハンドルは使いづらいし、大柄なドライバーが乗るとエルボールームに不足を感じる。それに、乗員の頭のすぐ近くにルーフフレームが来るので、側面衝突時の安全性がちゃんと確保されているのかも怪しい。

とはいえ、これらの問題点を無視できるなら、バルケッタは非常に良い車だ。デザインはかなり個性的だし、走りは非常にスポーティーで、コストパフォーマンスも非常に高い。


Fiat Barchetta