Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのリチャード・ハモンドが英「Mirror」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2014年に書かれたアウディ・S3カブリオレのレビューです。


S3 Cabriolet

忘れられがちな車というのも世の中には存在するのだが、アウディ・A3カブリオレもそんな車の一台だ。既にA3についてはセダンも含め全モデル試乗したつもりでいたのだが、カブリオレのことをすっかり忘れていた。なので今回は、S3カブリオレに試乗してみることにした。

アウディはこれまでA3カブリオレに高性能版を設定してこなかったので、新型S3カブリオレの試乗は楽しみだ。それに、天気や温度もかなり良い感じなので、きっと楽しい一日になるだろう。

旧型A3に乗っていた人なら分かるだろうが、新型のカブリオレは従来のA3と比べて全長も全幅も拡大している。その理由は、ゴルフ同様、フォルクスワーゲングループの新しいMQBプラットフォームを採用しているからだ。

MQBプラットフォームは軽量構造となっているので、A3は従来モデルよりも軽量化している。S3はクワトロ4WDシステムを採用することで車重が増加している(A3カブリオレのエントリーグレードが1,440kgであるのに対し、S3カブリオレは1,620kgだ)ので、軽量化の恩恵は大きい。

それでも軽くはないのだが、S3に搭載される2.0L TFSIエンジンは最高出力300PS、最大トルク38.7kgf·mを発揮する。ローンチコントロールは標準装備で、それを使うと0-100km/h加速を5.4秒でこなす。

rear

トランスミッションはアウディの6速Sトロニック(フォルクスワーゲンで言うところのDSGのことだ)のみが設定される。クワトロシステムによりトルクの大半は前輪へと送られ、タイヤが空転したりグリップが失われたときには、システムがそれを感知して後輪に送られる駆動力が増加する。

アウディドライブセレクトは標準装備で、コンフォートモードで走らせてみると間違えてA3の試乗車に乗ってしまったのではないかとさえ感じた。エコノミーモードにするとおかしなことが起る。スロットルレスポンスが非常に穏やかになり、アクセルペダルを踏んでも車はほとんど加速しなくなる。

とはいえ、パフォーマンス自体は非常に高く、あえてダイナミックモードを使う必要性もないだろう。ダイナミックモードではスロットルレスポンスが鋭敏になり、排気音も増大し、サスペンションが硬くなり、変速もクイックになる。

ステアリングはそれほどシャープではないし、応答性もそれほど良いわけではないので、スポーツカーのような走りではないし、ハンドリングも本物のスポーツカーには劣るのだが、グリップはかなりあるし、ロールもあまり起こらない。

フロントのブレーキディスク径は340mmで、キャリパーは赤く塗られている。制動力はかなり強力だ。また、S3は標準のA3と比べて地上高が25mm低くなっている。

interior

乗り心地は低速域ではやや跳ねがち(コンフォートモードでも)なのだが、加速していくと落ち着いてくる。

38,085ポンドのS3カブリオレより安くて速い車はたくさんあるのだが、オープンカーで競合するのは同じフォルクスワーゲングループのゴルフRカブリオレくらいだろう。ゴルフRのほうが安いのだが、S3のほうが速い。

A3とS3の違いは基本的にパフォーマンスに関連するものばかりなのだが、デザインの差別化も図られており、キセノンヘッドランプや専用バンパーなどが備わり、特別感もある。試乗車にはレッドブレーキキャリパーも装備されていたのだが、これは325ポンドのオプションだ。

インテリアにはフラットボトムステアリングやフロントシートヒーターなども装備され、シートにはSのロゴが入っている。メーターは灰地で針は白となる。

上述の通り、最大の競合車はゴルフRカブリオレになるのだが、BMWが2シリーズコンバーチブルを発売すれば状況は大きく変わるだろう。しかし現時点において、小型の4シーターオープンカーが欲しいなら、S3は検討に値する車だ。


Richard Hammond: Audi A3 cabriolet convertible turns up the heat for comfort cars