英国「Auto Express」によるレクサス・IS F の試乗レポートを日本語で紹介します。

※内容は2010年当時のものです。


IS F

今回は、誰も聞いたことのないような、新しいスーパーサルーンを紹介しよう。昔からあるBMW M3と比べると、レクサス・IS Fはニッチな選択肢だ。しかし、最高出力423PSの5.0L V8エンジンやパドルシフト変速可能な8速ATを搭載していると聞けば、ドイツ車に代わる新しい車として興味を惹かれる。

2011年モデルはハンドリング性能を高めるためにサスペンションが改良されている。新排ガス規制「ユーロ5」に適合した以外、5.0L V8エンジン自体は変更されていない。最大トルク51.5kgf·mは5,200rpmまで回さないと発揮されないのだが、低回転域からかなり力強く、0-100km/h加速はわずか4.8秒でこなす。音も素晴らしい。低回転域ではおどろおどろしく、レッドラインまで回せばレーシングカーのような轟きを聞かせてくれる。

トランスミッションは低速域ではややぎくしゃくするし、変速はそれほどきっちり決まるわけではないのだが、アクセルを踏み込んだときの変速は素早いし、8速がロングなので高速道路では静かだ。

rear

2010年モデルからLSDが装備されているのだが、2011年モデルではさらにスプリングの設計変更やリアサスペンションジオメトリの変更が行われ、スタビリティの向上が図られている。

依然として乗り心地は硬く、街中や高速域での衝撃吸収性は明らかにM3のほうが優れている。旋回性も特別良いわけではないのだが、従来モデルよりは明らかにグリップが増しているし、LSDのおかげで路面にしっかりとパワーが伝わる。

もちろん、トラクションコントロールを切れば簡単に横滑りするのだが、2007年に登場した初期モデルと比べるとよっぽどバランスは良くなっている。

ブルーメタリックのボディカラーや膨らんだホイールアーチにボンネット、そして縦に並んだ排気管のおかげで、IS Fは非常に目立つ。

interior

インテリアに目を向けると、センターコンソールにはカーボンファイバー風パネルが使われており、タコメーターには変速タイミングを知らせるレーシングカー風のシフトライトも付いている。もっとも、シフトライトはほとんど飾りのようなものだ。

改良を経ても、IS Fがイギリスで人気を博すことはないだろう。荒削りな部分はまだたくさんあるし、メルセデス・ベンツ C63 AMGやBMW M3ほど運転が楽しいわけでもないし、価格はこの2台よりもずっと高い。

ただ、装備内容は充実しているし、先進技術もふんだんに投入されており、なにより5.0L V8エンジンの魅力は特別だ。IS Fは決して完璧な車ではないのだが、名の知れていないハイパフォーマンスカーに乗るというのもまた一興かもしれない。IS Fを選ぶためには勇気が必要だが、非常に面白い車だし、他のハイパフォーマンスセダンとは一線を画している。


Lexus IS F