米国「MOTOR TREND」によるホンダ・インサイト(2000年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。

※内容は2000年当時のものです。


Insight

地球環境に警鐘が鳴らされている今この時代、さまざまな環境対応車が登場しているのだが、そのほとんどは実用に耐えない。しかし、アメリカで初めて販売されるハイブリッドカーであるインサイトは特別だ。今回はワシントンD.C.を出発し、メリーランドまで230kmほどの試乗を行ったのだが、非常に有望な車であることが分かった。

先進的な2シーターFFクーペのインサイトは30km/Lという燃費を実現し、排出ガスも少なく、それに運転しやすいし、快適性も高いし、価格は18,880ドル~に設定されている。オプションはオートエアコンシステムしか設定されないので、ほとんどの人がインサイトに払う金額は20,080ドルになることだろう。

インサイト最大の特徴はHonda IMA (Integrated Motor Assist) ハイブリッドシステムだ。この中心となるのが3気筒 12バルブ 1.0LのVTEC-E ガソリンエンジンだ。これは低フリクション性を重視して設計されたリーンバーンエンジンであり、軽量なアルミニウムやマグネシウム、そしてプラスチックが多く使われている。

最高出力68PSのエンジンに組み合わせられるのは極薄(約6cm)のDCブラシレスモーターで、最高出力13.6PS、最大トルク3.5kgf·mを発揮する。このユニットは減速時や制動時には発電機として働き、144Vのニッケル水素バッテリーに電気が蓄えられる。また、セルモーターとしての役割も果たす。すべての統制はパワーコントロールユニットが行う。

rear

ハイブリッドカーにおけるモーターは必要に応じて作動する電動のターボチャージャーのようなものだ。トランスミッションは5速MTのみが設定され、0-100km/h加速は10.5秒でこなす。実際、どんな道路でも交通の流れに十分ついていくことができる。

アルミボディのNSXの開発経験もあるホンダは、インサイトに軽量かつ高剛性なアルミニウムボディを採用している。これはスチールボディ比で40%軽く、安全性は現代の基準にしっかり適合している。シャシやボディパネルにアルミが使われ、フロントフェンダーやリアスカートにはリサイクル可能な樹脂が用いられているため、車重はわずか856kgだ。

空力性能も高く、Cd値は0.25を達成しており、インサイトは歴代最高のEPA燃費(シティ25.9km/L、ハイウェイ29.8km/L)を実現している。また、シエラクラブの環境工学優秀賞を工業製品としては初めて受賞している。今回の試乗時の平均燃費は、燃費計によると23.4km/Lだったのだか、今回は飛ばしたり山道を走行したりもしている。それも考慮すると、燃料タンク容量は40Lなので、1000km前後の航続距離を実現できることになる。

運転していてストレスを感じるわけでもない。インサイトは装備も豊富で、安全装備も充実している。ただし、インテリアに使われているプラスチックの質感は他のホンダ車に劣る印象だった。デジタルとアナログが融合したメーターは慣れるのに少し時間がかかる。メーター表示は3分割されており、左側にはエンジンの情報、中央にはスピードメーター、右側にはモーターの情報が表示される。

interior

フロントはマクファーソンストラット式、リアはトーションビーム式サスペンションが採用され、可変ギアレシオステアリングが備わる。前後重量配分は60:40で、ハンドリングやステアリングレスポンスはまるでCR-Xのようだ。ただし、165/65SR14の低転がり抵抗タイヤはグリップ性能よりも経済性を重視した設計となっているし、スロットルレスポンスはあまり良くなく、頻繁に変速する必要もある。

また、IMAシステムにはアイドリングストップシステムも備わるので、信号待ちでは一切排出ガスを発生させることはない。このため、環境保護主義者や倹約主義者は大いに喜ぶだろうが、AT車が設定されないので敬遠するユーザーも多くいるだろう。それに、エンジン音はあまり心地よくない。決して粗雑なわけではないのだが、リーンバーンであることを隠しきれていない。

とはいえ、アメリカで今年4,000台販売するという目標はきっと達成されることだろう。少なくとも、今年の夏にトヨタが5シーターのハイブリッドカー、プリウスをアメリカに投入するまでは、インサイトだけがハイブリッドカーの称号を自慢できる車だ。


Road Test: 2000 Honda Insight