今回は、英国「Auto Express」より、三菱自動車の自動車製造100周年を記念した特集記事―8台の名車に乗る―を紹介します。


Mitsubishi

自動車産業の歴史は長く、自動車メーカー各社がさまざまな○○周年をアピールして新車の販売に繋げようとしている。そして、2017年は三菱自動車が自動車を製造しはじめてから100年目の年であった。

三菱自動車が自動車製造を開始したのは1917年のことで、最初に製造されたのは三菱A型なのだが、イギリスに最初の三菱車が上陸したのは1974年のことだった。イギリスでの当時の販売会社はコルト・カー・カンパニーで、当初、三菱車はコルトというブランドで販売されており、のちに三菱ブランドに変更された。1974年以来、イギリスにも数多くの名車が上陸している。今回は、三菱100周年を祝うため、かつて三菱が生み出した名車8台に試乗した。

イギリスに初上陸した三菱車の一台がコルト・ランサーだ。当時、コルトはイギリス人にとっては新興ブランドでしかなかったのだが、瞬く間に人気を博した。その理由は単純だ。ボディサイズが小さいにもかかわらず、室内は非常に広く、今乗っても簡単に運転することができる。

Lancer
ランサー

2ドアのランサーにはリムの細い大径ステアリングや驚くほど滑らかなマニュアルトランスミッションが備わり、運転するのが非常に楽しい。この車は決してハイパフォーマンスカーではないのだが、1.4Lの4気筒エンジンは十分に力強い。最高出力は93PSで、応答性も高いので、直線道路であれば現代の交通の流れにも十分についていけそうだ。

4ドアのギャランの走りもランサーに似ており、またギャランには1970年代らしい走りの魅力もある。足回りはランサーよりもかなりソフトで、内装もより上質だ。シートはホワイトで、ドアの内張りにはフェイクレザーが使われており、まるで日本のタクシーのようだ。小さいながらも見やすい計器類や広々とした室内空間も嬉しい。ランサー同様、現代の基準で考えれば走行性能は低いのだが、その走りには不思議な魅力があった。

Galant
ギャラン

1970年代には三菱製のジープ・CJ-3B Type 27もイギリスに輸入された。これはアメリカのウィリス・ジープのライセンス生産車であり、1979年に三菱の英国法人により正規輸入された。今回の試乗車は最近レストアされたモデルで、状態は素晴らしかった。外から見える部分はどこも新品のように綺麗で、走りにもまったく問題がなかった。

4速MTのシフトストロークは長いのだが、変速は正確で、2.6Lの4気筒ガソリンエンジンはトルキーで応答性も高かった。フロントシートは2人掛けで、リアには向かい合った2人分のシートが付いていた。4WDシステムやローレンジギアのおかげで走破性も非常に高い。

1970年代の三菱車も運転して楽しかったのだが、やはりイギリスで三菱といえばハイパフォーマンスカーだ。1988年に登場したスタリオン ワイドボディもそんな車の一台だ。4気筒ターボエンジン搭載車は当時の2.0L車としては最速の0-100km/h加速7.1秒を記録した。これは当時としては非常に速く、現代の基準でもそれなりに速く感じられる。スタリオンは最高出力180PS、車重1,220kgの2ドアクーペという非常に面白い車で、ターボ車なのだが、高回転までしっかり回ってくれる。

Starion
スタリオン

ステアリングはやや鈍いのでコーナーで正確にラインを描くのは難しいのだが、シャシは優秀で、見た目からは想像できないほどに俊敏だ。

もう一台の2+2クーペ、3000GT(日本名: GTO)に乗り換えると衝撃的だった。3000GTが登場したのはスタリオンの登場からわずか数年後のことなのだが、まるで別世界の車かのように違っていた。インテリアは依然として古臭く、カセットプレイヤーは時代を感じさせるのだが、スタリオンよりも室内は明るくてずっと快適だし、作りもしっかりしている。

3000GTは日産・300ZX(日本名: フェアレディZ)やトヨタ・スープラのライバル車であり、アメリカ市場を最大のターゲットとして設計されていた。アクティブエアロダイナミクスや4WDシステムなど、当時の先進技術がふんだんに使われており、今乗ってもそれほど古さを感じない。

3.0LのツインターボV6エンジンもスタリオンのエンジンとはまったく違う。3000GTは現代の基準で考えても本当に速い。大トルク(41.5kgf·m/3,000rpm)のおかげで高速域におけるパフォーマンスは驚異的だ。V6エンジンの音も魅力的で、アクセルを踏むと深いながらも抑えの効いた音が響く。高速域では驚くほど静かで、グランドツアラーとしても優秀だ。

3000GT
3000GT(日本名: GTO)

重くて機械感のあるマニュアルトランスミッションは操作するのが楽しいのだが、重いのはアクセルペダルも同様で、予想以上に足に力を入れないと加速してくれない。3000GTは全体的に重く感じられ、それほど俊敏な感じはしないのだが、それでもかなり楽しく、むしろ各種操作が重いおかげで「車を運転している」という実感がある。

V6エンジンを搭載する4WDの2ドア車といえば、3000GTのようなスポーツカーを連想するだろうが、三菱にはその条件を満たすSUVもある。ショーグン(日本名: パジェロ)には最高出力170PSを発揮する3.0LのV6エンジンに4速ATが組み合わせられる。決してハイパフォーマンスカーではないのだが、快適で運転しやすく、不思議な魅力がある。

トランスミッションは変速もいい加減で4速しかないので、今の基準で考えればかなり古臭いのだが、エンジンはパワフルでシートは快適なので、クルーザーとしては優秀だ。今や大排気量V6エンジンを搭載するSUVなどほとんどないので、なおのことこの車が面白く思える。

Jeep and Shogun
ショーグン(左、日本名: パジェロ)および三菱ジープ(右)

今の三菱の主力車種はSUVばかりなのだが、1990年代にはラリーマシンのランサーエボリューションが三菱ファンを生み出していた。

中でも人気を博したのが、ランサーエボリューションVIとランサーエボリューションIXの2台だ。今回はその両方に乗ることができた。エボVIの試乗車は貴重なトミ・マキネン エディションだった。これはトミ・マキネンが4年連続でWRCのドライバーズ・チャンピオンを獲得したことを記念するモデルであり、イギリスではわずか250台しか販売されていない。

このモデルには通常のエボVIとは異なる専用のシート、ホイール、デカールが装備されているだけでなく、ターボチャージャーの設計が変更されや排気システムは刷新されており、サスペンションも専用チューニングとなっている。今でもこの車を運転するのはとても楽しかった。ランエボがモータースポーツの象徴であることにも頷ける。

Evo VI and IX
ランサーエボリューションVI(左)およびランサーエボリューションIX(右)

正確で超シャープなステアリングは素晴らしく、専用サスペンションのおかげでマキネンのようにコーナーを抜けることができ、4WDシステムによりコーナーから脱出したあとも強力な加速を得ることができる。エボVIは軽く感じられ、応答性はかなり高く、そして非常にアナログな車だ。今の車にはほとんどない、車との一体感がしっかりと存在する。

280PSという最高出力や4WDシステムのおかげで、0-100km/h加速は4.4秒を記録する。このエンジンは現代のターボエンジンと比べても扱いやすくて面白く、回転の上がりかたも素晴らしいし、マニュアルトランスミッションは最高だ。3000GTのように操作は重いのだが、3000GTよりもずっと正確だ。

ランサーエボリューションIX MR FQ-360も、エボVIの血統をしっかりと受け継いでいる。エボIX MR FQ-360は371PSの2.0L 4気筒エンジンを搭載し、エボVI同様、4WDレイアウトを採用し、シャシも優秀だ。加速性能はエボVIよりさらに速く、0-100km/h加速はわずか4.1秒を記録する。

応答性は非常に高く、マニュアルトランスミッションも魅力的で、パフォーマンスも驚くほど高いので、運転は非常に楽しく、現代の4WDホットハッチも追いつくことはできないだろう。自信を持って運転することができるので、下りワインディングもかなり速く走らせられる。エボIXは三菱の100年の歴史を語るトリとして相応しい車だ。


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