今回は、豪州「PERFORMANCE DRIVE」によるルノー・メガーヌ GTライン 1.2T の試乗レポートを日本語で紹介します。


Megane GT-Line

オーストラリアではSUVやダブルキャブのピックアップトラックが流行しているのだが、安定した人気を保ち続けているセグメントもあり、オーストラリア製大型セダンに乗ってきた顧客も取り込もうとしている。

それがCセグメントハッチバックというカテゴリーだ。このクラスはかなり競争が激しく、現在、オーストラリアでは15車種ものモデルが鎬を削っている。これだけの競争の中で目立つためには、なにより個性がなければならない。ルノー・メガーヌ GTラインの強みは、アヴァンギャルドなフレンチデザインと先進技術だ。

「GTライン」の価格は32,490豪ドルとなる。メガーヌは最も安い22,490豪ドルの「Life」から44,990豪ドルの「GT 220 ワゴン」まで、幅広いラインナップが用意されている。ちなみに、2018年にはルノー・スポール メガーヌの登場も予定されている。従来型メガーヌR.S. の良さを受け継ぐモデルであってほしいところだ。

「GT」および「GT 220 ワゴン」以外のモデルには最高出力132PS、最大トルク20.9kgf·mの1.2Lガソリンターボエンジンが搭載される。ベースグレードの「Life」と「GT 220 ワゴン」には6速MTも設定されるのだが、それ以外のモデルには7速DCTのみが設定される。残念ながら1.2Lモデルにはパドルシフトは装備されない。

エクステリアは大胆で堂々としており、コンセプトカーのようなグリルやLEDデイライトが装備されている。テールランプの形状は個性的で、リアハッチの中央まで続いている。個人的にはデザインは非常に魅力的に感じるし、セグメントの中でも際立っている。

ボディはかなり大きく、幅も広いように感じられるのだが、おかげで室内空間は十分に確保されている。ボディサイズは、全長4,359mm、全幅1,814mm、全高1,438mmで、ホイールベースは2,670mmとなる。荷室容量は434Lで、リアシートを倒すと1,247Lまで増加する。

GTラインにはサポート性の高いフロントシートが装備されるのだが、サイドサポート部分が大きいため、室内空間が実際よりも狭く感じられた。それに、大柄な大人は乗り降りがしづらいと感じるかもしれない。「Life」と「Zen」には普通のシートが装備される。

interior

ダッシュボードにはテスラ・モデルSにも似たタブレットスクリーンが装備されている。メーター部分も液晶表示となっており、表示を変更することもできるし、個人的には情報が整理されていてかなり読みやすいメーターだと感じた。

ルノー・マルチセンスによって5種類の走行モードを選択することができ、それに応じてLED照明の色がレッド、オレンジ、ブルー、グリーン、パープルと変化していく。「Perso」モードではエンジンおよびトランスミッションのマッピングやステアリングの重さ、メーターディスプレイの表示を個々に設定することができる。おかげで、上質さやスポーティーさを感じることができる。それに、大型サンルーフも嬉しい装備だ。

ここからは問題点について述べることにする。タブレットディスプレイを介して操作するマルチメディアシステム「R-LINK 2」は直感的には操作できない。ボリューム調節などもタッチ操作で調整しなければならないし、ディスプレイは指の脂が目立ちやすい。ちなみに、「Life」と「Zen」のタッチスクリーンはこれよりも小さく、ボリューム調節用の物理ダイヤルが装備されている。こちらのほうがよっぽど操作しやすい。8スピーカーのBOSEオーディオシステムは悪くないのだが、スマートフォンのミラーリング機能はない。

オートエアコンの操作もしづらい。エアコンの操作をする際はディスプレイ表示がすべてエアコン関係になってしまうので、エアコン操作をするためには地図表示やエンターテインメント表示を中断しなければならない。一般的なナビゲーションシステムとは違って交通状況予測や代替ルート検索機能がないので、予想外の交通状況に直面するとまともに案内してくれなくなってしまう。

それ以外には、クルーズコントロールのスイッチが手の届きづらいセンターコンソール下方に配置されている点も問題だ。ひょっとしたらフランス車らしい気まぐれな感じを演出しているつもりなのかもしれないが、やはり不自然だ。

インテリア全体には高級感が漂っているのだが、手の触れる部分には安っぽい硬いプラスチックも多用されている。ダッシュボードの下部に使われているプラスチックもちゃちで、エンジンスタートボタンの質感は1980年代の韓国車レベルだ。細かい部分かもしれないが、どうしても気になってしまう。

車を降りてドアを閉め、キーカードを持ったまま車から離れると自動的に施錠されるようになっている。これは非常に便利なのだが、キーは少し安っぽいし、キーリングも付いていない。

メガーヌには日産と共通のCMF-CDプラットフォームが採用されている。結果、高い剛性を実現しており、快適性も高い。風切り音は静かだし、スポーツモードにしない限りはエンジン音も静かだ。スポーツモードにするとエンジン音がスピーカーにより強調される。加速性能は十分だが、シートバックに押し付けられるほどではない。0-100km/h加速は我々の計測で9.79秒だった。

rear

乗り心地は硬めなのだが、ボディ剛性が高いので相当の段差でもなければ室内にそれほど衝撃は伝わらない。欧州車(ちなみに製造はスペインで行われる)らしく、高速安定性は非常に高く、快適なグランドツアラーとしての実力も高い。

GTラインのコーナリング性能は比較的良好で、標準装着のミシュランタイヤのグリップ性能も高いのだが、クラス最高レベルとまでは言いがたい。楽しいし車との一体感もあるのだが、敏捷性やフィードバックに関してはまだ足りない部分もある。例えば、ターンイン性能はマツダ3(日本名: アクセラ)やアストラ、シビックに劣る。スポーツモードにするとステアリングが重くなるのだが、フィールに関しては改善しない。

カタログ燃費は17.9km/Lで、今回の試乗時の平均燃費は14.7km/Lだった。この値はまあまあ悪くないだろう。

デュアルクラッチトランスミッションは小排気量エンジンのパフォーマンスを最大限に引き出してくれるし、やかましいCVTよりもよっぽど気持ち良い。ただし、意図した通りに変速してくれないこともあるし、応答性はヒュンダイ車にすら劣る。GTラインの価格や性格を考えると、パドルシフトが装備されていない点も残念だ。

メガーヌ GTラインはCセグメントハッチバックの中でもかなりの個性派だ。特に見た目は個性的で上質だし、注目に値するような先進技術も多数採用されている。室内空間や実用性に関しても十分に高い。メーター表示やLED照明、走行モードをカスタマイズできるのも嬉しい。

ただ、R-LINK 2は使いづらいし、スイッチ類の配置もおかしい。それに、価格はこれよりもパフォーマンスの高いヒュンダイ・エラントラSR(204PS)やマツダ3 SP25(188PS)、ホールデン・アストラ RS-V(200PS)とそれほど変わらない。38,490豪ドルのメガーヌGT(204PS)はこれらの競合車と同等なのだが、こちらの価格はフォード・フォーカスSTやゴルフGTIの領域に入ってしまう。

グランドツアラーとしての実力の高い高級感のあるコンパクトカーが欲しいなら、GTラインを検討する価値もあるだろう。しかし、パフォーマンスや運転する楽しさを求めるなら、もっと別のモデルを選んだほうがいいかもしれない。


2017 Renault Megane GT-Line 1.2T review