今回は、英国「CAR Magazine」によるトヨタ・ヤリスGRMNの試乗レポートを日本語で紹介します。

この車を見て、ケーニグセグ・アゲーラの排気管やウイングをそのままヤリス(日本名: ヴィッツ)に取り付け、映画『フック』に登場するルフィオのような塗装を施した車だと感じるかもしれない。
まるでForzaのストアフロントで見かけるような狂気的な見た目ながらも、これはれっきとした市販車、ヤリスGRMNだ。今回は、そんなヤリスGRMNの実力を試した。
GRMNとは、トヨタの新しいパフォーマンスブランドだ。「GRMN」という単語を見て、周囲の自動車評論家たちは「ガーミン」だの「ジャーマン」だの、あるいは「グレムリン」なんて言葉を連想していた。
実際のところ、GRMNは”Gazoo Racing tuned by Meister of the Nürburgring”の略であり、Gazoo Racingとはトヨタのモータースポーツ部門(耐久性の高さやラリーでの実力の高さで定評がある)のことだ。プロドライバーと技術者からなる小規模なチームにより、買い物車のヤリスがホットハッチへと変貌している。
このヤリスこそがGRMNの最初の作品であり、GRMNというブランドを象徴する車に仕上がっていることだろう。今回、ヤリスGRMNに試乗し、変な頭文字の新ブランドが非常に面白い車を作り上げたということを体感した。
カタログを見ただけで車の個性が理解できることもあるのだが、ヤリスの場合も非常に真剣に設計されていることが理解できる。ヤリスにはザックスのダンパーやBBSの鍛造ホイール、4ポッドブレーキ、トルセンディファレンシャル、そしてスーパーチャージャー付き1.8Lエンジンが備わる。これは、トヨタの実験室で生まれた環境対応車でも、マーケティング部門の生み出した机上の空論でもなく、本物の車好きを唸らせるために設計された車だ。
インテリアにもその傾向は見て取れる。ステアリングは真っ当な円形で、ホールド性の高いバケットシートが備わり、そして走行モードは1つしか存在しない。しっかりと焦点の合った車と言えよう。
エアロパーツが大量に装備されているわけでもなければ、インテリアにカーボンファイバーが多用されているわけでもない。この車の性質はルノー・クリオ 182トロフィーに近く、クリオ同様、トヨタがどんな車にしようとしたのか、ということがシャシやパワートレインからしっかりと伝わってくる。
ただし、クリオと違って価格はそれほど安くない。価格は26,295ポンドとゴルフGTI並だ。プジョー・208 GTiやミニJCW、ポロGTIと比べるとむしろ高価だ。
それに、完成度は完璧とは程遠い。ナビは見づらいし、シート自体は良いのだが着座位置が高すぎるし、ステアリングの調節幅も十分ではない。それに、インテリアに使われているプラスチックは少しちゃちだ。
そもそも、生産台数がわずか600台で、そのうちヨーロッパ向けが400台、さらにそのうちイギリス向けがわずか100台なので、購入できる人はかなり限られている。そもそも、車の予約自体、大半の国で予約開始72時間以内に終了してしまっている。

では、もはや手に入れることのできない車の記事を書くことに何の意味があるのだろうか。ヤリスGRMNという車は、トヨタにとって、そして車好き全員にとって、非常に重要な意味を持つ車だ。この車にはとてつもない楽しさがある。しかも、サスペンションやステアリングは調整されているのだが、車自体はノーマルのヤリスと大きく変わらないらしい。
ただし、今回バルセロナのパークモーターサーキットで試乗した車両には公道では装着できないサーキット用のブリヂストン ポテンザが装着されていた。トヨタいわく、サーキットでしっかり走らせるためにはタイヤを専用品に交換するだけでいいそうだ。
車はしっかりと路面に吸い付いた。タイヤが温まる前の1周目には、この車はフォード・フィエスタSTのようなやんちゃさを持っていそうだと感じた。
ヤリスGRMNの走りはサーキットでも公道でも非常に優秀だ。グリップ性能はかなり高く、パワーの出方はしっかりとリニアで、ターボチャージャーを積む競合車とは真逆だった。
トルセンLSDのおかげでセアト・レオン クプラのような前輪に対する安心感もあった。コーナリングの際に外側のタイヤに荷重がかかっても、アクセルを踏めばLSDのおかげで見事に曲がってくれる。決して他の部分が悪いというわけではないのだが、やはりヤリスの最も注目すべき点はターンイン性能だろう。
エンジン音も元気が良く、ステアリングの完成度も高い(ただし、攻めたコーナリングをするとやたら重くなってしまう)し、トランスミッションも変速が気持ち良い。
208 GTiと比べるとロールはわずかに多いので、姿勢変化に少し気を使う必要はあるのだが、この性格はマツダ・MX-5(日本名: ロードスター)とも共通しており、おかげでむしろ車との一体感が増す。
ヤリスGRMNに乗ると、本来のホットハッチのあるべき姿を思い出す。ハイパワーエンジンを搭載し、そのパフォーマンスに合うだけの適度なシャシ強化が施されたシンプルなマシン。それこそがホットハッチだ。
残念ながら、GRMNの第一弾であるヤリスGRMNは高価な限定車なので、ほとんどの人の手には届かないし、そのため、フォード・フィエスタSTほどの人気は得られないだろう。
しかし、ヤリスGRMNに試乗し、GRMNというブランド自体の実力は体験することができた。個人的には、GRMNには輝かしい未来が待っていると思う。

プロトタイプ
2017年にはニュルブルクリンクでヴィッツGRMNのプロトタイプに試乗している。以下にその際の記事を掲載する。
トヨタ製の1.8L 4気筒エンジンにはスーパーチャージャーが備わり、最高出力208PS、最大トルク25.5kgf·mを発揮する。トランスミッションは6速MTで、トルセンLSDも装備され、0-100km/h加速はトヨタいわくクラス最速(6.3~6.5秒)らしい。車重はわずか1,135kgだ。
スプリングレートは61%”以上”増加しており、地上高は24mm下げられ、ザックスダンパーや大径フロントスタビライザー、17インチBBS製アルミホイール、4ピストンフロントブレーキ(このクラスのホットハッチに採用されるのは珍しい)が装備される。フロントストラットタワーバーや前後アンダーブレースをはじめ、シャシ補強もされている。ちなみに、リアサスペンションは標準車同様トーションビームだ。
GRMNは3ドアモデルしか設定されず、ラトバラのWRCカーと同様、ボディは赤と白と黒で塗られており、リアスポイラーやリアディフューザー、センターマフラーが装備される。レザーステアリングはGT86(日本名: 86)と共通で、バケットシートとアルミペダルも備わる。
内外装デザインは欧州トヨタが担当し、シャシとブレーキの設計は日本のトヨタが行っている。製造はフランスのヴァランシエンヌ工場で行われる予定だ。
搭載されるエンジンはイギリスのディーサイド工場で製造される。インジェクターはトヨタのV6エンジンのものが使われており、スロットルチャンバーは40%大型化している。
ディーサイド工場で組み立てられたエンジンはロータスへと送られ、イートン製のスーパーチャージャー(同じものがトヨタ製エンジンとの組み合わせでロータス・エリーゼにも搭載されている)が取り付けられる。そしてこのエンジンがフランスに送られ、車に搭載されることになる。排気圧を低減するため、排気管径は42mmから60mmまで拡大している。
これだけ手がかかっていることを考えると、製造コストはかなり高く付きそうだ。明言はされていないものの、ひょっとしたらヤリスGRMNは利益を回収できないのかもしれない。
ヤリスGRMNの走りは活力に溢れている。乗り心地は硬く、排気音はやかましく(WRCカーに似た低音を響かせる)、ハンドリングは非常にシャープだ。しかし、その走りは生々しく、そして魅力的だ。
高速域では依然硬いながらもちゃんと安定するので、アイフェルの舗装の悪い場所を走っても飛び跳ねるようなことはない。また、開発に際してはイギリスの道路でのテストも行っているらしく、初代フォーカスRSのように左右に傾いた路面で暴れるようなこともない。
最初からLSDの採用を考慮して設計されたわけではないのだが、LSDはしっかりと動いてくれる。フロントのグリップはプジョー・208 GTiほど強力なわけではないのだが、コーナリング中もしっかりとパワーを路面に伝えてくれるし、アクセルを踏み込みすぎるとアンダーステアを呈するのだが、それも徐々に起こるので予測はしやすい。LSDによりホイールスピンはしっかりと抑えられており(フロントストラットタワーバーの寄与もあるはずだ)、滑りやすい路面でも十分に扱いやすくなっている。
ホイールベースが短く、サスペンションが硬いため、特にリアのトーションビームの上下動は激しく感じる。敏捷性は高く、おかげで走りも印象的なのだが、同乗者は不快に感じるかもしれない。

GRMNは特別速い車ではないし、激烈な加速性能があるわけでもない。助手席の人を降ろすだけでも走りは大きく変わり、もともと軽量な車からさらに重量を減らすことの重要性が理解できる。最大トルクを発揮するためには5,000rpmまで回す必要があり、ターボ車とは違って低回転域での力強さはない。
4ピストンブレーキは非常に優秀で、フィールも良好だし、制動力はかなり強力で、標準のヤリスとはまったく違う。走行モードは1種類しかないのだが、車の性格にしっかりとマッチしている。
ステアリングも優秀で軽いのだが、セルフセンタリング力はやたらに強い。ドライビングポジションもそれほど良くはないし(シートは快適だしホールド性も良好なのだが、着座位置が高く、ステアリングの調節幅も限られている)、リアシートのデザインはフロントシートとマッチしておらず、価格を考えると残念だ。
ペダル配置もヒール&トーを考慮すると改善の余地があるし、マニュアルトランスミッションのストロークももう少し短くすべきだろう。
機械式のLSDが装備されていることを考慮すれば、トラクションコントロールの介入はもう少し抑えてもよかったと思う。タイトコーナーを走らせるとフロントがもう少しソフトでも良かったと感じることもあった。
ここまでいくつか欠点を書いてきたのだが、それでも非常に楽しくて純粋なホットハッチであることは間違いない。ヤリスGRMNと共に過ごした時間は非常に楽しかった。
ヤリスGRMNの走りは非常に生々しく、ニュルブルクリンクで走らせると、フィエスタSTと比べても、より”本気”な感じがした。
公道同様、トラクションを掴みきれずにアンダーステアを呈することはあるのだが、厄介なホイールスピンが起こるわけではないし、高性能なブレーキのおかげもあって自信を持って運転することができる。それに、パフォーマンスが足りないと感じることもほとんどない。
軽くてホイールベースが短く、バランスも良いので(アクセルを離したり急ブレーキをかけるだけでリアを滑らせることができる)、楽しみつつスピードを出すことができるのだが、スタビリティコントロールのおかげで安全性も確保されている。ヤリスGRMNはニュルブルクリンクのような場所でも楽しむことができるし、決して遅いわけでもない。
Toyota Yaris GRMN (2018) review: what hot hatches used to be

この車を見て、ケーニグセグ・アゲーラの排気管やウイングをそのままヤリス(日本名: ヴィッツ)に取り付け、映画『フック』に登場するルフィオのような塗装を施した車だと感じるかもしれない。
まるでForzaのストアフロントで見かけるような狂気的な見た目ながらも、これはれっきとした市販車、ヤリスGRMNだ。今回は、そんなヤリスGRMNの実力を試した。
GRMNとは、トヨタの新しいパフォーマンスブランドだ。「GRMN」という単語を見て、周囲の自動車評論家たちは「ガーミン」だの「ジャーマン」だの、あるいは「グレムリン」なんて言葉を連想していた。
実際のところ、GRMNは”Gazoo Racing tuned by Meister of the Nürburgring”の略であり、Gazoo Racingとはトヨタのモータースポーツ部門(耐久性の高さやラリーでの実力の高さで定評がある)のことだ。プロドライバーと技術者からなる小規模なチームにより、買い物車のヤリスがホットハッチへと変貌している。
このヤリスこそがGRMNの最初の作品であり、GRMNというブランドを象徴する車に仕上がっていることだろう。今回、ヤリスGRMNに試乗し、変な頭文字の新ブランドが非常に面白い車を作り上げたということを体感した。
カタログを見ただけで車の個性が理解できることもあるのだが、ヤリスの場合も非常に真剣に設計されていることが理解できる。ヤリスにはザックスのダンパーやBBSの鍛造ホイール、4ポッドブレーキ、トルセンディファレンシャル、そしてスーパーチャージャー付き1.8Lエンジンが備わる。これは、トヨタの実験室で生まれた環境対応車でも、マーケティング部門の生み出した机上の空論でもなく、本物の車好きを唸らせるために設計された車だ。
インテリアにもその傾向は見て取れる。ステアリングは真っ当な円形で、ホールド性の高いバケットシートが備わり、そして走行モードは1つしか存在しない。しっかりと焦点の合った車と言えよう。
エアロパーツが大量に装備されているわけでもなければ、インテリアにカーボンファイバーが多用されているわけでもない。この車の性質はルノー・クリオ 182トロフィーに近く、クリオ同様、トヨタがどんな車にしようとしたのか、ということがシャシやパワートレインからしっかりと伝わってくる。
ただし、クリオと違って価格はそれほど安くない。価格は26,295ポンドとゴルフGTI並だ。プジョー・208 GTiやミニJCW、ポロGTIと比べるとむしろ高価だ。
それに、完成度は完璧とは程遠い。ナビは見づらいし、シート自体は良いのだが着座位置が高すぎるし、ステアリングの調節幅も十分ではない。それに、インテリアに使われているプラスチックは少しちゃちだ。
そもそも、生産台数がわずか600台で、そのうちヨーロッパ向けが400台、さらにそのうちイギリス向けがわずか100台なので、購入できる人はかなり限られている。そもそも、車の予約自体、大半の国で予約開始72時間以内に終了してしまっている。

では、もはや手に入れることのできない車の記事を書くことに何の意味があるのだろうか。ヤリスGRMNという車は、トヨタにとって、そして車好き全員にとって、非常に重要な意味を持つ車だ。この車にはとてつもない楽しさがある。しかも、サスペンションやステアリングは調整されているのだが、車自体はノーマルのヤリスと大きく変わらないらしい。
ただし、今回バルセロナのパークモーターサーキットで試乗した車両には公道では装着できないサーキット用のブリヂストン ポテンザが装着されていた。トヨタいわく、サーキットでしっかり走らせるためにはタイヤを専用品に交換するだけでいいそうだ。
車はしっかりと路面に吸い付いた。タイヤが温まる前の1周目には、この車はフォード・フィエスタSTのようなやんちゃさを持っていそうだと感じた。
ヤリスGRMNの走りはサーキットでも公道でも非常に優秀だ。グリップ性能はかなり高く、パワーの出方はしっかりとリニアで、ターボチャージャーを積む競合車とは真逆だった。
トルセンLSDのおかげでセアト・レオン クプラのような前輪に対する安心感もあった。コーナリングの際に外側のタイヤに荷重がかかっても、アクセルを踏めばLSDのおかげで見事に曲がってくれる。決して他の部分が悪いというわけではないのだが、やはりヤリスの最も注目すべき点はターンイン性能だろう。
エンジン音も元気が良く、ステアリングの完成度も高い(ただし、攻めたコーナリングをするとやたら重くなってしまう)し、トランスミッションも変速が気持ち良い。
208 GTiと比べるとロールはわずかに多いので、姿勢変化に少し気を使う必要はあるのだが、この性格はマツダ・MX-5(日本名: ロードスター)とも共通しており、おかげでむしろ車との一体感が増す。
ヤリスGRMNに乗ると、本来のホットハッチのあるべき姿を思い出す。ハイパワーエンジンを搭載し、そのパフォーマンスに合うだけの適度なシャシ強化が施されたシンプルなマシン。それこそがホットハッチだ。
残念ながら、GRMNの第一弾であるヤリスGRMNは高価な限定車なので、ほとんどの人の手には届かないし、そのため、フォード・フィエスタSTほどの人気は得られないだろう。
しかし、ヤリスGRMNに試乗し、GRMNというブランド自体の実力は体験することができた。個人的には、GRMNには輝かしい未来が待っていると思う。

プロトタイプ
2017年にはニュルブルクリンクでヴィッツGRMNのプロトタイプに試乗している。以下にその際の記事を掲載する。
トヨタ製の1.8L 4気筒エンジンにはスーパーチャージャーが備わり、最高出力208PS、最大トルク25.5kgf·mを発揮する。トランスミッションは6速MTで、トルセンLSDも装備され、0-100km/h加速はトヨタいわくクラス最速(6.3~6.5秒)らしい。車重はわずか1,135kgだ。
スプリングレートは61%”以上”増加しており、地上高は24mm下げられ、ザックスダンパーや大径フロントスタビライザー、17インチBBS製アルミホイール、4ピストンフロントブレーキ(このクラスのホットハッチに採用されるのは珍しい)が装備される。フロントストラットタワーバーや前後アンダーブレースをはじめ、シャシ補強もされている。ちなみに、リアサスペンションは標準車同様トーションビームだ。
GRMNは3ドアモデルしか設定されず、ラトバラのWRCカーと同様、ボディは赤と白と黒で塗られており、リアスポイラーやリアディフューザー、センターマフラーが装備される。レザーステアリングはGT86(日本名: 86)と共通で、バケットシートとアルミペダルも備わる。
内外装デザインは欧州トヨタが担当し、シャシとブレーキの設計は日本のトヨタが行っている。製造はフランスのヴァランシエンヌ工場で行われる予定だ。
搭載されるエンジンはイギリスのディーサイド工場で製造される。インジェクターはトヨタのV6エンジンのものが使われており、スロットルチャンバーは40%大型化している。
ディーサイド工場で組み立てられたエンジンはロータスへと送られ、イートン製のスーパーチャージャー(同じものがトヨタ製エンジンとの組み合わせでロータス・エリーゼにも搭載されている)が取り付けられる。そしてこのエンジンがフランスに送られ、車に搭載されることになる。排気圧を低減するため、排気管径は42mmから60mmまで拡大している。
これだけ手がかかっていることを考えると、製造コストはかなり高く付きそうだ。明言はされていないものの、ひょっとしたらヤリスGRMNは利益を回収できないのかもしれない。
ヤリスGRMNの走りは活力に溢れている。乗り心地は硬く、排気音はやかましく(WRCカーに似た低音を響かせる)、ハンドリングは非常にシャープだ。しかし、その走りは生々しく、そして魅力的だ。
高速域では依然硬いながらもちゃんと安定するので、アイフェルの舗装の悪い場所を走っても飛び跳ねるようなことはない。また、開発に際してはイギリスの道路でのテストも行っているらしく、初代フォーカスRSのように左右に傾いた路面で暴れるようなこともない。
最初からLSDの採用を考慮して設計されたわけではないのだが、LSDはしっかりと動いてくれる。フロントのグリップはプジョー・208 GTiほど強力なわけではないのだが、コーナリング中もしっかりとパワーを路面に伝えてくれるし、アクセルを踏み込みすぎるとアンダーステアを呈するのだが、それも徐々に起こるので予測はしやすい。LSDによりホイールスピンはしっかりと抑えられており(フロントストラットタワーバーの寄与もあるはずだ)、滑りやすい路面でも十分に扱いやすくなっている。
ホイールベースが短く、サスペンションが硬いため、特にリアのトーションビームの上下動は激しく感じる。敏捷性は高く、おかげで走りも印象的なのだが、同乗者は不快に感じるかもしれない。

GRMNは特別速い車ではないし、激烈な加速性能があるわけでもない。助手席の人を降ろすだけでも走りは大きく変わり、もともと軽量な車からさらに重量を減らすことの重要性が理解できる。最大トルクを発揮するためには5,000rpmまで回す必要があり、ターボ車とは違って低回転域での力強さはない。
4ピストンブレーキは非常に優秀で、フィールも良好だし、制動力はかなり強力で、標準のヤリスとはまったく違う。走行モードは1種類しかないのだが、車の性格にしっかりとマッチしている。
ステアリングも優秀で軽いのだが、セルフセンタリング力はやたらに強い。ドライビングポジションもそれほど良くはないし(シートは快適だしホールド性も良好なのだが、着座位置が高く、ステアリングの調節幅も限られている)、リアシートのデザインはフロントシートとマッチしておらず、価格を考えると残念だ。
ペダル配置もヒール&トーを考慮すると改善の余地があるし、マニュアルトランスミッションのストロークももう少し短くすべきだろう。
機械式のLSDが装備されていることを考慮すれば、トラクションコントロールの介入はもう少し抑えてもよかったと思う。タイトコーナーを走らせるとフロントがもう少しソフトでも良かったと感じることもあった。
ここまでいくつか欠点を書いてきたのだが、それでも非常に楽しくて純粋なホットハッチであることは間違いない。ヤリスGRMNと共に過ごした時間は非常に楽しかった。
ヤリスGRMNの走りは非常に生々しく、ニュルブルクリンクで走らせると、フィエスタSTと比べても、より”本気”な感じがした。
公道同様、トラクションを掴みきれずにアンダーステアを呈することはあるのだが、厄介なホイールスピンが起こるわけではないし、高性能なブレーキのおかげもあって自信を持って運転することができる。それに、パフォーマンスが足りないと感じることもほとんどない。
軽くてホイールベースが短く、バランスも良いので(アクセルを離したり急ブレーキをかけるだけでリアを滑らせることができる)、楽しみつつスピードを出すことができるのだが、スタビリティコントロールのおかげで安全性も確保されている。ヤリスGRMNはニュルブルクリンクのような場所でも楽しむことができるし、決して遅いわけでもない。
Toyota Yaris GRMN (2018) review: what hot hatches used to be
「208 GTiと比べるとロールはわずかに多いので、姿勢変化に少し気を使う必要はあるのだが・・・」
ロードスターでもひらひらしたような感覚があると思ったんですがこれもあるっていうのは、うーんちょっと疑問ですね必要なんですかねこれ、肯定的にこの記事は書いてあるように思えますが・・・
あとは価格が高いってのは一番の問題点だと思いますが、もう購入できないから関係ないですな
何れにせよ、今後のGRMNには期待しています