今回は、英国「Auto Express」によるヴォクスホール・アストラの試乗レポートを日本語で紹介します。


Astra

ヴォクスホール・アストラはCセグメントハッチバックの売れ筋モデルであり、フォルクスワーゲン・ゴルフやセアト・レオン、それに最大のライバルであるフォード・フォーカスに対して強い競争力を持っている。

新型アストラの開発はイギリスで行われ、イギリスの道路に合った車に仕上がっている。内外装ともに見た目も良いし、旧型モデルよりも室内空間は拡大しているし、そのうえ、アウターサイズは旧型よりも小さくなっている。

エンジンは燃費が良く、最新技術も投入されており、価格は旧型よりも安くなっているため、かなり魅力的だ。中でも1.0L 3気筒ガソリンターボエンジンを搭載するSRiこそが最良のモデルだろう。パフォーマンスも十分にあるし、ハンドリングは機敏で、見た目はスタイリッシュで、装備内容も豊富だ。経済的で楽しいハッチバックが欲しいなら、アストラはその望みをしっかり叶えてくれるだろう。

ヴォクスホールは何十年にもわたってイギリスのハッチバック市場において大きな存在感を放ち続けており、新型アストラはそんなヴォクスホールが生み出した人気モデルの最新型だ。ビバやシェヴェットのほうが登場時期は前なのだが、アストラには40年近い歴史がある。多くの人にとって、このクラスの選択肢といえばアストラかフォード・エスコート/フォーカスの2択だった。しかし、最近ではコンパクトハッチバック市場が激変の最中にある。

7代目となる新型アストラには目を引くような特別なものが求められる。幸い、2015年末に登場した新型アストラは優秀なオールラウンダーであり、競争の激しい市場においても健闘できるだけの実力があった。品質、先進技術、快適性、走行性能、どれをとっても競合車に並べる(もしくはリードする)だけの実力があり、居住空間、荷室空間はいずれも驚くほど広大だ。

現時点では新型アストラには5ドアハッチバックモデルかステーションワゴンモデルのスポーツツアラーしか設定されず、3ドアが欲しいなら旧型ベースのGTCしか選択肢がない。全車2WDで、エンジンによって5速MTもしくは6速MTが組み合わせられる。エンジンによっては6速ATも設定される。

新型アストラでは価格設定が見直され、グレードの整理も行われている。ただ、整理されたといっても、競合車と比べると依然としてかなり複雑だ。グレード構成は下から「Design」、「Tech Line」、「Energy」、「SRi」、「SRi VX-Line」、「Elite」となる。装備が貧相な下級グレードから贅沢な上級グレードまで、選択肢は幅広い。ただし、単純に上級グレードに行くほど装備が増えるわけではなく、仕様が変わるだけという場合もある。オプションも多数設定されているのだが、選ぶグレードによって装備できるオプションも変わってくる。

エンジンだけでも8種類あるのだが、グレードによって選べるエンジンは異なる。ガソリンエンジンは設計の古い4気筒 1.4Lに100PS版、125PS版、そしてターボの150PS版が設定され、ほかに105PSを発揮する新設計の3気筒 1.0Lターボも設定される。最もパワフルな1.6L ガソリンターボは200PSを発揮し、「SRi」、「SRi VX-Line」、「Elite」にのみに設定される。現時点ではハイパフォーマンスモデル「VXR」は設定されないのだが、旧型GTCベースの3ドアのVXRは現在も購入可能だ。

ディーゼルエンジンは1.6L CDTiユニットのみの設定となる。経済性を重視したシングルターボの110PS版と136PS版のほかに、パフォーマンスを重視したBiTurboの160PS版も設定される。アイドリングストップシステムは110PS版のみにオプション設定される。6速ATは1.0L 105PS, 1.4L 125PS, 1.4L 150PS, 1.6L CDTi 125PSでオプションとして選択可能だ。

アストラはコンパクトハッチバックとしてブランドが確立されており、フォルクスワーゲン・ゴルフ、フォード・フォーカス、ホンダ・シビックなどとも比肩する立ち位置にある。ただし、この3台はいずれも保守的なモデルであり、新たに登場した競合車はどれも個性的で多種多様だ。セアト・レオンやマツダ3(日本名: アクセラ)はスポーティーさが売りだし、質感や室内空間を重視するなら、プジョー・308やシュコダ・オクタヴィアやルノー・メガーヌを検討する価値もあるだろう。信頼性や装備内容、保証などを重視するなら、キア・シードやヒュンダイ・i30、トヨタ・オーリスを選ぶ手もある。


走行性能

rear

アストラはイギリスで製造されているし、なによりシャシはイギリスの道路を想定した設計になっている。実際、Auto Expressはシャシ開発中のテストに招かれ、我々の意見が開発にフィードバックされている。

結果、新型アストラはスポーティーなフォード・フォーカスと快適なフォルクスワーゲン・ゴルフの中間的な立ち位置の車となっている。最大200kgの軽量化を果たしたことで舗装の悪い道でも安定して走ることができ、路面の凹凸に怯えることもなくなった。それに、105PSの1.0Lモデルでもパフォーマンスに物足りなさは感じない。

スポーティーグレードでも快適性が損なわれているわけではない。SRi以上のグレードもシャシは基本的に同じで、違うのはタイヤとホイールくらいだし、乗り心地やハンドリングはどのモデルもあまり変わらない。

しかし、アストラの最大の注目点はエンジンだ。ディーゼルエンジンは特別静かなわけではないのだが、競合車と違ってガラガラ音はほとんど気にならないし、パフォーマンスは驚異的だ。1.0Lの3気筒エンジンも予想以上に力強く、1.6Lガソリンターボエンジンは俊足でとても楽しい。

ステアリングはコーナーでは軽くてクイックだ。フィードバックに富んでいるわけではないのだが、グリップを最大限引き出すことはできるし、操作性も非常に高い。SRiは特に落ち着いており、旧型モデルと比べるとかなりしなやかになっている。

路面の衝撃は伝わってくるのだが、ダンパーのおかげで角はしっかり取れており、また動きは非常に落ち着いているので、安全にスピードを出すことができる。高速走行時の風切り音やタイヤノイズも少ないので、静かで快適なクルーザーとしての一面もある。

ATモデルのアストラには試乗できていないのだが、少なくともMTは扱いやすかった。ただし、フォード・フォーカスのMTほどに滑らかなわけではない。

上述の通り、アストラには5種類のガソリンエンジンと3種類のディーゼルエンジンが設定される。最も売れるのはおそらくディーゼルだろう。このディーゼルは特別静かなわけではないのだが、競合車のディーゼルエンジンと比べれば静かだ。最も燃費が良いのは110PS版なのだが、ベストセラーになるのはおそらく136PS版だろう。

ガソリンエンジンの中で最も優秀なのは1.0L 3気筒ターボなのだが、おそらく最量販となるのは滑らかでパフォーマンスも高い125PSの1.4Lターボだろう。パフォーマンスの高さでは1.6Lターボが一番なので、ホットハッチの派手さや値段の高さを嫌うユーザーには受けるだろう。

ヴォクスホールの1.0Lターボエンジンはダウンサイジングターボエンジンの中でもかなり優秀な部類に入る。バランサーシャフトを上手く使うことで普通の3気筒エンジンよりもかなり滑らかだし、高回転域まで回すとSRiのスポーティーなイメージにも似合うほどの個性的な音を響かせる。

カタログスペック上の出力やトルクは控えめなのだが、実際に走らせてみると車重を物ともしない力強さがある。1.0LターボのアストラSRiは我々の計測で0-100km/h加速10.5秒を記録した。しかし、決して遅いという感じはしない。1,800rpmから17.3kgf·mという最大トルクが発揮されるため、中回転域では非常に力強い。

1.0Lモデルには5速MTしか設定されないのだが、強力なトルクのおかげでそれもあまり気にならない。それに、トランスミッション自体の出来も良く、シフトレバーは少し大きすぎる気もするのだが、エンジンの性格的にもやたら高回転まで回す必要はない。


ランニングコスト
いまだアストラの多くは企業向けの販売が占めているため、CO2排出量は重要となってくる。1.6 CDTiの110PS版はCO2排出量82g/kmで、燃費は32.3km/Lと驚異的だ。当然、実燃費は変わってくるのだが、トヨタ・オーリスハイブリッド(79g/km)以外でアストラのCO2排出量に並べるのはプジョー・308だけだ。136PS版もCO2排出量は100g/kmを切るため、道路税の免除対象となるし、1.0L 3気筒ガソリンターボモデルもCO2排出量は100g/km未満だ。

アストラのリセールバリューは昔からそれほど良いわけではない。アストラは街に溢れているし、昔のアストラは決して優秀な車ではなかったからだ。新型はまだましなのだろうが、それでもあまり楽観視はできない。幸いにも新技術がたくさん導入されているので、その点はリセールバリューに良い影響を与えるはずだ。


内外装

interior

保守的なデザインの競合車と比べると、新型アストラはシャープな印象だ。立体的なフロントバンパーおよびグリルから横長のヘッドランプを経て、ボディサイドをプレスラインが流れていくのは印象的だ。SRiモデルは標準装着の17インチアルミホイールのおかげもあってかなりスポーティーな印象だ。

プレスラインに並行するようにウインドウラインも後ろ上がりとなっており、Cピラー以降はそのままルーフまで上がっていく。このせいで後方視界は犠牲になっているのだが、代わりに見た目は非常にスポーティーになっている。細いテールランプは高めの位置にあり、またルーフスポイラーや小さめのリアウインドウのおかげで実際よりも小さく見える。

旧型アストラも作りはしっかりしていたのだが、新型ではさらに上質になっている。室内に乗り込むとダッシュボードにはソフトなプラスチックが使われており、ステアリングは上質なレザーで巻かれ、ピアノブラックのプラスチックのおかげで高級感も感じられる。インテリアには頑丈さも感じられたので、家族での使用にも適しているだろう。

最近のヴォクスホールのインテリアは完成度が高く、スタイリッシュかつ使いやすいダッシュボードには上質な素材が使われている。アストラは先進装備を付けることでさらに一歩先へと進んでいる。その司令塔となるのが直感的に使える7インチもしくは8インチのタッチスクリーンだ。

スクリーンはメッキのアクセントとうまく調和しているピアノブラックの囲いの中にバランス良く配置されている。メーターの間にもディスプレイがあり、グラフィックはクリアだ。

Apple CarPlayとAndroid Autoは全車標準装備で、SRiのNavモデルにはNavi 900 IntelliLinkシステムと8インチタッチスクリーンが装備される。グラフィックはルノー・メガーヌのディスプレイと比べると精細感で劣るのだが、アストラのシステムも非常に機能的で使いやすい。

それに、わざわざタッチパネル操作をしなくても、SRi NavモデルにはヴォクスホールのOnStarが付いている。このサービスを使うと、コンシェルジュに電話をかけ、遠隔操作で目的地を設定してくれる。それに、事故時には自動的に緊急通報をしてくれるので、安心にも繋がる。

Bluetooth連携機能やDABラジオも装備され、また有償ではあるが4G Wi-Fiホットスポット機能もあるので、車内でモバイルデバイスをインターネットに繋ぐこともできる。


実用性
アストラにはファミリーカーとして十分な室内空間がある。特別広いほどではないのだが、5人が無理なく座ることができる。リアシートはシュコダ・オクタヴィアほど広大なわけではないのだが、フォード・フォーカスよりは快適に座ることができる。荷室も適度な大きさ、形状だし、1,000ポンド追加で支払えばさらに荷室の広いアストラ スポーツツアラーを購入することもできる。

全長は4,370mmで、フォード・フォーカスより10mm長く、フォルクスワーゲン・ゴルフより100mm近く長い。全幅もゴルフよりは広いのだが、フォーカスのほうがさらに幅広だ。ただし、その差はミリ単位だ。

ルーフラインはクーペ風なのだが、室内のヘッドルームは十分に確保されている。スポーティーモデルのSRiも全高は同じで、シャシに特別な違いはなく、標準車との違いはホイールとタイヤくらいしかない。

ボディサイズは旧型アストラより小さくなっているのだが、居住空間も荷室容量も拡大している。身長180cmの人が運転席と助手席に座ったとしても、リアシートには乗り込みやすいし(ドアの開口面積は広く、チャイルドシートも載せやすい)、ニールームやヘッドルームも広大で、フォーカスよりも明らかに広い。

運転席やステアリング位置の調整幅は広く、前方視界も良好だ。ただし、側方視界は傾斜したウエストラインや太めのCピラーのせいであまり良くはない。

boot

リアハッチを開くと綺麗な四角形の荷室があり、底には荷物の滑り止めとして有用そうな凹凸が付けられている。開口部の下端は荷室フロアよりもやや高くなっているのだが、他のハッチバックと比べて特別劣るわけではない。

リアサスペンションのレイアウトが簡素化された結果、荷室容量は旧型アストラよりも拡大して370Lとなっている。ただし、依然として空間効率の高いハッチバック(ホンダ・シビックやプジョー・308)には負ける。

シートを倒すと(操作は簡単だ)荷室フロアとシートバックの間には段差が生まれる。テンパータイヤを装備すると荷室フロアが高くなってシートを倒した際のシートバックの高さと同じになる。ただし、この場合、荷室容量がわずかに少なくなる。


信頼性・安全性
アストラは2015年のユーロNCAP衝突安全性試験で5つ星を獲得しており、運転支援技術も満載されている。スタビリティコントロールや6エアバッグも装備され、OnStarを使えば緊急時に自動的に通報してくれる。

ドライビングアシスタンスパッケージを選択するとフロントにカメラが装備され、様々な情報を検知してくれる。これにより、低速走行中に前方の車に衝突することを防ぐエマージェンシーブレーキが機能するだけでなく、前方の車両との安全な車間距離が保たれているかまで判断してくれる。

高速道路を走行中に車線内から外れると車線逸脱警報が作動して警報が鳴り、レーンキープアシストにより緩やかなステアリング操作が行われて車線内に車が戻る。アストラには道路標識を認識する機能もあり、制限速度をディスプレイに表示してくれるし、死角に誰かがいる時には警報してくれる。それに、競合車同様、セルフパーキングシステムも装備されている。

エアバッグは前席用のフロント・サイドエアバッグのほか、全乗員用のカーテンエアバッグも装備される。シートはドイツ脊椎健康推進協会の「腰に優しい製品」認定を受けている。

競合メーカーと比べた場合、ヴォクスホールは2016年度のDriver Power 顧客満足度調査の結果が芳しくなく、25位だった。また、ディーラーの満足度もそれほど高くなく、プジョーやルノーよりも低い22位だった。

ヴォクスホールの保証期間は特別長いわけではない。ディーラーはそのあたりに重きをおいていないようだし、購入者もそれほど保証は重視していないようだ。保証期間は大半の競合車と同じく3年間だ。


Vauxhall Astra review