Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテのレビューです。


Huracan Performante

もはや、車が常に警報音を鳴らすような状態にも慣れてしまった。ドアを開けると警報が鳴り、シートベルトをすぐに締めなければ警報が鳴り、助手席に買い物袋を置けば警報が鳴り、クラッチを踏まずにエンジンをかけようとすると警報が鳴り、街灯にぶつかりそうだと車が判断すると警報が鳴り、ライトの消灯をし忘れると、それどころかグローブボックスの中に携帯電話を置き忘れても警報が鳴る。うとうとすると警報を鳴らす車さえある。

しかし、理由なく音を鳴らして私を苛立たせる車としては、ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテを超える車はないだろう。凍てつくような朝、私はウラカンの警報音に悩まされた。どうもTSUが故障しているらしい。TSUが何かなど分からなかったのだが、少しすると再びTSUの警報が鳴り、そうこうしているうちにまた警報が鳴り、さらに1分後に再び警報が鳴った。規則的に鳴るならまだ耐えられたのだが、困ったことに犬の鳴き声と同じくらい不規則だった。

なのでランボルギーニに電話をかけて訊いてみたのだが、試乗車は市販前のプロトタイプ車であり、遠隔システムが未完成らしい。なので私はディーラーに車を持ち込んだ。ノートパソコンを持った担当者は、これでもう警報は鳴らないと言った。

ディーラーから職場まで帰る途中、再び警報が鳴った。今回は何が問題なのか、老眼鏡をかけて確認してみた。アーケードゲーム風の電子メーターに表示される小さな文字を読むと、MMIが無効になっているそうだ。イギリス軍以上に頭文字を濫用している。

しかし、謎のMMI(後で知ったのだが、これはマルチメディアインターフェイスのことらしい)が無効になったところで、走りに異常はきたさなかったし、この警報は1回しか鳴らなかったので特に気にならなかった。

その日の午後、ロンドンを出発してM25に入るとまた警報が鳴った。また老眼鏡をかけて確認してみると、「エンジンを停止してエンジンオイルレベルを確認してください」と表示されていた。そのとき時間は午後の6時で、私はM25を走行中だったので、次のサービスエリアまで走り続けることにした。

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サービスエリアに入るために減速していると警告灯が消えた。なので、エンジンオイルは十分に入っているのだろうと判断し、再び加速をはじめたのだが、それから10分後、再びオイルレベル低下の警報が鳴った。しかし私はそれを無視した。そのとき私はナビが起動しなくてそれどころではなかった。交通情報の取得にも失敗した。そしてエンジンオイル警告灯が再び点灯した。それでもまだ大した問題は起こらなかった。

ところが、今度はワイパーのスイッチがどこにあるのか分からずに困ってしまった。愚かにもランボルギーニはフェラーリの真似をしてありとあらゆるスイッチをステアリング上に配置してしまった。なので、ワイパーを作動させようとしても、結局はクラシックFMを聞きながら左ウインカーを点灯させることになる。

田舎道を走る時にはハイビームへの切り替え操作も必要になる。ハイビームに戻そうとボタンを押してみるのだが、コーナーでその操作をやろうとするとワイパーがオフになってしまう。

自棄になってめちゃくちゃにスイッチを押しているとライトが全て消えてしまった。私は夜中、無灯火でワイパーも動かさず、80km/hで走り続けた。

なんとかライトもワイパーも作動させて走っていると、55km/hで走るアウディの後ろについてしまった。その日は午後7時までに家に帰らなければならなかったので、走行モードをコルサモードだかレースモードだかにして、短いストレートでアクセルを踏み込んだ。

こんな音は今までに聞いたことがない。おそらく、エンジンはオイルが足りないと判断してそのまま爆発したのだろう。私はパニックになって追い越しを中断し、アクセルから足を離した。そして気付いたのだが、これはエンジンがおかしくなった音ではなく、ウラカンの普通のエンジン音だった。

それからなんとかアウディを追い越したのだが、その頃にはもう随分遅い時間になっていた。家に着く前に7時になってしまったのでラジオから『アーチャーズ』が流れはじめてしまった。しかし幸いなことに、ランボルギーニはあまりにもやかましいので、車内にラジオの音声など届かない。

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エンジン始動音はまるで削岩機だ。そしてアクセルを踏み込むと赤ん坊が泣き出し、クラカタウとグレイトフル・テッドとスペースシャトルとホワイトノイズとF1とF-15イーグルとライオンと戦争が大合唱をはじめる。このすべてが同時に1台の車の中で起こる。

驚くべきことに、ウラカンは決して大きな車ではない。確かにリアは奇妙なスポイラーで飾られているし、ノーズは威圧的だ。それに、試乗車はオレンジだった。しかし、ボディサイズ自体はそれほど大きくない。そんな車がこれだけの音を響かせるのはどこか滑稽にも思える。

『アーチャーズ』の音をかき消すためにランボルギーニの音を聞いているうちに、この車に惚れ込んでしまった。これは素晴らしい車だ。最高の車だ。至高の車だ。

ランボルギーニによると、新しいカーボンファイバーの製造手法がとられているため、精密な部品も作ることができるようになり、ペルフォルマンテはかなりの軽量化を果たしているそうだ。しかし、それは嘘だ。車重は1.4トンもある。まだ重い。4WDなのも標準車と変わらないし、5.2L V10エンジン(おそらくこのエンジンはもうすぐ無くなってしまうだろう)も標準車とほとんど同じだ。

しかしどういうわけか、ペルフォルマンテは馬鹿みたいに速い。直線ではフェラーリ・458スペチアーレを置いてけぼりにできる。ニュルブルクリンクでは100万ポンドのハイパーカーよりも速い。信じられないかもしれないが、この車はニュルブルクリンクで6分52秒を記録している。

それに、この車はただ速いだけではない。この車は楽しい。宇宙創生のような音を響かせながら頭はヘッドレストに押し付けられるのだが、それでも腕には電撃が走っている。この車にはすべてが詰まっている。まるでイタリアントマトのような車だ。小さくて鮮やかで、その中には刺激的な味覚が詰まっている。

もちろん、この車は苛立たしい。特に試乗車にはかなり頭にきたのだが、それすらも魅力に思えてしまう。このおかげで車がより人間的に思えた。魂があるように感じられた。だからこそ、ただの優秀な車ではなく、最高の車だと思えた。


The Clarkson Review: 2018 Lamborghini Huracan Performante