今回は、米国「Car and Driver」によるインフィニティ G35の試乗レポートを日本語で紹介します。

※内容は2002年当時のものです。


G35

日産の夢を背負って誕生したインフィニティは1989年に大胆な高級車を生み出した。高出力エンジンを搭載したQ45は、前代未聞のグリルレスデザインを採用し、柔らかなレザーが使われたインテリアは昔ながらの定石を破り、木目は多用されなかった。我々は一目でQ45を気に入った。

それから1990年代に入り、インフィニティは矢継ぎ早に3車種を投入した。どの車も自動車保険のCMに登場する車と同じくらいに没個性的だった。あまりにも退屈だった。

インフィニティはそんな過去を反省したのか、かつてインフィニティを酷評してきた大手自動車メディアを招待し、BMWに対抗していくらしいモデルの内覧会を開催した。この車はハイパフォーマンスFR車であり、運転する歓びをドライバーに与えることを目的としているそうだ。しかし我々はその言葉をまるで信じなかった。BMWに対抗すると宣言して失敗したメーカーは他にもある。そして我々は2002年3月に発売予定の3シリーズ対抗車、G35という車と対面した。

驚いた。BMWに対抗するという話はハッタリではなかったようだ。G35は空力性能や接地性能などで日産のル・マンでの経験が活かされている。その結果、これだけ個性的なプロポーションが誕生した。ホイールベースは2,850mmで3シリーズよりも100mm以上長い。前輪は車両前方に配置され、エンジンの重心よりもわずかに前に位置している。その結果、前後重量配分が52:48となっている。また、リアシートの居住性を向上するため、後輪は車両後方に配置されている。タイヤを車の四隅に近い場所に配置することで広大な居住空間を確保し、同時に走行中の接地性を安定させることで操作性を向上している。

全長は4,729mmなので3シリーズやレクサス・IS300よりもおよそ250mm長く、アウディ・A4よりもおよそ180mm長い。全長が長いのでボディラインが滑らかになって空力性能が向上しただけでなく、室内空間も大きく拡大している。室内容量は2,860L確保されており、3シリーズやその追随車種と比べると10%ほど広い。それに、トランク容量も明らかに広い。

interior

空力性能はG35の強みだ。長いボンネットは前方に行くにつれて緩やかに傾斜していく。フロントウインドウの角度もこのクラスとしてはかなり寝ている。車体下はノーズからエンジンを過ぎたあたりまでアンダーカバーが覆っており、空気の流れが形作られている。リアシート下に搭載される燃料タンクの底もフラットになっており、プロペラシャフトの下にあるマフラーも特殊形状になっているため、車体下の空気の流れは速くなり、リアサスペンションの下を通ってトランク下にあるディフューザー部へと至る。

その結果、Cd値はわずか0.27(この車格の車としては非常に優秀だ)となり、フロントゼロリフトも達成している。オプションのエアロパッケージ(リアスポイラーとフロアアンダーカバー)を装備すればCd値は0.26まで下がり、リアゼロリフトも達成する。

G35にはパワートレインの選択肢がない。可変バルブ機構付きの3.5L V6エンジンのみが設定される。最高出力は264PSで、330iより35PS上回っているのだが、車重は330iより約20kg重い。トランスミッションは当初、マニュアルモード付きの5速ATのみが設定され、1年後には6速MTも追加設定される予定だ。

サスペンションはこのクラスとしては珍しくストラット式ではない。四輪マルチリンク式が採用されており、軽量化のためにアルミニウム製のリアクロスメンバーが採用されている。また、中空スタビライザーも採用されている。ストラット式に比べ、マルチリンク式サスペンションはキャンバー角の変化が抑えられており、またコイルの位置を外側にできるため、より広い荷室を確保することができる。

試乗車はエアロパッケージ付きの車で、スポイラーとフロアアンダーカバーのほかに、スポーツサスペンション(スプリングとショックアブソーバーが強化されている)、215/55VR17サマータイヤが装備されていた。G35はボンネットが前方に向かって傾斜しているため、前方の視界は良好だった。パワーシートの操作系は車両中央寄りに配置されている。運転席の右膝のあたりには12V電源もあり、レーダー探知機用にぴったりだ。

rear

アクセルを踏むと力強く加速してくれる。路面の段差を乗り越えると硬さが感じられた。風切り音やタイヤノイズはうまく抑えられていたのだが、スピードメーターはインフレ気味だったように感じた(同じ問題はアルティマにもあった)。エンジン音は滑らかで心地良かった。全体的に見ると、このクラスとしては非常に完成度が高く、快適性と楽しさをうまく両立できているように感じられた。

サーキットで走らせてみるとステアリングが軽く感じられ、BMWにあるような特別感を抱かせるまでには少し足りないように感じられた。サスペンションの動きはしっかりと制御されており、飛ばしても暴れるようなことはない。

G35は久々にBMWやアウディを脅かせそうなインフィニティ車だ。


2003 Infiniti G35