今回は、米国「Car and Driver」によるレクサス IS300(日本名: アルテッツァ)の試乗レポートを日本語で紹介します。

※内容は2000年当時のものです。


IS 300

ある意味、自動車ビジネスは演劇のようなものだ。最高の演劇をすればきっと誰かに模倣され、その劇に追随して誕生した劇はプロットやセリフが似通ってしまう。ES300の下のクラスに新たに登場したこの新型車を例に考えてみよう。整ったスタイルや短いオーバーハングはBMW 328i同様、いかにもスポーツセダンといった感じだ。フロントに直列6気筒エンジンが搭載される後輪駆動車であるという点もBMW 328iと同じだ。四輪ディスクブレーキで4チャンネルABSが装備され、17インチという大径ホイールを履くことで、高い制動力とコーナリング性能を実現しようとしている点もBMW 328iと同じだ。

類似点は無数にある。実際、レクサス自身もコンパクトスポーツセダンという分野で長らく覇権を握っているBMWに挑んでいくことを公言している。昔なら、日本の自動車メーカーがアウトバーンの支配者に挑むなど、笑い種でしかなかっただろう。しかし、そんなのはもう昔の話だ。1990年に登場した初代LS400がそれを証明した。

それでも、アジアの自動車メーカーが3シリーズの支配する小型高級セダンという分野でまともに戦えた前例はない。少なくとも今までは。というわけで、今回はIS300の実力を検証してみることにしよう。

IS300はアメリカ市場では新登場の車なのだが、世界の他の地域では以前から販売されている。1998年、2.0L 直6エンジンを搭載するモデルがアルテッツァという名前で日本で登場し、2000年にはそのモデルがヨーロッパでIS200として発売された。北米仕様がIS300と呼ばれるのは、それとは違うエンジンを搭載しているからだ。

IS300のシャシは概要を聞く限りなかなか良さそうだ。ホイールベースは2,670mmで3シリーズよりも56mm短いのだが、ボディサイズは3シリーズとほぼ同一だ。サスペンションは四輪すべてダブルウィッシュボーン式で、ブレーキディスクも大きく(フロントは11.7インチのベンチレーテッドディスク、リアは12.1インチのソリッドディスク)、EBDも装備される。タイヤサイズは215/45VR17で、オールシーズンタイヤを履く16インチモデルも設定される(無償のオプションだ)。ちなみに、トルセンLSDは有償オプションだ。

rear

パフォーマンスも十分だ。IS300にはGS300と共通の2JZ-GE型3.0L DOHC 24バルブ 直列6気筒エンジンが搭載される。このエンジンは昔のトヨタ・スープラの血統を引いている。GS300に搭載される同型エンジン同様、可変バルブタイミング機構のVVT-iが採用されているのだが、スペックはわずかに低下し、最高出力218PS、最大トルク30.1kgf·mとなっている(GS300は223PS/30.4kgf·m)。IS300はエンジンベイが狭く、排気システムが小型化されているため、パフォーマンスに差が生じている。一方で、車重はIS300のほうが約130kg軽いので、パワーウェイトレシオはGS300だけでなく328iやアウディ・A4 2.8にも勝っている。

アメリカでの発売初年度は、他国で販売されているモデルとは違い、トランスミッションに選択肢が存在しない。GS300同様、マニュアルモード付き5速ATのみが設定される。変速用のボタンはステアリングに配置されているため、運転状況によってはまともに変速できないこともある。マニュアルモードでも勝手にシフトアップされてしまうことがあるのだが、アクセルを踏み込んでいればそれを回避することができる。

発売翌年にはMTモデルが追加される予定らしい。MTは2.0Lモデルに採用されている6速ではなく、5速MTになるそうだ。6速MTでは3.0Lエンジンのパフォーマンスに対処できないらしい。登場が1年遅れるのは型式認証が遅れていることが原因だそうだ。しかし、MT車だけが遅れているのは、レクサスが高価なATモデルを売りたがっているからなのかもしれない。いずれにしろ、MT車を設定している328iとの戦いでは不利になってしまうだろう。

ATしか設定されないものの、0-100km/h加速は公称値7.1秒とかなり速いし、実際に試乗しても、それだけの速さはちゃんと感じられた。

IS300のエクステリアはやや無個性なのだが(クリアテールランプは特徴的なのだが、フロントエンドはレクサスというよりもアキュラ風だ)、インテリアには新しさがある。トヨタ・MR2スパイダーやセリカGT-S同様、スタイリッシュなアルミペダルが装備されている。ただ、履いている靴によっては滑りやすいかもしれない。ダッシュボードの中央最上部には浅い収納スペースがあるのだが、そこに入りそうなのは糸くずくらいだ。メーターは中央のスピードメーターの内側に燃費計、電流計、水温計が配置されており、クロノグラフ風になっている。ただ、個人的にはごちゃごちゃしているように感じられた。

interior

しかし、デザイン以上に気になるのは、室内の狭さだ。室内空間自体は328iやA4にやや劣る程度なのだが、リアシートはこの2台よりも圧倒的に狭く、セダンというよりは4ドアクーペと言ったほうがいいかもしれない。乗車定員は5人なのだが、大人5人を乗せるためには東京の地下鉄の押し屋に手伝ってもらう必要がある。

ただ、レクサスはこれを大きな問題だとは思っていないようだ。IS300のターゲット層は若年男性であり、室内空間にはあまり興味がないそうだ。なので、レクサスはIS300がES300の顧客層を食うことはないと考えている。この2台の客層はほとんど被りそうにはない。

しかし、果たしてIS300は本当に328iに対抗できる車なのだろうか。まず気になったのは明らかなアンダーステアだ。それに、急に進路変更するとやや暴れ気味になる。高速走行時に路面の段差を踏むとサスペンションがすぐに対処できなくなってしまう。パワーステアリングは速度に応じてアシスト量が変化するのだが、フィードバックはやや物足りなかった。また、キャビンに侵入してくるタイヤノイズの大きさも気になった。決して騒々しいわけではないのだが、レクサスの車としてはかなりうるさい。

良い部分についても述べよう。舗装の良いコーナーでは非常に安定しているし、走りに変な癖もない。制動性能も高いし、直6エンジンは優秀だし、レクサスらしく、シートやオーディオシステムはかなり上質だ。

価格は私がこれを書いている時点ではまだ公表されていない。3万ドル台前半から中盤程度としか明かされていない。328iが34,000ドルであることを考えると、IS300はそれよりも安い32,500ドル程度だろう。レクサスは年間販売台数25,000台と予測している。それが実現するかはまだ分からない。


2001 Lexus IS300