今回は、米国「Automobile」によるリンカーン・ナビゲーターの試乗レポートを日本語で紹介します。


Navigator

新型リンカーン・ナビゲーターの試乗ルートは、実際に車の鍵を受け取るまで知らされていなかった。試乗ルートは沿岸部のリゾート地からワインの国、テメキュラに向かい、戻るという道程だった。ナビゲーターの購入層が実際に頻繁に走りそうな道だ。ラグナビーチに集う人たちはまさにナビゲーターが訴求すべき層だろう。

実際に運転してみると、旧型との違いはすぐに分かった。一般的な路面状況にはうまく対処できており、路面の凹凸も、喚き散らすテリアと対峙するグレート・デーンがごとく、毅然とした態度で受け流した。車重は2,656kgなのだが、バランスを崩すことはほとんどない。リアサスペンションも独立懸架なのだが、走りはトラック的で、アウディ・Q7やメルセデス・ベンツ GLSなどのドイツ車とうまく差別化されている。

オレンジ郡からテメキュラに向かう唯一の道であるオルテガ・ハイウェイはサンタアナ山脈を通り、コーナーも多いのだが、全長5,334mmのボディは暴れることなく予想通りの走りをしてくれた。ジャガー・F-PACEのような走りが期待できるわけではないのだが、特に「エキサイトモード」にすれば、ほとんどストレスを感じることなくスキーリゾートにも行くことができるだろう。走行モードは他にもあるのだが、いろいろと試した結果、ステアフィールがシャープでスロットルレスポンスも良好なエキサイトモードが一番気に入った。

この車の原動力はフォードの3.5L EcoBoost ツインターボV6エンジンで、最高出力456PS、最大トルク70.5kgf·mを発揮し、10速ATが組み合わせられる。加速性能は十分にあるし、音も抑えられてはいるものの、適度な音は聞こえてくる。0-100km/h加速は公表されていないのだが、旧型ナビゲーター(385PS)の0-100km/h加速が6.5秒であったことを考えると、新型は6.0秒程度だろう。ブレーキに関しては、なるべく踏みすぎないほうがいいだろう。制動性能は十分にあるのだが、ブレーキのせいで不快なノーズダイブが起きてしまう。

rear

走行性能も良かったのだが、リンカーンは室内空間に力を入れたようだ。見た目が良いばかりでなく、実際の居心地も良く、十分に遮音されているので音や振動がほとんど気にならない。フロントシートは非常に快適で、どんな体型の人でも快適な運転姿勢を取ることができるだろう。サイサポートも単独調整できるし、マッサージ機能(1,250ドルのパーフェクトポジションパッケージに含まれる)も付いている。マッサージのスイッチはドアにあるシート調整用のスイッチの隣にある。このスイッチの配置はメルセデスの模倣だと感じる人もいるだろう。しかし、それでも良かったと思う。調整するものが多いので、これが一番分かりやすい。

インテリアにはメッキが巧く使われており、ピアノブラックのアクセントと良い対比になっているし、どのインテリアカラーを選んでも映える。ダッシュボードもヴィンテージ風でスタイリッシュだし、液晶メーターとも調和している。インフォテインメントシステムはフォード「Syc 3」のリンカーン版で、残念ながらディスプレイデザインは全体的な雰囲気とあまり合っていないのだが、60年前風のインテリアに合うタッチスクリーンを考えるのはなかなか難しいだろう。とはいえ、使用しないときに画面を格納できないのは残念だ。

場所によっては質感の低い部分もあることには留意すべきだろう。ただし、最上級グレード「Black Label」に使われるヴェネツィアンレザーは非常に質感が高い。それに、「Black Label」には20スピーカーのREVEL ULTIMAオーディオシステムやテクノロジーパッケージ(アダプティブクルーズコントロール、アクティブパークアシスト、オートハイビーム、ヘッドアップディスプレイ、衝突防止アシスト、レーンキーピングアシスト)、22インチホイール(いずれも下級グレードではオプション)が標準装備となる。

インテリアはほとんど完璧なのだが、エクステリアの存在感には少し物足りなさを感じる。サイドから見るとフォード・エクスプローラーに似すぎており、まるでエクスプローラーをそのままスケールアップしてフェンダーに飾りを付けたかのようだ。2016年に発表されたナビゲーターコンセプトはルーフがやや傾斜しており、そのプロポーションは現代のSUVのゴールドスタンダード、レンジローバーに似ていた。コンセプトカーの要素が削られてしまったことは残念だが、ルーフがフラットになったことで3列目のヘッドルームまでしっかりと確保されており(947mm)、190cm超えの私も快適に座ることができた。ちなみに3列目のレッグルームは1,074mmと、こちらも十分だ。

interior

平面的なルーフのせいでリアの見た目にも悪影響が及んでいる。Dピラーがブラックになったことや水平基調のテールランプが従来型とは上下逆向きになった点は良いと思うのだが、縦横比がほぼ1:1なのでずんぐりした印象は残っている。

次にフロントに目を向けてみよう。リンカーン共通デザインのフロントグリルはコンチネンタルでもそれほど特別感がなく、SUVサイズとなったナビゲーターでもやはりそれほど特別感がない。それに、どこかバランスが悪い気もする。巨大なリンカーンのロゴはしっかり作られているのだが、フロントグリルは1965年式のコンチネンタルのように横桟にしたほうが似合うと思う。

エクステリアデザインには問題もあるのだが、それ以外は非常に完成度が高い。インテリアは魅力的だし、パワートレインはパワフルだし、装備も充実しているし、最大牽引重量は3,600kgを超えるし、価格設定も73,250ドルからと適切だ。ハイヤー業界では人気を得るだろうが、リンカーンが訴求すべき富裕層に受けるかは実際に結果を見なければ分からない。リンカーンのコンシェルジュサービスもセールスポイントのひとつなのだが、結局はマーケティングが物を言うだろう。


First Drive: 2018 Lincoln Navigator Reserve