今回は、英国「Auto Express」による新型インフィニティ・QX50(プロトタイプ)の試乗レポートを日本語で紹介します。


QX50

日産の高級車ブランド、インフィニティは欧州進出から十年以上が経っているのだが、ライバルと比べるとブランド力はあまりない。ブランド力に欠けるインフィニティがアウディ・Q5やメルセデス・ベンツ GLCクラス、ジャガー・F-PACEと対等に渡り合っていくためには、何か特別な魅力がなければならない。インフィニティはQX50に先進技術を盛り込み、競合車に対抗していくようだ。

我々は開発陣に混ざり、11月下旬に開催されるロサンゼルスモーターショーで発表される予定の新型QX50に試乗した。この車で目玉となるのは可変圧縮比エンジンだ。これは世界初の技術であり、従来モデルに搭載されていた3.5L V6エンジンに代わるものだ。従来比で25%の高効率化を図り、同時に出力・トルクも向上している。日産およびインフィニティはこのエンジンを「VC-T」と呼んでいる。

このエンジンは圧縮比を8:1から14:1の間で絶えず変化させ続け、結果、高い環境性能とパフォーマンスを両立している。加速時には圧縮比が8:1に近くなり、低回転でゆっくり走行している時には14:1に近くなる。エンジン内部ではリンク機構とアクチュエーターによりピストンがコントロールされている。機構は非常に複雑なのだが、運転してみると至って普通だ。

アクセルを踏むと強力な加速が得られる。最高出力は273PS、最大トルクは39.8kgf·mで、スペック的にはクラス標準レベルだ。とはいえ、4気筒エンジンとしては強力だし、レスポンスもかなり良い。

パワートレイン主管の木賀新一氏いわく、「0-100km/h加速は競合車の4気筒モデルと比べて、最大1秒速い」らしい。実際、アリゾナでの試乗を終えた我々には、彼の言葉が正しいように思えた。

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新エンジンに組み合わせられるのは新設計のCVTだ。CVTは日本に愛され、それ以外のほとんどの国から嫌われているのだが、木賀氏によると、効率性を求めるならCVTが最適らしい。開発陣はCVT特有の不快なフィールを無くすために試行錯誤したそうだ。8段の仮想ギアが設定されており、素早く、そして滑らかな変速が可能となっている。デュアルクラッチトランスミッションと比べると快適性やシームレスさで劣るのだが、それでもこれまで試してきたどんなCVTよりも優秀なのは確かだ。

新型QX50には(少なくとも当初は)このパワートレインしか設定されないようだ。ディーゼルモデルやプラグインハイブリッドモデル、ハイパフォーマンスモデルが登場する予定はしばらくはないらしい。しかし、これも戦略としては正しい。木賀氏は、近い将来、この技術が今の直噴エンジンと同じくらいにメジャーな技術になると考えているようだ。

パワートレインに関しては既に多くのことが明らかになっているものの、QX50自体の詳細はロサンゼルスモーターショーでの正式発表までは明らかにならない。新型QX50はアメリカでは2018年春発売予定なのだが、欧州市場への投入は2018年晩秋まで待たなければならない。いずれにしても、以前に発表されたQX50コンセプトを見れば、新型QX50のデザインも大体はイメージできるだろう。


New Infiniti QX50 prototype review