今回は、英国「Auto Express」によるヒュンダイ・アイオニック プラグインとトヨタ・プリウスPHVの比較試乗を日本語で紹介します。


Prius vs Ioniq

今回はヒュンダイ・アイオニックがトヨタ・プリウスに挑む第二回戦だ。前回行った比較試乗ではアイオニックが敗北を喫している。

アイオニックには新たにプラグインハイブリッドモデルが登場し、プリウスPHVに挑んでいくようだ。コンセントからも電気モーターからも充電可能なバッテリーを採用することで、いずれのモデルも高い経済性を実現している。しかも、ボディサイズやデザイン、価格、パッケージングはいずれも非常に似通っている。

要するに、この2台のエコハッチバックの違いは非常に少ない。なので、今回の勝利条件としては、現実的な経済性の高さやファミリーカーとしての実用性の高さが鍵となるだろう。

先進的な技術が求められるものの、同時に価格は抑えられている必要がある。数多くのメーカーがプラグインハイブリッドの開発を重視しはじめてきてはいるのだが、量販市場に真っ先にプラグインハイブリッドカーを投入したのはトヨタとヒュンダイの2社だ。では果たして、この2台のうちで勝者はどちらになるのだろうか。

Ioniq PHEV interior

ヒュンダイ・アイオニックPHEV
アイオニックのプラグインハイブリッドモデルは通常のハイブリッドモデルよりも効率性が向上している。バッテリー容量が増加しているため、モーターのみで走行できる距離も増加しており、高い燃費性能を実現している。今回試乗した「Premium SE」は26,795ポンドと魅力的な価格設定となっているのだが、果たして新たなハイブリッドの覇者となれるのだろうか。

しかし、プリウスと比較すると走行性能は劣るので、その点を妥協できるかが問題となる。乗り心地は硬すぎるので、路面の段差を踏み越えるとかなりの衝撃が伝わってくる。プリウスで同じ道路を走った場合のほうがより快適だ。

それに、柔軟性の高いプリウスと比べると、シャシが不安定でナーバスに感じられるし、タイヤノイズも気になる。とはいえ、サーキットでのパフォーマンスは十分だった。

加速時には電気モーターによるトルクに助けられ、0-100km/h加速は9.1秒を記録した。電気モーターの即時的な特性のおかげで無変速状態での加速性能は高く、トップギア(6速)での80-110km/h加速は13.2秒を記録し、通常のハイブリッドモデルの記録を超えた。

無変速加速なのでCVTのプリウスとは比較できないのだが、アイオニックの場合は自分でギアを選択できるし、キックダウンモードも利用できるので、50-80km/h加速および80-110km/h加速はプリウスよりも速かった(それぞれ3.6秒、5.3秒)。

6速DCTを採用しているため、CVTのプリウスよりは普通の車に近いのだが、ディアルクラッチトランスミッションなので、通常のATほど綺麗に変速してくれるわけではない。基本的には滑らかなのだが、街中をEVモードで走行する際にはぎくしゃくすることもあった。とはいえ、少なくともパフォーマンスは高いので、十分に速く走ることはできる。

EVモードにするとリラックスして運転できるのだが、ステアリングはプリウスよりも重く、入力に抗するような感覚もある。回生ブレーキもプリウスほどは洗練されておらず、停止時にはわずかにぎくしゃくした感じがある。それに、ペダルフィールにも欠けている。

Prius PHV interior

トヨタ・プリウスPHV
標準のプリウスはエコカーの中でも優秀なモデルなのだが、それと比べるとプリウスPHVの完成度は低い。29,195ポンドという価格はアイオニックよりも高価なのだが、果たしてそれに見合うだけの魅力がプリウスPHVに存在するのだろうか。

プリウスのほうが走行中の感覚はハイブリッドカー的で、エンジン、モーター、トランスミッションが協調して動いている感覚がある。プリウスにはギアの存在しないCVTが採用されている。エンジンは走行状態に応じて常に最も効率の高い回転数にキープされる。

CVTの中には回転数が急上昇してしまうようなものも存在する。プリウスのCVTはそれほど悪いわけではないし、ヒュンダイのやかましいエンジンと比べても見劣りしないのだが、やはりアクセルを踏み込んだ時はうるさい。

パフォーマンスは十分だ。ただし、0-100km/h加速は10.5秒で、アイオニックと比べると1.4秒遅いし、キックダウン時の加速性能もアイオニックに劣る。

CVTなのでEVモードでの走行はより滑らかだった。EVモードでの発進加速はプリウスもアイオニックも強力だった。

プリウスのブレーキのほうがアイオニックよりも扱いやすかったのだが、それでも停止時にはぎくしゃくすることもあった。とはいえ、快適性や走行安定性、操作性はプリウスのほうが高かった。ステアリングはアイオニックより優秀だったし、ソフトなセッティングなのでロールはアイオニックよりもあるものの、グリップはアイオニック以上だったし、悪路での乗り心地も良かった。


結論

Winner: ヒュンダイ・アイオニックPHEV
プラグインハイブリッドカーには経済性の高さが求められるが、その点でアイオニックはプリウスに勝っている。快適性や走行性能はプリウスに劣るのだが、プリウスより速いし、荷室および室内空間もプリウスより広い。それに、インフォテインメントシステムもプリウスよりも洗練されており、使いやすい。妥協しなければいけない部分はあるのだが、経済的なのはアイオニックのほうだ。

2nd: トヨタ・プリウスPHV
プリウスPHVは快適性が高く、運転するのも楽しいので、エコなファミリーハッチバックとしての実力は高い。ただし、パフォーマンスやランニングコストではアイオニックに負けるし、なにより実用性ではアイオニックに大きく劣り、この点が今回の敗因となった。


Hyundai Ioniq Plug-in vs Toyota Prius PHV