今回は、米国「Car and Driver」による日産・ヴァーサセダン(日本名: ラティオ)の試乗レポートを日本語で紹介します。


Versa

我々は安っぽい日産・ヴァーサという車を躊躇いなく嫌いだと言える。2014年のニューヨークオートショーではマイナーチェンジモデルが発表されたものの、アメリカで最も安く購入できる新車であるヴァーサの変更点になど興味も持てなかった。それでも、マイナーチェンジにより改善はしているようだ。

エクステリアデザインはセントラ(日本名: シルフィ)風となり、巨大なヘッドランプ(もはやサイドウインドウと同じくらいの大きさだ)やメッキで囲まれた大型フロントグリルが装着されている。今回試乗した「SL」にはブラックアウトBピラーやメッキドアハンドル、195/55R16サイズのタイヤが装備されていた。

インテリアのファブリックは質も高そうで、あちこちにスポーティーなステッチまで入っていた。ほかに、室内にはLEDのメーター灯やBluetooth接続機能(標準装備)、ステアリングスイッチ付きの新設計ステアリングが追加され、メッキパーツも増えている。800ポンドのテクノロジーパッケージを選択すると、5.8インチタッチスクリーンディスプレイ(リアビューモニター機能、ボイスコマンド機能、ナビゲーション機能、各種アプリ機能付)を装備できる。リアシートは従来通り広大で、荷室も広い。居住空間と荷室の広さはヴァーサ最大の(あるいは唯一の)セールスポイントだ。

rear

運転する楽しさは完璧に欠如している。以前に2012年モデルに試乗したときにも感じたのだが、ヴァーサの走りには運転することが好きな人を惹きつけるような要素が存在しない。最高出力111PSの4気筒 1.6Lエンジンには交通の流れに(かろうじて)ついていけるだけのパフォーマンスがあるのだが、CVTのせいでエンジンはやかましくうなり、加速時には常時不快な不協和音が車内に鳴り響く。ヴァーサの防音性能は格安建築と同等だ。

サスペンションの設計見直しによりハンドリングはわずかに改善しており、リアにはトーションビーム式サスペンションが使われているにもかかわらず、乗り心地はかなり良好だ。しかし、ステアリングはまったくもってフィールに欠けており、アシストも過剰だ。それに、制動性能は加速性能と同じくらいに物足りない。ブレーキペダルのフィールはマッシュポテトにへらを押し込むがごときだ。

interior

少なくとも燃費性能は良好で、EPA燃費はCVTモデルの場合、シティ13.2km/L、ハイウェイ17.0km/Lとなる。最廉価グレードの「S」の場合、5速MT車が11.5/15.3km/Lで、4速AT車が11.1/14.9km/Lとなる。

快適性が向上している点は賞賛に値するだろう。ただ、今回試乗した「SL」(テクノロジーパッケージ付)の価格は18,500ドルで、これだけの資金があれフォード・フィエスタやホンダ・フィット、それどころか日産・セントラすらも購入できる。この3台のほうがよっぽど楽しいし、完成度も高い。結局、ヴァーサは中古車をどうしても買いたくない人のための安価な車でしかない。しかし、そんなお金の使い方は非常にもったいないと思う。


2015 Nissan Versa Sedan