今回は、米国「MOTOR TREND」によるレクサス LS500/LS500hの試乗レポートを日本語で紹介します。


LS500 F Sport

10年以上にわたって2台のレクサス・LSを乗り継いできた私の父は、LSに何の不満も抱いていなかったにもかかわらず、2000年代後半に別のメーカーの車に乗り換えた。父が乗らなくなって以降のLSは、メルセデス・ベンツ Sクラスより退屈な車ではあったものの、信頼性やコストパフォーマンスは高かった。しかし、大きな変身を遂げた新型LSは旧型とはまったく違う車になっているようだ。果たして、2018年2月に発売予定の新型LSは、他ブランドからの顧客の興味を惹きつつ、従来の顧客からも受け入れられる車になっているのだろうか。

より大胆な見た目となった新型LSは内外装デザインや走行性能、室内空間に磨きをかけ、レクサスの下級モデルとの差別化を図ることで、よりフラッグシップセダンらしい車になろうとしているようだ。新型はロングホイールベースモデルのみの設定となり、LS500(V6)とLS500h(V6ハイブリッド)が用意され、いずれも後輪駆動モデルと4WDモデルから選択できる。

6気筒エンジンだからといって軽く見ないでほしい。LS500のツインターボV6エンジンのパフォーマンスは従前のV8エンジンを上回っており、最高出力422PS/6,000rpm、最大トルク61.1kgf·m/1,600-4,800rpmを発揮する。0-100km/h加速はLS500が約4.6秒で、LS500hは約5.1~5.2秒だそうだ。LS500の10速ATはわずかに反応の遅れはあるものの基本的に応答性は良好で、変速は滑らかなのだが、変速に気付けないほどではない。LS500hもハイブリッドながら応答性は良く、システム出力は359PSで、スポーツモードにするとモーターの音もわずかに聞こえてくる。

走行モードはダイヤル操作により変更できる。エコモードにせずとも、新型LS500は従来のLS460よりも燃費が良く、LS500のカタログ燃費は2WD車がシティ8.1km/L、ハイウェイ12.3km/L、4WD車がシティ7.7km/L、ハイウェイ11.5km/L程度になると予想されている。当然ながらLS500hはさらに燃費が良く、2WD車はシティ10.6km/L、ハイウェイ14.0km/L、4WD車はシティ9.8km/L、ハイウェイ13.2km/L程度となる。

LS500h AWD rear

レクサスは血の通った車作りを目指しはじめており、LSの開発にあたってもその点が重視されている。新型LSは旧型よりも路面の感覚が掴みやすくなっているのだが、かといって路面の情報が過度に伝わってくるわけでもない。SクラスにはAMGのモデルが2種類あるものの、アウディはRS8を作っていないし、BMWもM8は作っていない。フルサイズセダンの顧客は基本的にスポーティーさよりも快適性や静粛性を重視する。

LSも快適性や静粛性は高いのだが、試乗車は20インチホイールを履いており(19インチも設定される)、タイヤノイズが少し気になった。スポーティーさを求める人のためにLS500 F Sportも設定される。走りは非F Sportとは明らかに違う。F Sportはサスペンションがより硬くなっており、ステアフィールが増してターンインも鋭くなっているのだが、かといって全長5.2m超えの車に乗っていることを忘れられるほどではない。ブレーキは過敏だった旧型LS F Sportのブレーキよりもかなり改善している。標準のLSもよりソフトだが走りは良い。やや浮くような感覚はあるものの、走行モードの選択によりある程度はなんとかなる。

リアシートのレッグルームは改善しているのだが、Sクラスや7シリーズには負ける。ただ、旧型LSやGSと比べるとかなり広い。エグゼクティブインテリアパッケージを選択するとインテリアはかなり上質になるのだが、これを選択すると価格はかなり高くなってしまう(LS500の最安価格は75,000ドル程度らしいのだが、正確な価格設定は2018年2月の発売までは明らかにされないそうだ)。

エグゼクティブパッケージはやや派手にも思えるかもしれないが、同クラスのどの車とも違うインテリアを自分のものにできる。ドアパネルには折り紙にインスパイアされ、手作業で仕上げられたファブリックが使われている。ドアパネルには切子調ガラスも使われており、エクステリア同様、インテリアも(やや派手すぎるかもしれないが)印象的だ。残念ながら、エグゼクティブパッケージはブラックインテリアのみに設定され、ワインレッドのインテリアでは選択できない。

rear seat

エクステリアを重視するなら、F Sportよりも標準のLSのほうがグリルデザインは魅力的だ。ヘッドランプの形状は異様で、スピンドルグリルがアクセントとなっている。レクサスはスピンドルグリルをアピールしていきたいようで、新型LSのカタログの表紙もスピンドルグリルの形になっている。

レクサスのフラッグシップセダンだけあって、エグゼクティブパッケージのリアシートの快適性は非常に高い。リアシートは48度までリクライニング可能で(レクサスによるとクラス最高らしい)、助手席が前方に電動スライドすることで後部座席には広大な室内空間が生まれるようになっている。ただし、エグゼクティブパッケージは助手席のシートレールが前方に伸びているため、助手席に人が乗るときは少し気になるかもしれない。

新型LSには前後席マッサージシートやパノラミックビューモニター、各種先進安全装備(歩行者に接触しそうになった際にステアリング操作を補助してくれるシステムも付いている)、24x6インチ大型ヘッドアップディスプレイ(現時点では世界最大)も設定される。ただ、オプションをどれだけ装備しようと、12.3インチのインフォテインメントシステムの操作はタッチパッドで行わなければならない。昔よりは改善されているのだが、他メーカーのシステムと比べるとやはり使いづらい。

幸いなことにApple CarPlayおよびAndroid Autoには対応している。携帯電話が圏内である限り、ボイスコマンドを使ってナビ操作やメールの受信・返信など、さまざまな操作を行うことができる。また、Lexus Enformを使えばオペレーターに連絡して目的地の設定を頼むこともできる。この機能は最初の3年間は無料で使えるが、それ以降は有料となる。

interior

旧型LSと比較すると、新型モデルはあらゆる点で改善している。新型LSはより楽しく、速く、経済的で、快適な車になっている。BMW 7シリーズやメルセデス・ベンツ Sクラスとは違い、高級ブランドとしてのステイタスとなる12気筒のモデルは設定されないのだが、レクサスにはレクサスの魅力がある。

LSの魅力のひとつがコストパフォーマンスの高さだ。LSの最安モデルは75,000ドル程度になると予想されており、7シリーズやA8の最安モデルより数千ドル安く、6気筒エンジンを搭載するS450よりも1万ドル以上安い。400PS以上で75,000ドルを切るモデルは他にキア・K900、ジェネシス・G90、キャデラック・CT6くらいしか存在しない。

初代LSは約30年前に登場し、レクサスのブランド確立において重要な役割を果たしてきた。そんなLSは高級車に重要な快適性を大切にしつづけてきた。レクサスは長らく品質の高さに定評を得ており、新プラットフォーム、新技術、新エンジンが採用された新型LSの品質もきっと高いはずだ。

レクサスは今やアメリカでは人気のブランドとなったのだが、LSに関してはドイツ車と比べると販売台数は少ない。新型LSは室内空間では競合車に劣るし、インフォテインメントシステムも使いづらいのだが、車自体は従来よりもずっと血の通った車になっている。もちろん、従来からのレクサスの顧客も満足させられるような品質の高さは保っていてほしい。


2018 Lexus LS First Drive: Not My Father’s LS