今回は、英国「CAR Magazine」によるジャガー・XF Sの試乗レポートを日本語で紹介します。

先日、ポルトガルのワインディングロードで新型ジャガー・XFに試乗し、上質さ、走行性能、そしてコストパフォーマンスの高さに驚かされた。しかし、イギリスの舗装の悪い田舎道や混雑した高速道路で乗ってこそ、車の実力が分かるだろう。
ジャガー・XEの登場により、XFに注目する人がかなり減ったように思う。XEがジャガー待望のコンパクトセダンであるのに対し、XFは既存モデルの新型という立ち位置でしかない。もっとも、旧型XFはジャガー復活に一役買った重要なモデルだ。いずれにしても、XFは旧型とも見分けがつかない、大きなXEに過ぎないのではないだろうか。
より元気のあるXEが注目を集める一方で、立ち位置が曖昧になってしまった新型XFは、旧型オーナーに訴求し、そして欧州車や日本車のライバルに立ち向かっていかなければならない。エンジンラインアップは限られており、これまではディーゼルが中心だった。では、ハイパフォーマンスモデルの「S」には、果たして2007年に登場した初代モデルにあったような魅力が存在するのだろうか。
XFのデザインは控えめで洗練されている。しかし、均衡の取れたプロポーションはXEに似すぎているようにも感じる。ジャガーの綺羅びやかさはほとんどXJに注ぎ込まれてしまい、XFに関してはドイツ車のごときマトリョーシカデザインとなっている。
残念でならない。代わり映えしないデザインのせいで、せっかくシャシが刷新され、新設計のエンジンやトランスミッションも採用され、最新の運転支援技術が装備されているにもかかわらず、それが目立たなくなってしまっている。新型XFはホイールベースが51mm延長したことで室内空間が拡大し(室内の狭さは先代XFの弱点だった)、軽量化も果たしている。

XFの最上級モデルである「S」に搭載されるのは、F-TYPEやF-PACEにも搭載されるスーパーチャージャー付きのV6エンジンだ。この3.0Lユニットは最高出力380PS/6,500rpm、最大トルク45.9kgf·m/4,500rpmを発揮し、ZF製の8速ATを介して後輪が駆動する。車重は1,710kgながら、0-100km/h加速を5.1秒でこなし、250km/hでスピードリミッターが作動する。カタログ燃費は12.0km/Lで、CO2排出量は195g/kmなのだが、実燃費はせいぜい9km/L程度だ。
XF Sの見た目は非常に控えめだ。標準車との違いは、19インチホイールや大型フロントエアインテーク、そして控えめなデュアルエグゾーストくらいしかない。XEにそっくりな地味なインテリアには驚きや楽しさがない。とはいえ、着座位置は低く、スイッチ類は直感的に操作できる。室内空間は前後とも十分に広く、トランクの容量は標準的だ。
走りは一言で言うと素晴らしい。パフォーマンスが高いからといって、乗り心地の悪さを我慢する必要はない。XF Sは非常に洗練されたグランドツアラーであり、ドライバーは楽しく、そして速く運転できるし、同時に同乗者も快適に過ごすことができる。
XF Sのサスペンションは操作性と快適性のバランスがうまく取れている。路面状況がどうであろうと、XF Sは流れるように、吸い付くように走る。アウディの開発陣からしたら喉から手が出るほど羨ましいであろう足回りだ。
ステアリングも優秀だ。クイックで重さも良く、路面状況やグリップの状態がコンスタントに掌へと伝わってくる。ステアリング操作がダイレクトに車の動きとなり、綺麗にコーナーを曲がっていく。優秀なシャシのおかげでコーナリング中にバランスを崩すこともない。ハードなコーナーをいともたやすく抜けることができる。

F-TYPEに搭載されるエンジンとは違い、XF Sのエンジンにはスーパーチャージャーの咆哮や雷鳴のごとき排気音はない。なので、そういったものを期待しているとがっかりしてしまうかもしれない。このV6エンジンは非常に静かでありながら、非常に力強い。加速性能は強烈で、どのギアからであってもレッドラインまで即座に回り、窓から見える景色はとんでもないペースで移り変わっていく。ターボチャージャーではなくスーパーチャージャーを使用しているため、トルクの出方は非常にリニアで、スロットルの入力に対して正確な加速が得られる。
ZF製の8速ATも優秀だ。変速はスムーズかつクイックで、ドライバーの意思通りのギアに変速してくれる。マニュアルモードにするとパドルシフトの操作に穏やかに応答する。ただ、シフトパドルの質感は恐ろしいほど安っぽい。
XF Sは数多くの実力派競合車を相手にしていかなければならない。走行性能ではアウディ・A6に勝っているかもしれないが、内装の質感や運転支援技術ではA6も負けてはいない。メルセデス・ベンツ Eクラスは非常に万能な車だし、新型BMW 5シリーズも戦況を掻き回すことだろう。
よりニッチな選択肢も忘れてはいけない。ボルボ・V90は非常にスタイリッシュだし、マセラティ・ギブリもジャガーの脅威となるだろう。
それでも、ジャガー・XF Sは非常に完成度の高い車だ。旧型からの変化の少なさを敬遠する人もいるだろう。しかし、それを受け入れられるなら、選んで間違いのない車だ。
Jaguar XF S (2016) review

先日、ポルトガルのワインディングロードで新型ジャガー・XFに試乗し、上質さ、走行性能、そしてコストパフォーマンスの高さに驚かされた。しかし、イギリスの舗装の悪い田舎道や混雑した高速道路で乗ってこそ、車の実力が分かるだろう。
ジャガー・XEの登場により、XFに注目する人がかなり減ったように思う。XEがジャガー待望のコンパクトセダンであるのに対し、XFは既存モデルの新型という立ち位置でしかない。もっとも、旧型XFはジャガー復活に一役買った重要なモデルだ。いずれにしても、XFは旧型とも見分けがつかない、大きなXEに過ぎないのではないだろうか。
より元気のあるXEが注目を集める一方で、立ち位置が曖昧になってしまった新型XFは、旧型オーナーに訴求し、そして欧州車や日本車のライバルに立ち向かっていかなければならない。エンジンラインアップは限られており、これまではディーゼルが中心だった。では、ハイパフォーマンスモデルの「S」には、果たして2007年に登場した初代モデルにあったような魅力が存在するのだろうか。
XFのデザインは控えめで洗練されている。しかし、均衡の取れたプロポーションはXEに似すぎているようにも感じる。ジャガーの綺羅びやかさはほとんどXJに注ぎ込まれてしまい、XFに関してはドイツ車のごときマトリョーシカデザインとなっている。
残念でならない。代わり映えしないデザインのせいで、せっかくシャシが刷新され、新設計のエンジンやトランスミッションも採用され、最新の運転支援技術が装備されているにもかかわらず、それが目立たなくなってしまっている。新型XFはホイールベースが51mm延長したことで室内空間が拡大し(室内の狭さは先代XFの弱点だった)、軽量化も果たしている。

XFの最上級モデルである「S」に搭載されるのは、F-TYPEやF-PACEにも搭載されるスーパーチャージャー付きのV6エンジンだ。この3.0Lユニットは最高出力380PS/6,500rpm、最大トルク45.9kgf·m/4,500rpmを発揮し、ZF製の8速ATを介して後輪が駆動する。車重は1,710kgながら、0-100km/h加速を5.1秒でこなし、250km/hでスピードリミッターが作動する。カタログ燃費は12.0km/Lで、CO2排出量は195g/kmなのだが、実燃費はせいぜい9km/L程度だ。
XF Sの見た目は非常に控えめだ。標準車との違いは、19インチホイールや大型フロントエアインテーク、そして控えめなデュアルエグゾーストくらいしかない。XEにそっくりな地味なインテリアには驚きや楽しさがない。とはいえ、着座位置は低く、スイッチ類は直感的に操作できる。室内空間は前後とも十分に広く、トランクの容量は標準的だ。
走りは一言で言うと素晴らしい。パフォーマンスが高いからといって、乗り心地の悪さを我慢する必要はない。XF Sは非常に洗練されたグランドツアラーであり、ドライバーは楽しく、そして速く運転できるし、同時に同乗者も快適に過ごすことができる。
XF Sのサスペンションは操作性と快適性のバランスがうまく取れている。路面状況がどうであろうと、XF Sは流れるように、吸い付くように走る。アウディの開発陣からしたら喉から手が出るほど羨ましいであろう足回りだ。
ステアリングも優秀だ。クイックで重さも良く、路面状況やグリップの状態がコンスタントに掌へと伝わってくる。ステアリング操作がダイレクトに車の動きとなり、綺麗にコーナーを曲がっていく。優秀なシャシのおかげでコーナリング中にバランスを崩すこともない。ハードなコーナーをいともたやすく抜けることができる。

F-TYPEに搭載されるエンジンとは違い、XF Sのエンジンにはスーパーチャージャーの咆哮や雷鳴のごとき排気音はない。なので、そういったものを期待しているとがっかりしてしまうかもしれない。このV6エンジンは非常に静かでありながら、非常に力強い。加速性能は強烈で、どのギアからであってもレッドラインまで即座に回り、窓から見える景色はとんでもないペースで移り変わっていく。ターボチャージャーではなくスーパーチャージャーを使用しているため、トルクの出方は非常にリニアで、スロットルの入力に対して正確な加速が得られる。
ZF製の8速ATも優秀だ。変速はスムーズかつクイックで、ドライバーの意思通りのギアに変速してくれる。マニュアルモードにするとパドルシフトの操作に穏やかに応答する。ただ、シフトパドルの質感は恐ろしいほど安っぽい。
XF Sは数多くの実力派競合車を相手にしていかなければならない。走行性能ではアウディ・A6に勝っているかもしれないが、内装の質感や運転支援技術ではA6も負けてはいない。メルセデス・ベンツ Eクラスは非常に万能な車だし、新型BMW 5シリーズも戦況を掻き回すことだろう。
よりニッチな選択肢も忘れてはいけない。ボルボ・V90は非常にスタイリッシュだし、マセラティ・ギブリもジャガーの脅威となるだろう。
それでも、ジャガー・XF Sは非常に完成度の高い車だ。旧型からの変化の少なさを敬遠する人もいるだろう。しかし、それを受け入れられるなら、選んで間違いのない車だ。
Jaguar XF S (2016) review