今回は、米国「AUTOWEEK」による新型 ホンダ・アコードの試乗レポートを日本語で紹介します。


Accord

ホンダ・アコードについて改めて説明する必要はないだろう。アメリカでアコードが発売されたのは41年以上前で、当時は8トラックの時代だった。アコードは2分に1台のペースで売れている。しかし、強力なライバルであるトヨタ・カムリが新型となり、また2010年代に入ってからは「ファミリーセダン」に代わってクロスオーバーSUVの人気が増してきている。そんな状況で、果たして新型アコードはこれまで通り人気車種でありつづけられるのだろうか。

10代目アコードは何が変わったのだろうか。エンジンは3種類設定される。1.5L DOHC 4気筒 直噴ターボエンジン(195PS/26.5kgf·m)には6速MTもしくはCVTが組み合わせられる。従来の4気筒 2.4L 自然吸気エンジンと比べると7PS/1.5kgf·m向上している。

その上には2.0L 4気筒 直噴ターボエンジン(255PS/37.7kgf·m)が設定される。このエンジンは新型シビックタイプRに搭載されるものとほとんど共通であり、6速MT(1.5L用とは別物だ)もしくは新設計の10速ATが組み合わせられる。この10速ATは従来の6速ATよりも10kg軽量化されている。

3番目の選択肢となるのが2.0Lアトキンソンサイクルエンジン+電気モーターのアコードハイブリッド(145PS/17.8kgf·m)だ。ちなみにV6エンジンは廃止されている。新しい2.0Lモデルのパフォーマンスが従来の3.5Lモデルに近く、燃費ではV6を大きく凌ぐ。

新型アコードは最近のトレンドには反して旧型モデルよりも全長が短くなっている。ただし、ホイールベースは延長しているし、全幅は広く、全高は低くなっている。デザイン面での最大の変化はファストバック風のボディスタイルだろう。グリーンハウスが拡大し、室内空間は70L増加している。また、ホイールベースが55mm増加したことでリアシートのレッグルームやヘッドルームも拡大している。ヒップルームとエルボールームを拡大するためにシート位置は内寄りになり、またサイドウインドウはより鋭角になっている。

rear

フロントスポイラーまで届きそうなほど大きなフロントグリルのおかげで見た目はアグレッシヴになり、全体的に見るとフロントフェイスはV字型となっている。リアにはシビックに似たコの字型のテールランプが採用され、ファストバック風の近代的デザインとうまく調和している。

剛性の向上と軽量化のためにボディの54.9%に高強度鋼が採用されており、構造用接着剤も使われている。グレードにもよるのだが、新型では50~80kgの軽量化を果たしており、また捩り剛性は32%向上している。シャシ単体では旧型よりも6%軽量化されている。フロントサスペンションは新設計のマクファーソンストラット式で、リアサスペンションは新設計のマルチリンク式(従来より小型化している)となっている。

室内に目を向けると、8インチタッチスクリーンや6インチヘッドアップディスプレイが装備可能で、ワイヤレス充電やBluetoothハンズフリーフォンにも対応している。先進安全装備「ホンダセンシング」は全車に標準装備で、衝突軽減ブレーキや車線逸脱警報、アダプティブクルーズコントロール(低速追従機能付)、それに標識認識機能まで付いている。

我々はニューハンプシャー州北部へと赴き、交通量の少ない山道(一部未舗装)で新型アコードに試乗した。試乗した2.0LターボモデルはAT車もMT車も実力派で、走行安定性、静粛性、快適性いずれも高く、スポーティーさも兼ね備えていた。数世代前のアコードでは考えられなかったことだ。

2.0L用の6速MTは非常に滑らかに扱うことができる。MT初心者にも優しい設計で、クラッチは軽く、シフトストロークは適度に短かった。これまで経験した中でもかなり扱いやすいMTで、どのギアを選択してもエンジンに余裕があるのでやたらシフトダウンをする必要もない。10速ATはさらに扱いやすく、その存在を感じさせない。普段の存在感は薄いのだが、ひとたびやる気になれば255頭の馬をしっかり制御してくれる。

interior

依然として乗り心地は完璧とは言えず、路面の衝撃はちゃんと吸収してくれるものの、外界から遮断されたような乗り心地とまでは言えない。ワインディングロードではロールもあまり起こらず、室内は驚くほど静かで、ドアミラーからのわずかな風切り音が聞こえてきたほどだ。ステアリングは特別シャープなわけではないのだが、自動車評論家やドイツ車を相手にするのではなく、あくまで移動手段として考えるなら、アコードは日常使用にぴったりな車と言えるだろう。

室内は実に静かで、デザインも落ち着いている。ホンダはタイヤノイズの低減にかなり力を入れており、これまでのアコードとは違う、まるでレクサスのような静粛性を実現している。ダッシュボードはエルゴノミクスに配慮した合理的な配置だ。高い位置に配されたインフォテインメントスクリーンはダイヤルとボタンで操作することができるため使いやすく(かつてタッチパネルだけで操作させようとした黒歴史もあるが)、ステアリングスイッチもあるので運転中でも安全に操作できる。

Cピラーの位置は後ろに移動し、結果的にリアシートの位置も後ろになり、リアシートのレッグルームの増加に寄与している。新型アコードは見た目こそ旧型より小さく見えるのだが、室内空間は驚くほどに広い。

10代目となったアコードには単なる消費財以上の価値が求められるようになるのかもしれない。1世代、もしくは2世代ごとにアコードからアコードに乗り換える家族は多い。そういう人たちは、決してアコード以外の車を購入することなど検討せず、検討するのはボディカラーくらいだ。

新型アコードはそんな需要には十分に応えている。2.0Lモデルは広大で実用的な(個性的とは言えないかもしれないが)インテリアを持ち、操作性も十分に高く、加速性能も高く、ワインディングでもある程度は楽しめる。けれど、これからアコードはSUVを購入する人たちに対しても訴求していかなければならない。


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