今回は、米国「Car and Driver」によるレクサス IS350 F Sport の試乗レポートを日本語で紹介します。

自動車メーカーは互いに真似し合うものだ。最近の車に個性が足りないのもこれが原因のひとつだ。一例としてコンパクト高級スポーツセダンについて考えてみても、ほとんどすべての自動車メーカーがターボエンジンを搭載しており、サスペンションやトランスミッションの超細かいパラメーターまで複雑な電子制御によって調整することができる。そんな中で登場したのがIS350 F Sportという車だ。
この車にもアダプティブサスペンションや走行モードは存在するのだが、BMW 3シリーズやアウディ A4のようにステアリング、サスペンション、パワートレインをそれぞれ独立して調整することはできない。走行モードは4種類しか存在せず、中でもデフォルトのノーマルモードは良い。それに、IS350 F Sportに搭載されるV6エンジンはBMW 340iやアウディ S4とは違ってターボエンジンではない。しかも、ISの最上級モデルであるIS350 F Sportは50,154ドルで、6気筒の3シリーズの最安モデルとほとんど同じ価格だ。
かつて、ISは3シリーズを超えることができなかったのだが、それは旧型モデルであるE90型の3シリーズまでの話だ。F30型と比較した場合、ISの立場はより高くなる。2013年に登場した新型IS350 F Sportは走りの面で進化しており、総合的に見るとF30型3シリーズよりもむしろ優秀だった。それから4年が経過し、IS350 F Sportはマイナーチェンジを受けて安全装備の拡充(アダプティブクルーズコントロール、車線逸脱警報の標準装備化など)を行ったが、元々の魅力は失われていない。
今回の改良によって、静粛性や快適性が向上し、より洗練された車に仕上がっている。かといって、基本的な部分が大きく変わったわけではない。IS350は、かつてのBMWのごとく、ドライバーの気分に応じて、快適な通勤手段にも、田舎道のバレリーナにも変貌する。一方、今の3シリーズの走りはソフト過ぎるコンフォートモードと硬すぎるスポーツS+モードで両極端だ。

レクサスにはそんな極端さはない。IS350のドライブモードによる変化はアルファ ロメオ・ジュリアのようにマイルドだ。サスペンションもステアリングも極端な挙動はしない。エコモードにすると応答性が悪化するのだが、それ以外の走行モードは大きく変わらない。
F Sportのサスペンションは快適ながらもしっかりと引き締まっており、乗員に不快さを感じさせずにボディの動きをしっかり制御してくれる。スポーツモード(スポーツSおよびスポーツS+)にするとダンパーが硬くなるのだが、乗り心地はそれほど悪化しない。また、スポーツモードにするとエンジンやトランスミッションの応答性がより鋭くなる。自然吸気V6エンジンの音は素晴らしく、特に4,000rpmを超えると吸気音が見事に響き渡る。この個性的なV6エンジンはリニアでよく回る。唯一、パンチにやや欠ける点だけは残念だ。
ステアリングのフィードバックも物足りないし、8速ATやブレーキはもう少しシャープにしても良いかもしれない。とはいえ、サスペンションは衝撃をしっかりといなし、トランスミッションは滑らかにシフトアップし、オーディオのダイヤルの感触も滑らかで、すべてにおいてしっかりと角の取れた快適な車であることは確かだ。そういう意味では非常にレクサスらしいのだが、一方でステアリングはクイックだし、シャシはしっかりバランスが取れている。
意外なことに、サーキットではスペックで劣るBMW 330iのほうがISよりも速い。330iが251PS/35.7kgf·m、IS350が310PS/38.3kgf·mなのだが、ISのほうが100kg近く重いこともあり、0-100km/h加速は6.0秒と330iよりも0.6秒遅い。ちなみに、324PSの340iは0-100km/h加速4.8秒でIS350より1.2秒速い。スキッドパッドテストではBMW 330iよりも0.01G高い0.84Gを記録した。

レクサスにも、IS350にターボチャージャーを搭載したり、よりパフォーマンスの高いタイヤを履かせたり、ドイツ車と同じくらい硬いサスペンションを装着したりすることはできるだろう。そうすればきっと、より速い車になるはずだ。けれど、そんなことはするべきじゃない。そういうのはRC Fのような本物の「F」のモデルの役割だ。
そうではなく、レクサスが本当に改良すべきなのはインフォテインメントシステムの操作系だ。ボタン類はとっ散らかっているし、パソコンのマウスのように操作しなければならないジョイスティックは走行中どころか止まっていても操作しにくい。BMWやアウディのような回転ダイヤル式の操作系のほうがよっぽど扱いやすい。
デジタルメーターは非常にスタイリッシュだ。スピードメーターとトリップメーターが綺麗に表示され、そこにオーディオやナビなどの画面を表示させることも可能だ。ステアリングスイッチを操作すればタコメーターが中心に移動する。他に目を向けても、IS350のインテリアは魅力的だ。シートはサポート性が高いし、リアドアは大きく開くので乗り降りがしやすいし、トランクも広大だ。上述したようにインフォテインメントシステムの操作系は使いづらいのだが、その代わり、ボリュームダイヤルやチューニングダイヤル、エアコンの物理スイッチ類は扱いやすい。
他のモデルとも比較してみよう。IS350に比肩するエンジンを搭載し、高い快適性を持つFRセダンはなかなかない。4気筒のIS200tも、F SportではないIS350も、IS300も敵わない。今の3シリーズはセッティングがごちゃごちゃしていてシャシは不安定だ。一方、IS350 F Sportは日常的に使える快適性とスポーティーさをうまく融合させている。他のメーカーもこの車に学ぶべきだろう。
2017 Lexus IS350 F Sport RWD

自動車メーカーは互いに真似し合うものだ。最近の車に個性が足りないのもこれが原因のひとつだ。一例としてコンパクト高級スポーツセダンについて考えてみても、ほとんどすべての自動車メーカーがターボエンジンを搭載しており、サスペンションやトランスミッションの超細かいパラメーターまで複雑な電子制御によって調整することができる。そんな中で登場したのがIS350 F Sportという車だ。
この車にもアダプティブサスペンションや走行モードは存在するのだが、BMW 3シリーズやアウディ A4のようにステアリング、サスペンション、パワートレインをそれぞれ独立して調整することはできない。走行モードは4種類しか存在せず、中でもデフォルトのノーマルモードは良い。それに、IS350 F Sportに搭載されるV6エンジンはBMW 340iやアウディ S4とは違ってターボエンジンではない。しかも、ISの最上級モデルであるIS350 F Sportは50,154ドルで、6気筒の3シリーズの最安モデルとほとんど同じ価格だ。
かつて、ISは3シリーズを超えることができなかったのだが、それは旧型モデルであるE90型の3シリーズまでの話だ。F30型と比較した場合、ISの立場はより高くなる。2013年に登場した新型IS350 F Sportは走りの面で進化しており、総合的に見るとF30型3シリーズよりもむしろ優秀だった。それから4年が経過し、IS350 F Sportはマイナーチェンジを受けて安全装備の拡充(アダプティブクルーズコントロール、車線逸脱警報の標準装備化など)を行ったが、元々の魅力は失われていない。
今回の改良によって、静粛性や快適性が向上し、より洗練された車に仕上がっている。かといって、基本的な部分が大きく変わったわけではない。IS350は、かつてのBMWのごとく、ドライバーの気分に応じて、快適な通勤手段にも、田舎道のバレリーナにも変貌する。一方、今の3シリーズの走りはソフト過ぎるコンフォートモードと硬すぎるスポーツS+モードで両極端だ。

レクサスにはそんな極端さはない。IS350のドライブモードによる変化はアルファ ロメオ・ジュリアのようにマイルドだ。サスペンションもステアリングも極端な挙動はしない。エコモードにすると応答性が悪化するのだが、それ以外の走行モードは大きく変わらない。
F Sportのサスペンションは快適ながらもしっかりと引き締まっており、乗員に不快さを感じさせずにボディの動きをしっかり制御してくれる。スポーツモード(スポーツSおよびスポーツS+)にするとダンパーが硬くなるのだが、乗り心地はそれほど悪化しない。また、スポーツモードにするとエンジンやトランスミッションの応答性がより鋭くなる。自然吸気V6エンジンの音は素晴らしく、特に4,000rpmを超えると吸気音が見事に響き渡る。この個性的なV6エンジンはリニアでよく回る。唯一、パンチにやや欠ける点だけは残念だ。
ステアリングのフィードバックも物足りないし、8速ATやブレーキはもう少しシャープにしても良いかもしれない。とはいえ、サスペンションは衝撃をしっかりといなし、トランスミッションは滑らかにシフトアップし、オーディオのダイヤルの感触も滑らかで、すべてにおいてしっかりと角の取れた快適な車であることは確かだ。そういう意味では非常にレクサスらしいのだが、一方でステアリングはクイックだし、シャシはしっかりバランスが取れている。
意外なことに、サーキットではスペックで劣るBMW 330iのほうがISよりも速い。330iが251PS/35.7kgf·m、IS350が310PS/38.3kgf·mなのだが、ISのほうが100kg近く重いこともあり、0-100km/h加速は6.0秒と330iよりも0.6秒遅い。ちなみに、324PSの340iは0-100km/h加速4.8秒でIS350より1.2秒速い。スキッドパッドテストではBMW 330iよりも0.01G高い0.84Gを記録した。

レクサスにも、IS350にターボチャージャーを搭載したり、よりパフォーマンスの高いタイヤを履かせたり、ドイツ車と同じくらい硬いサスペンションを装着したりすることはできるだろう。そうすればきっと、より速い車になるはずだ。けれど、そんなことはするべきじゃない。そういうのはRC Fのような本物の「F」のモデルの役割だ。
そうではなく、レクサスが本当に改良すべきなのはインフォテインメントシステムの操作系だ。ボタン類はとっ散らかっているし、パソコンのマウスのように操作しなければならないジョイスティックは走行中どころか止まっていても操作しにくい。BMWやアウディのような回転ダイヤル式の操作系のほうがよっぽど扱いやすい。
デジタルメーターは非常にスタイリッシュだ。スピードメーターとトリップメーターが綺麗に表示され、そこにオーディオやナビなどの画面を表示させることも可能だ。ステアリングスイッチを操作すればタコメーターが中心に移動する。他に目を向けても、IS350のインテリアは魅力的だ。シートはサポート性が高いし、リアドアは大きく開くので乗り降りがしやすいし、トランクも広大だ。上述したようにインフォテインメントシステムの操作系は使いづらいのだが、その代わり、ボリュームダイヤルやチューニングダイヤル、エアコンの物理スイッチ類は扱いやすい。
他のモデルとも比較してみよう。IS350に比肩するエンジンを搭載し、高い快適性を持つFRセダンはなかなかない。4気筒のIS200tも、F SportではないIS350も、IS300も敵わない。今の3シリーズはセッティングがごちゃごちゃしていてシャシは不安定だ。一方、IS350 F Sportは日常的に使える快適性とスポーティーさをうまく融合させている。他のメーカーもこの車に学ぶべきだろう。
2017 Lexus IS350 F Sport RWD
現行のGSのモデルチェンジの時に
先代から大分良くなったのが印象的でした
いつかはLCに乗ってみたいです