今回は、英国「Auto Express」によるホンダ・シビックタイプRとフォード・フォーカスRSの比較試乗レポートを日本語で紹介します。


Focus and Civic

ホットハッチ好きなら、タイプRについてはご存知のことだろう。タイプRはホンダのハイパフォーマンスモデルに付けられる名前であり、数多くの名車にタイプRの名が付いている。そして、10代目となる新型シビックにもタイプRが登場した。

新型シビックタイプRはハイパフォーマンスホットハッチ、フォード・フォーカスRSに真っ向勝負を挑む車だ。いずれも4気筒ターボエンジンと6速MTを搭載し、ホットハッチの中でもかなりスポーティーな部類に入る。2台とも見た目はかなり筋肉質でアグレッシヴな印象だ。

2台の価格差はわずか730ポンドしかない。ただし、2台には大きな違いがある。後発のホンダがFFであるのに対して、フォードは4WDだ。

いずれも目指している場所は同じく、日常的な使用に耐えられる程度の実用性とハードコアな走りを両立している。しかし、総合的な実力ではどちらに軍配が上がるのだろうか。


ホンダ・シビックタイプR

Civic interior

旧型シビックタイプRはわずか2年間しか販売されておらず、それからホンダは設計を刷新した新型シビックタイプRを生み出した。新型タイプRには標準グレードと「GT」の2種類のグレードが設定される。今回は装備内容の豊富な32,995ポンドの「GT」に試乗した。

VTECはターボと協調し、低回転域のトルクは向上している。非常に力強いエンジンだ。最大トルクは40.8kgf·mで、数値上はフォーカスのオーバーブースト時(47.9kgf·m)に劣るのだが、車重はフォーカスRSが1,524kgなのに対して、シビックは1,380kgと軽い。

タイプRにはLSDが装備されているのだが、それでも急発進時にはトラクションの確保が難しく、今回のテストでは0-100km/h加速6秒を記録した。一方、4WDのフォーカスRSは発進時にローンチコントロールがしっかりと効き、0-100km/h加速はタイプRより1秒速い5秒を記録している。

ただ、速度に乗ってしまえば両者の実力は拮抗する。50-110km/h加速テストでは両車4.3秒を記録し、3速での50-80km/h加速テストではタイプRがフォードより0.2秒速い2.2秒を記録した。ただし、シビックは2速だと100km/hになる直前でレブリミッターに当たるので、数字だけで判断することもできない。フォードのほうがリニアな印象は強いのだが、タイプRは中回転域でのトルクが素晴らしく、より速く感じられる。

タイプRの凄さは万能性にある。コンフォートモードにするとフォードよりも明らかにしなやかな乗り心地になるのだが、公道でスポーツモードに、サーキットで+Rモードにすると性格は豹変する。いずれのモードでも本当に特別な走りを見せてくれる。ステアリングは正確だし、コーナリング中のグリップはとてつもない。フォードも楽しいのは確かなのだが、シビックの刃のように鋭いシャシはさらに上の楽しさをもたらしてくれる。

ホンダのスポーツモデルはトランスミッションの優秀さでも定評があるのだが、この車も例外ではない。シビックタイプRの6速MTはストロークも短く、シフトレバーの配置も完璧で、どんな移動にも喜びをもたらしてくれる。


フォード・フォーカスRS

Focus interior

フォード・フォーカスRSの最高出力はシビックタイプRより優れており、価格もわずかに安いのだが、このような車の場合、スペックと同じくらいにフィールや扱いやすさも重要になってくる。では、32,265ポンドのフォーカスはシビックタイプRの挑戦にどう対処していくのだろうか。

オーバーブースト機能のおかげでエンジンスペックはシビックに勝っている。しかし、シビックよりも重いため、現実的なパフォーマンスに大きな違いはない。ただし、ローンチコントロールや4WDシステムのおかげで発進加速はシビックよりも速い。しかし、直線加速ばかりが重要なわけではない。

シビックよりトルクがあるため、6速での80-110km/h加速は4.6秒とシビックよりも1.2秒速かった。5速で同様に80-110km/h加速を計測すると、フォードはホンダより0.1秒速い3.7秒を記録した。

概してフォーカスRSのほうが速いのだが、運転していて楽しいのはステアリングが優秀で高速コーナーでのグリップを掴みやすいシビックだった。それに、フォードの6速MTはどこか軽薄だし、ホンダのMTほど正確なわけではない。走りの楽しさを決定するのは車との意思疎通だ。フォーカスRSのパフォーマンスが高いのは間違いないのだが、タイプRほどの自然なフィールはない。

ドリフトモードにするとコーナリング中にテールを滑らせることができる。これはホンダにはない利点なのだが、さすがに公道では使えないので、この機能を使うためにはサーキットを探さなければならない。

とはいえ、トラクションは素晴らしく、敏捷性は高い。RSからは常に闘志が感じられる。スタンダードモードは硬めで、ステアリングは超シビアなのだが、RSモードにするとダンパーはさらに硬くなり、シートの中で揺すられてしまう。シャシ剛性は非常に高い。フォーカスは間違いなく「ホット」な車なのだが、シビックほど万能なわけではない。


直接比較
フォーカスRSには巨大フロントグリルやルーフスポイラーが付き、フォーカスST以上に派手だ。しかし、シビックタイプRには異様なホイールアーチや巨大ウイングが付いており、フォーカスRSはとは別次元の派手さがある。おかげで、2台を並べるとフォードがむしろ落ち着いたデザインに見える。

2台とも直線加速性能はかなり高いのだが、制動性能も同様に優れている。フォードのブレーキは非常に強力で安心して運転することができるのだが、ホンダはそれ以上にシャープで、ペダルフィールにも富んでいる。

RSもタイプRも歴史あるブランドであり、イギリスにはどちらにも熱狂的なファンがいる。タイプRが登場したのは1990年代で、一方、RSブランドは1970年代から存在する。いずれも自社の最高峰モデルに付けられる名前だ。


結論

Winner: ホンダ・シビックタイプR
ホンダ・シビックタイプRは新たなホットハッチの王だ。よく考えられた新設計シャシセッティングはこれまで以上に楽しい走りを実現しつつ、日常使用での乗り心地は犠牲になっていない。パフォーマンスは従来よりも扱いやすくなっており、ステアリングは魅力的で、変速は滑らかだし、グリップにも富んでいる。室内空間も広く、インテリアはフォーカスRSよりも現代的だ。


2nd: フォード・フォーカスRS
4WDのフォーカスRSはホンダとは別種の車なので、2位という評価を恥じることはないだろう。パフォーマンスを考えれば価格は安いし、操作性はシビックと同じくらい優れている。乗り心地や装備の先進性においてはホンダに遅れを取っているものの、どちらを選んでも不正解ではない。


Honda Civic Type R vs Ford Focus RS